ゼロからでもピアノは弾ける

趣味ではじめた大人のピアノの記録。2004年に45才でバイエルからスタートしてクラシックの原曲に挑戦中。消音ピアノの活用や練習のヒント、工夫など。気が付けばピアノ歴10年越えです、相変わらず、下手です。はぁ・・・(^^)
全記事の総合目次 いままでの記事がすべて整理してあります。
ピアノのギシギシ音対策
すみません。今回も「駄ネタ」です(^^;)

皆さん、ピアノのギシギシ音て、気になりませんか? 私のピアノも、けっこう「うるさい」です(笑)。ふと、思い立ったので、その対策です。

●ピアノ椅子

まずは、ピアノ椅子。ひっくり返すと、四隅にナットがあります。これがけっこう緩んでいる事があります。



六角レンチで締め上げます。私の椅子は、14mm径でした。



次にピアノ椅子の高さを調整する稼働部分。



ここに、潤滑油を吹き付けます。(だいぶ昔に買ったKURE CRC 5-56です)



これで、だいぶ静かになりました。

●ダンパーペダル(右ペダル)

次に、ダンパーペダル。どこがギシギシいっているのか、グランドピアノの下に仰向けに潜り込んで調べてみました。(けっこう重労働・・・笑)

すると、ダンパーペダルのシャフトの先端と、受け側の革製の部品のところが、主なギシギシ音の発生源のようです。



ペダルを踏むと、この部分が上に突き上げられます。その時、金属と革が擦れて、音が出ているようです。下は、ペダルを踏んだ状態です。



次に調律師さんが来た時に、革でも大丈夫な潤滑剤(普通の油だとちょっとマズイと思います)を塗ってもらえばいいのですが、応急処置を考えてみました。



みっともないけど、バンドエイドです。(見える部分じゃないから、別にイイんですけど・・・)

これで、まだ音はしますけど、だいぶ静かになりました。まあ、ペダルから余計な雑音が出ないように踏むのも、テクニックのうちです。

●グランドピアノの脚の取り付けナット

あと、今回はやりませんでしたけど、経年変化でグランドピアノの脚の取り付けナットが緩んでしまっている場合があります。



ピアノがなんかグラグラするように感じたら、ここを締めましょう。ウソみたいに安定します。

今回は、このあたりで。
 
| 坂上酔狂 | 雑記帳 | 09:46 | comments(5) | trackbacks(0) | - | -
グランドピアノの中に落とした鉛筆
また、やっても〜た〜。いや、その、またピアノの中に鉛筆、落としてしまいました(涙)。



グランドピアノのフタは、フタを開けた状態で垂直に引き上げると、簡単に外れます。けっこう重いので、気を付けてください。

ほーら、いた。やれやれ。



えーと、最近ネタ切れで、さっぱり更新していませんが、練習はコツコツと続けています。

たまには、「駄ネタ」ということで・・・(^^)
 
| 坂上酔狂 | 雑記帳 | 14:34 | comments(2) | trackbacks(0) | - | -
大人のピアノの学習メソッド:ピアノ力と音色の感覚
前回「大人のピアノの学習メソッド:ピアノ力の構造」の続きになます。

●下手の方が上手い?!

前々から不思議に思っていたことなんですが、私の下手くそなピアノに対して、ピアノを始めた当初から「酔狂さんは音色がいい、バランスがいい、音楽的に弾く」と言って頂けることが時々あります。(99%は、お世辞だと思いますが・・・いや、99.9%ぐらいかもしれない・・・^^)

しかし、0.1%ぐらいは理由があるのかもしれません。

というのは・・・。私の所属する角聖子音楽院では、大人の初心者が多く参加する発表会があって、そこで、大人からはじめてまだ数か月、数年といった方の演奏を聞く事があります。確かに、熟練者に比べると演奏技術という点では及びません。しかし、時々、ハッとするような美しい音を出します。

ピアノの音色は、基本的に鍵盤がハンマーを送り出す時の速度に依存しますが、指が鍵盤に当たったり、鍵盤が底(棚板)に当たったりする時の雑音、次々と音を弾くときのレガートやバランス、指を鍵盤に残す事やペダルによる響きの制御など、けっこう演奏者によって「音色」が違います。

大お師匠様の角聖子先生も、「一音、一音を大切に」、「たった一音でも心に響く音があればいい」というようなことをよくおっしゃいます。

そういう点からすると、確かに、技術的には初心者、要するに「下手」のほうが、半ばまぐれかもしれませんが、「いい音」を出す瞬間が目立ちます。

どうしてなんでしょう?

●「ド」は「ド」だけが鳴っているんじゃない!

さて、ここから例によって屁理屈モード突入です。

音色の秘密は、倍音です。

下の図を見てください。これは、ピアノ(カワイ製の電子音源)のスペクル(周波数分布)です。Audacityという有名なフリーソフトを使って可視化してあります。

【中央のドC4】



私たちが音程と呼んでいるのは、一番低いピークのC4(中央のド)の音です。これを基音と言います。

実際には、この2倍、3倍、・・・の倍音が出ています。面白いのは、C4の3倍音はG5、すなわち「ソ」、5倍音はE6、すなわち「ミ」です。

「ド」の音を出しているつもりが、「ソ」とか「ミ」の音が鳴っているのです。(さらに高い倍音を含めると、12音階の全部の音が鳴っています。)

私たちは、(普通は)これらを渾然一体とした響きとして聞き取り、ピアノの「ド」の音として認識しているのです。

中には、普通じゃない人もいるかもしれません。人間スペクトラムアナライザ級の人がいて、すべの倍音を分離して聴き分ける能力のある人・・・って、ホントにいたら、ほとんど宇宙人です。(笑)
 
【ソG4G5



こちらは、G4G5の「ソ」の音です。「ド」の時と同様に、「ソ」の倍音に「レD6」とか「シB6」の音が含まれています。

(※G4をG5と誤記していました。訂正2015/05/12。)

●「ド」と「ソ」を同時に鳴らすと



「ド」と「ソ」を同時に鳴らすと、単に二つの音が鳴っているだけではなく、両者の倍音が混じって複雑な響きを創り出します。

「ド」と「ソ」は完全5度、すなわち、周波数比2:3という、オクターブ(1:2)を除いて、音階の中で最も単純な周波数比になっています。厳密にいうと、ピアノの調律法である平均律では2:3からほんの少しずれるのですが、その差は僅かです。

その結果、何が起こるのかというと、私には「ド」と「ソ」が渾然一体となった一つの複雑な音に聞こえます。「ド」と「ソ」が別々に聞こえません。これこそ、ノンラベリング型音感の特徴であり、ラべリング型音感に対する優位点なのです。

もう一回、繰り返します。『優位点』、なのです。

何とか「ド」と「ソ」を頑張って聴き分けようすると、確かに、一番低い音が聞こえてきます。その時、別の音、すなわち、倍音を聞く事が自動的に抑制されます。

これは、何か一つの音に着目すると他が聞こえなくなるという、人間の聴覚が持つ特性です。有名なカクテルパーティー効果(ざわついたパーティ会場でも誰かが自分の名前を言うと突然それが聞き取れるような現象)と同様の現象です。

一方、ラベリング能力のある人はどうでしょうか?

無意識のうちに、「ド」と「ソ」が別々の音としてはっきり聞こえますか?

音程を聞き取るためには、倍音系列の一番下の音、すなわち、基音だけを聞き取る必要があります。

ということは、倍音を聞かなくなります。ようするに、「音程」を聞き取るために、「音色」を犠牲にしているのです。

そして、音程はドレミのラベルに変換され、記号的に処理されます。その際、もともとの音が持っていた音色の情報は捨てられてしまいます。(実際には、全部捨てるわけではなくて、音色の情報も並列処理しているのだと思います。しかし、ノンラベリング型の人に比べて、音色の情報の相対的重要度は下がると思います。)

ラベリング能力のある人が、基音を聞き取る事は、演奏上は有利です。基音は鍵盤位置そのものだからです。

しかし、音色を(ほとんど無意識のうちに)軽視する事は、音楽的な演奏という面では不利です。

優れた演奏者は、倍音を含む音色の情報と、基音によるドレミのラベル・鍵盤位置の情報の双方を、フルに活用しているのだと思います。だから、一流のプロなのです。

ところが、まあ、そこそこ弾ける程度の方だと、大変失礼な言い方ですが、「確かに楽譜通り正確に速く弾いているけど、音色の変化や表情に乏しいつまらない演奏」になりがちです。

一方、ノンラベリング型音感の人は、音程がドレミ・鍵盤位置に変換できません。

頼るものは、音そのものの感覚です。ノンラベリング型音感の人は、倍音系列を含めた音全体の響き、ハーモニーを聞いているのです。

技術的には未熟であっても、「いい音」を出そうと、これまた半ば無意識に努力してしまいます。だから、たぶん、初心者でも、ハッとするほどいい音がだせるのです。

●音楽性サブシステム

音楽の三大要素は、リズム(律動)、メロディー(旋律)、ハーモニー(和声、和音)、なんだそうです。そして、ここに「音色」を加えてもいいと思います。

音楽の「四大要素」です。

この音楽の四大要素を認識し、制御しているのが「音楽性サブシステム」です。実際は単一のシステムではなく、複雑な内部構造をしていると思いますが、ここでは一体のものとして扱います。

この音楽性サブシステムが、運指サブシステムの上位システムとして機能し、単なる音から音楽を作り上げているのです。

●ラベリング型音感とノンラベリング型音感の音楽性サブシステムの違い

脳のある機能が発達すると、競合関係にある別の機能の発達が抑制される、と言う現象があるそうです。(シナプス競合)

例えば絶対音感と相対音感の関係が、これにあたると思います。両方ともバッチリ、という人は、なかなかいないはずです。

ラベリング型音感の人は、基音を選択的に聞き取る事で、音を音名に変換します。その代償として、音色(倍音)に関する感受性が低下してしまっている可能性があります。

ノンラベリング型音感の人は、倍音系列の全体を聞き取ります。音名への変換はできませんが、音色に対する感覚は、ラベリング型音感の人に比べて潜在的に優れている可能性があります。

分かりやすく言うと、「(特に音色に関して)耳がいい」んです。

また、前にノンラベリング型の人は両手練習の方がよい、と書きましたが、もう一つの大きな理由がこれです。ノンラベリング型の人は、倍音系列を含めたハーモニーを手がかりに、運指サブシステムを制御しているのです。

●ノンラベリング型音感の鍛え方

前回の記事では、ノンラベリング型音感の人は読譜力を鍛えるべきだ、と書きました。

もう一つ、ぜひ鍛えるべきなのが、音色に対する感覚です。

速く弾こうとか、複雑なメロディーを弾こうとかいう意識はそこそこにして、「いい音で弾こう」と思ってください。

これが、上達への近道です。「速く、雑に、勢いで弾く」のは、自分の長所を無視した悪い練習法です。

「どの鍵盤を弾くか」という情報は、暗譜しないで、楽譜から読み取りましょう。そして、「いい音」を出せた時のタッチ、運指、触感、ペダリングを徹底的に分析し、長期記憶に焼き付けましょう。それがよい演奏に繋がるはずです。



前に書いた「格言(?)」の改定版です。

ピアノは目で弾け、そして耳で制御せよ」。
| 坂上酔狂 | 大人のピアノの学習メソッド | 09:37 | comments(13) | trackbacks(0) | - | -
大人のピアノの学習メソッド:ピアノ力の構造
●覚え方が問題

初見でバリバリ弾きこなせるような方は別ですけど、普通は、練習を重ねて曲を少しずつ覚えていきます。

この「覚え方」が、子供から続けた人(熟練者、ピアノの先生など)と、大人の初心者では、構造的に違う、すなわち、「ピアノ力の構造」が違うのではないかと、最近、考えるようになりました。

「大人と子供は違う」と言うのは簡単ですが、「具体的に、どこがどう違うのか」、「その違いに応じた学習メソッドはあるのか」、という事が、私の長年の疑問でした。

まあ、11年もピアノをやっていれば、少しは分かってきた事もあります。最近の記事との重複もありますが、もう一度、分かりやすいチャートを作って整理してみたいと思います。

●熟練者の場合



熟練者が曲を覚える場合、上のチャートに示すように、主として「聴覚(音そのもの)」、「楽譜」、「鍵盤感覚」、「鍵盤を見ること」の四つの入力を使うのだと思います。(ゴチャゴチャした図ですが、これでも相当に省略して書いています。)

例えば、聴覚から入力された音楽は、まず「音響イメージWM」に蓄えられます。(WM=Working Memory、作業記憶、作動記憶、短期記憶)

※ちなみに、この図のWMは、ぜんぶ私のでっち上げなので、ご注意ください。これらの実在可能性は、火星人の想像図(タコみたいなアレね)並みです(笑)。

この音響イメージは、そのまま長期記憶に蓄えられます。音楽そのものを覚える事に相当します。

また、音響イメージは、ラベリングサブシステム、すなわち音とドレミの音名(階名の場合も含む。以下同様)を相互変換する能力によって、ドレミという記号(表象)に変換され、音名WMに送られます。

そして、熟練者の場合、音そのものと同時に、ドレミの音名列(聴覚的な言語情報)としても長期記憶に蓄えられます。

ドレミの音名列は、さらに運指サブシステムに送られ、どの指でどの鍵盤を押すのか、運指がプランニングされます。このプランニングの情報も長期記憶に送られます。

次に、その運指プランに基づき、筋肉が動き、打鍵が実施されます。その時の筋肉の動きや、指先で感じた鍵盤感覚(タッチ)の情報もまた、長期記憶に送られます。(いわゆる、指に覚え込ませる状態)

以上は耳から聞いた曲を覚える場合ですが、楽譜からスタートして、視覚的に情報が処理されるルートも当然あります。

音から覚える場合との違いは、楽譜には指番号が書いてあるので、運指プランニングの情報も得られる点です。

暗譜で演奏する場合は、長期記憶に蓄えられたこれら様々な情報を総動員します。

「何をどのくらい」というのは人によると思いますが、これらの総合的な記憶の力がピアノ力の源泉になっている事は間違いありません。

●大人の初心者の場合



一方、大人の初心者の場合、「音がドレミに聞こえない」、「楽譜が読めない」、というケースが大半でしょう。

上の図で言うと、「ラベリングサブシステム」、「読譜サブシステム」が無い状態です。聴覚言語的にも、視覚言語的にも、脳の持つ言語処理ないし記号処理の能力がほとんど使えていません。

この状態で曲を弾こうとすると、とにかく、どの鍵盤を押すかをクソ暗記して、ひたすら鍵盤凝視の状態で弾くしかありません。しかも運指もタッチもメチャクチャなので、まともに弾けません。

●大人の初心者は熟練者のようになれるのか?

これは、あくまでも、私の個人的体験に基づく仮定です。

なれません。

しかし、かなり近づく事はできます。
 
※ちょっと書き方がキツかったかもしれません。ここでいう「熟練者」は相当の演奏力を持つ「プロ級」の方を想定しています。こういった方と「同じ」になるのは難しい。でも、大人の初心者でも、頑張れば、かなりのレベルには行けると思っています。(2015/04/29追記)

音楽ではありませんが、言語習得で似たような現象の存在が分かっています。

第1言語(母語、母国語)の習得には年齢的な限界(臨界期)があって、それは思春期前(12才前後)と言われています。

ただし、当然のことながら、臨界期が過ぎても、言語習得がまったく不可能になるわけではありません。

第2言語(≒外国語)の習得においては、ネイティブの人のような発音や文法の獲得は困難である事が知られています。ただし、実用的に使える程度であれば、何歳からでも習得できます。最近は、日本にも外国の方が沢山住んでいますが、実用上問題ない程度の日本語は喋ってますから、実感としてお分かりいただけるでしょう。

そして、ごく少数ですが大人からでも第1言語並みの発音と文法を習得できる、という報告があるそうです。

ただし、その「第1言語並みの発音と文法を習得した人」が、ネイティブの人と同じ脳の使い方をしているとは限りません。

まあ、このあたりは、学問的にもまだまだ分かっていない事が多いようです。

話をピアノに戻します。

私の経験から言うとラベリングサブシステム(音がドレミに聞こえる能力)の習得は、ほぼ、不可能です。

子供の頃からピアノを習っていた熟練者やピアノの先生は、いわば、「ドレミ語のネイティブスピーカー」なのです。この人たちと同じにはなれません。

しかし、読譜サブシステムの方は鍛えれば何とかなります。

その場合であっても、子供が習う場合とは違うやり方をします。ラベリングサブシステムとまったく連携を取らない方法で鍛えるのです。(取りたくても存在しないので)

ピアノ力の半分を占める「演奏力」を、音そのものに依存しない視覚言語駆動システムに再編するのです。

別の言い方をすると、楽譜を「運指情報を記載した視覚言語」と割り切って、徹底的に速読する訓練をするのです。

少々刺激的な言い方をすると、「楽譜から音楽を読み取るな! ただ機械的に運指のみ読み取れ!」という事です。(あ、演奏の補助情報も少しは読み取ってね。)

これで、たぶん、弾けます。

●大人のための「酔狂メソッド」



以上をまとめたのが、上のチャートです。

今年(2015年)の2月上旬ぐらいまでは、何とか「暗譜して弾こう」と努力していました。しかし、どうしても、上手く弾けません。

2月下旬頃、開き直りました。「暗譜しなくたって、別に、いいじゃん! 子供の頃からやっていた人とは別のやり方を探そう!」と決めました。

その備忘録的チャートです。

※ピアノ力の残りの半分は、「音楽性」です。今回は、故意にチャートから「音楽性サブシステム」を抜きました。さて、そのココロは・・・。次回を括目して待て! 別に待ってる人はいないかぁ・・・。(笑)
| 坂上酔狂 | 大人のピアノの学習メソッド | 18:03 | comments(4) | trackbacks(0) | - | -
コメント承認機能の設定を変えました
読者の皆様
管理人の坂上酔狂です。

屁理屈満載(って言うか、それだけ・・・笑)のBlogをお読みいただいて、ありがとうございます。

それから、Blogにコメントをいただいて、ありがとうございます。コメントをいただくことは、Blogを続けるうえで、本当に励みになります。

Blogを続けられたのも、また、ピアノを続けられたのも、皆様からコメントをいただいたことが、大きな要因の一つだと思います。

いままで、Blogにいただいたコメントは、私が承認するまで表示しない「承認機能」を使っていましたが、とりあえず、その設定をOFFにしてみました。いちおう、コメントをいただくとスマホにメールが届く設定にしているのですが、どうしてもコメント確認まで時間がかかってしまう事があります。(本日も、出張中+夜の飲み会付、で、うまくスマホを触れない時間帯もありました。今も、少々ほろ酔い加減。)

最近は、いわゆる迷惑メールというか、迷惑コメントも減って来たようなので、コメント承認機能を、とりあえず、OFFにしてみました。

当分、これで様子を見たいと思います。(なんだか、訳のわからない宣伝サイトへの誘導コメントは、見つけ次第、即刻削除します。)

今後とも、よろしくお願いいたします。

本日コメントをいただいた方々への返信は、後日、改めて、という事でご容赦ください。ちょっと、今日、飲みすぎてまして・・・(笑)

 
| 坂上酔狂 | 雑記帳 | 00:41 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -
大人のピアノの学習メソッド:初心に帰って座る位置を見直す
●演奏姿勢はやはり大切

前回の記事で、「ピアノは目で弾け」という考え方を紹介しました。その是非はともかく、「楽譜をしっかり見ながら練習する」という事に異論は無いでしょう。

ところが、あくまでも私の場合ですが、知らず知らずのうちにピアノに近づきすぎていました。これが、「楽譜をうまく読めない」要因の一つだったのではないかと思います。

初心に帰って、座る位置を見直してみました。

●視線移動の観点から

試しに、ピアノの前で次のようにしてみてください。
 
  1. どこでもいいから、楽譜の一点を見る
  2. 次に、うつむいて鍵盤をじっと5秒間、見る
  3. 顔を上げて、楽譜の元の場所を見る

「瞬間的」に元の場所が分かりましたか?

できないはずです。一瞬、視線が泳いで楽譜上の見ていた場所を探してしまうはずです。

これが、「楽譜を見ながら弾けない」大きな原因の一つです。

「楽譜を見ながら弾けない」とお悩みの方々、心当たり、ありませんか?

では、どうすればいいのでしょう? いろいろ、試してみてください。

すると、たぶん、次のようなことに気付くはずです。
 
  1. 鍵盤を見る時間を短くする(←まあ、これは当たり前)
  2. 首を動かさない。視線移動だけで鍵盤を見る(←こっちが重要!)

やってみてください。首が上下に動くと、明らかに元の場所を見つけるのが遅くなります。

という事は、「部分ブラインドタッチ(=原則楽譜を見て、ときどき鍵盤をチラ見する)」を実践しよう、と考えると、着座位置が自動的に決まります。下のようにすればいいのです。
 
score_keyboard

楽譜と鍵盤の間で自然に視線移動ができる位置まで体を引くと、あ〜ら不思議! 「腕が左右に自由に動く位置」で「背筋を伸ばしている」状態になります。これ、自分で気付いて、自分で「目から鱗」でした。(←何を今さら気付いているんだ!・・・と突っ込まれそう・・・笑)

※もちろん、首をギプスで固定したように絶対に動かすな、ということではありません。しかし、楽譜と鍵盤の間で首をヒョコヒョコ動かしながら演奏するピアニストは、まずお目にかかれません! (シロウトは、けっこう、いる・・・笑)

●譜面台の高さ

上の着座位置調整のテクニックを使うためには条件があります。それは「譜面台の高さ」です。

グランドピアノの場合、譜面台の高さは、ほぼ1mになります。この高さが原則です。

私のピアノYAMAHA C1Xで実測したら98cmぐらいでした。まあ、数cmは気にする必要は無いと思います。

しかし、大半の電子ピアノやアップライトピアノの場合、高さが足りません。このままでは「うつむき弾き」を助長してしまいます。

何らかの工夫をして譜面台の高さを1mにしてください。(以前にも同じ事を書いたのですが、例えば下のようにします。アップライトピアノでふたの裏が譜面台になるタイプの場合です。超カッコ悪いですが・・・笑)




ちなみに、もし私がこれからアップライトピアノを買うとしたら(グランド買ってしまったので、もう買いませんけど・・・笑)、この理由のためだけに、「グランドピアノ型譜面台」のある機種を買います。(電子ピアノでも、できるだけ譜面台位置の高い機種)

●足を組んでみよう

ピアノとの距離感をつかむために、もう一つの方法を思いつきました。

足を組んで、椅子に座ってください。その状態でピアノに近付いてください。当然、「ひざ」が当たって、これ以上、前に行けない位置があるはずです。

そこで、足を組んだまま演奏・・・してはいけません!(笑)

ちゃんと足を開きます。

すると、あ〜ら不思議! 先ほどの楽譜と鍵盤の視線移動から決めた着座位置と、ほぼ一致するではありませんか!

この状態で自分の足元を見ると、ひざ関節がピアノ前面のほぼ真下にあるはずです。(ピアノの前面を垂直におろしたラインが、ひざの前面から5cm〜10cmぐらいに来る感じです。)

これは、人体比率という考え方のちょっとした応用です。もちろん個人差がありますから、ベストポジションを探るために、少し前後に移動してみてください。

特に、足のスラッと長い八頭身美人の場合は、少し離れすぎかもしれません。私のような胴長短足のオヂサンとは違うと思いますので、調整は必要です。

とにかく、これに気付いてから、YouTubeとかで、プロやピアノの上手い人の「ひざ」の位置を注意して見るようにしてます。人によって、ひざが若干ピアノの下に入ったり、離れたりする事はありますが、ほぼこの位置です。

一方、「ピアノを独学で始めて数か月」とかの人の中には、ひざどころか、太腿が半分くらいピアノの下に潜り込んでいる例があります。ピアノに近すぎるのです。

※なお、身体のプロポーションが完成してない小さなお子さんの場合は、この方法は使えないかもしれません。その点はご注意ください。

●正しいピアノとの距離感が、読譜力や脱力に影響

上に書いたように、正しいピアノとの距離感が楽譜と鍵盤との視線移動を容易にし、読譜力向上のプラスになります。

さらに、ピアノとの距離感が適切だと、楽譜だけでなく鍵盤も見やすい! 楽に全体を見渡すことができます。

これは当たり前で、上下の視線移動がしやすい、ということは、鍵盤の左右の視線移動もしやすい位置のはずです。

何だか、客観的で冷静な演奏ができそうな気がしてきます。「鍵盤を見て弾く」という点からもプラスです。

それだけでありません。

この姿勢でわざと、鍵盤凝視弾き、うつむき弾きをしてみてください。

おそろしく前のめりになってしまって、腰に負担がかかります。無意識に体を起こしてしまいます。(さもなければ、ズルズルとピアノにすり寄って行ってしまいます。典型的な「悪い癖」です。)

あるいは、「腕の重みを鍵盤に乗せる」という感覚はどうですか? 少しピアノから離れている方が重みを乗せやすくありませんか? この「重みを乗せる」感覚が、脱力にプラスになっているはずです。

実は、「楽譜と鍵盤の視線移動から決めた位置」や「ひざを組んで決めた位置」は、「手や腕のフォームから決めた最適位置」とずれているかもしれません。このあたりは、ぜひともいろいろ調整してください。(正直、少し後ろすぎるかな、と感じる方もいると思います。)

ただし、上半身は容易に前後に動かせます。多少前かがみになるくらいなら、いかにも「パワー、入ってます!」で、まったく問題ないです。「今まで近すぎた」と思った方は、やや後ろの位置を試してみてもいいかもしれません。前のめりになりすぎた、楽譜に近づきすぎた、と思ったら、スッと背筋を伸ばせばいいのですから。

いずれにしても、着座位置は、演奏中は簡単には動かせません。安定した演奏姿勢は、おしり(笑)で決まるのです!

この、前後の着座位置、ピアノとの距離感は、想像以上に読譜力や演奏力に影響を与えているような気がします。

以上、些細なことですが、意外とこういう小さなところが「ピアノが弾けない」盲点になっているのかもしれません。

●ピアノはひざで弾け!・・・ってほどでもないかぁ(^^)

発表会などでは、「足を組んで座る」わけにはいきません。(笑)

ですから、正しい演奏姿勢をとった時の「ひざとピアノの前面との間隔」を覚えておくのです。

皆さん、発表会で自分の番が来ると、椅子の高さを直したり、前後に動かしたりしますが、緊張していてピアノに近付きすぎ、離れすぎになってしまい、それが原因で失敗してしまう事もあると思います。

演奏開始前に、落ち着いて、自分のひざを見ましょう。それで、きっと上手く弾けます。(ちょっとだけネ!)
| 坂上酔狂 | 大人のピアノの学習メソッド | 23:06 | comments(2) | trackbacks(0) | - | -
大人のピアノの学習メソッド:ピアノは目で弾け
●ノン・ラベリング型音感の大人

下のような過去二回の記事で、「曲がドレミに聞こえない大人(ノン・ラベリング型音感の大人)」のピアノの練習方法について考えてみました。
  1. 大人がピアノを《普通》に弾くためには 2015/03/04
  2. 「ラベリングが出来ない」とはどういう事なのか/ピアノは目で弾け 2015/03/16
読み返してみると、我ながら冗長で分かりにくい。そこで、内容を整理した下のようなメモを作って、先日のレッスンの時に師匠に読んでもらいました。(これでも長いけど・・・笑)

●学習メソッド「ビアノは目で弾け」
 
坂上酔狂 2015年3月18日
指使いの「覚え弾き」では限界がある
 →1曲しか、維持できない
 →不安定。ちょっとでも間違えたらおしまい
 →鍵盤凝視の演奏姿勢が最悪、自由に弾けない

大人の初心者
 →楽譜がリアルタイム(インテンポ)で読めない/まったく読めない
 →だから、「覚え弾き」するしかない
 →1曲だけなら、弾けてしまう
 →しかし、いずれ限界を感じて辞めてしまう(おそらく13年以内)

対処法は?
 →(1) ラベリング能力(曲がドレミに聞こえる能力)を鍛える事
 →(2) 読譜力、ブラインドタッチ力をつける事

ラベリング能力があれば
 →曲をドレミの音の列として、頭の中で声を出して文章を読むように認識できる
 →「音のイメージ+運指」だけでなく「ドレミの音列」の補助情報が使える
 →暗譜が安定する。余裕が出てくる。スムースに弾けるようになる
 →ピアノの先生、子供の時にある程度やっていた方の大半はこのタイプと思われる
 →このタイプは、練習すれば、暗譜で何曲も弾けるようになる
 →指導/学習の初期段階で、このラベリング能力の素質があるか要チェック
   さもないと、(私のように)無駄な努力と時間を費やしてしまう

ノン・ラベリング型の大人
 →どう頑張っても、曲がドレミに聞こえない
 →数十年に渡って、曲をドレミとして聞かない強化学習をしてしまっている
  (純粋に音として聞いている。ドレミとして曲を聞こう、などという発想は無かった)
 →今さらラベリング能力を付けるのは実質的に不可能(特に3040才台以上)
 →ラベリング能力の欠如を読譜力で代替するしかない

ノン・ラベリング型の練習法(ピアノは目で弾け)
 →まず、読譜力を徹底的に鍛える
  (ここで音を上げた大人は、厳しい言い方ですが、結局、挫折する)
 →鍵盤を全く見ない完全ブラインドタッチは大人(中高年)には厳しい
  「チラ見はOK」の部分ブラインドタッチで妥協する
 →読譜力が付いてきたら、視線移動の訓練をする(←私はいまここ)
  (楽譜のリアルタイム読み、鍵盤チラ見=楽譜と鍵盤との間の高速視線移動)
 →暗譜してはいけない (これが最大のポイント)
  暗譜すると「覚え弾き」に後退する。徹頭徹尾、楽譜を見て弾く事にこだわる
 →最初から両手弾きせよ
  運指と同時に視線移動の訓練をするため。(片手弾きと視線移動が異なる)
 →音大、コンクール、プロには受け入れられない考え方である事は承知しています
  でも大人の初心者の大多数が「自由に楽しく」弾くためには、これしかありません
 

●大人から始めた方のためのヒントになれば

上の文章は、本名を変えた以外、実際に持っていったメモそのものです。

師匠にも理解してもらえたようです。「そうよね。1年目は楽しくてしょうがないんだけど、2、3年で辞めてしまう方が多い・・・。でもそこを乗り越えると続く人が多んですよね」と、おっしっゃてました。とりあえず、この方向で練習をしてみたいと思います。

それはさておき、私のように大人からピアノを始めた場合は、練習してもなかなか上達しません。それは、「歳のせい」もあるかもしれませんが、「練習のやり方に問題がある」場合も多いと思います。ある程度、考えがまとまったら、その内容を「大人のピアノの学習メソッド」シリーズとして気長に書いていきたいと思います。皆さまの何かのご参考になれば幸いです。
 
| 坂上酔狂 | 大人のピアノの学習メソッド | 07:42 | comments(17) | trackbacks(0) | - | -
「ラベリングが出来ない」とはどういう事なのか/ピアノは目で弾け
●このままでは弾けるようにならない

先日(3/15)は、私の所属する音楽院の発表会でした。例によって、ボロボロ。

最近、このままではいくら練習しても、弾けるようにならない−−練習の方法を根本的に見直す必要があるのではないか、と思うようになってきました。

それはさておき、発表会の後で、ある方(ピアノの先生!)から、私が前回の記事で書いた「ラベリングが出来ない、という事が、いまひとつ分からない」という指摘を受けました。(音楽院では、わたくし酔狂の本名バレバレです・・・笑)

少々、こじつけ気味のたとえ話ですが、もう一度、説明してみたいと思います。

●「L」と「R」のゲーム

標準的な日本人(?)なら、英語の「L」と「R」の区別が苦手だと思います。(私も、そうです)

そこで、まず、下のようなボタンを用意ます。
 

次に、英語が母国語の方に、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」とか言ってもらい、対応するボタンを押すとします。

当然、標準的な日本人なら、正答率は約50%になるはずです。

なぜかと言うと、日本人には、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」が、「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」と聞こえるからです。「L」と「R」が別の音に聞こえません。したがって、左右どちらのボタンを押せばよいのか、分からないはずです。

一方、「a、i、u、e、o」は聞こえます。これは、日本語の母音の「あ、い、う、え、お」として聴き取れます。したがって、上下の行は、正しく選択できます。

だから、左右は分からないけど、上下は分かる。よって、正答率は50%です。

そこで、ちょっと無理がありますが、左右の「L」と「R」を音のラベル、すなわち、「ドレミ」だと、上下の「a、i、u、e、o」を音そのものの高さだと思ってください。

これがまさに、音は分かるけど、ドレミが分からない、「大人の初心者」の状態そのものなのです。

※縦と横の数が違うので、なんだかヘンですけど、細かい事は気にしないでください。要は、両方とも「音」なのだけど、聴き分けられる音とそうでない音がある、という事が書きたいのです。

●初心者でも音は分かるし、暗譜もできるし、歌える

「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」と聞こえた時点で、「音の高さ(=母音)」は正しく認識できています。

暗譜もできるはずです。

えっ! 覚えられないですか? じゃあ、曲のアナリーゼをしましょう。

「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」は、とっても「ロリっ子」な「ラリレーちゃん」の事なんだぜ! 「ロリ、ロリ、ラリレー、イェィ!」。さ、これで覚えましたね。(←お前は変態オヤヂか?!)

これで、暗譜できました。「ロリ、ロリ、ラリレー」と言えば、音の高さ(=母音)は合っていますから、正しく歌えている事になります。母音に関する音感はあるので、簡単です。

●しかし、場所のクソ暗記をしないと弾けない

音の高さも分かったし、暗譜もできました。

それでは、上のボタンを正しく押せますか?

押せないはずです。相変わらず、正解率50%。

音は分かっていても、ラベリング(「L」と「R」の区別=ドレミの区別)が出来ていません。「ロ」と言った時に、それが「Lo」なのか「Ro」なのか、まったく認識できまん。

だから正しいボタンは押せません。(ピアノなら、正しい鍵盤は押せません)

また、「ロリ、ロリ、ラリレー」とは言えますが、「L」と「R」を区別して発音できません。曲で言うなら、正しい「音程」では歌えますが、「ドレミ」では歌えません。(多くの日本人は、「L」と「R」が分かっていても、正しく発音できないと思います。例えば、lightとright。同じように、ドレミが「記号」として分かっていても、正しい「ドレミ」では歌えないのです。正しく歌えるのは、「ドレミ」ではなくて、「曲そのもの」を知っている場合です。)

では、この状態で、正しくボタンを押す(演奏する)ためには、どうしたらよいのか、というと、初期の段階では、ボタンの左右の順番をクソ暗記するしかありません。

「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」を、「右、右、左、右、左、左」とボタン(鍵盤)を押す順番として覚えるのです。覚え方は人それぞれ。視覚的に場所で覚えてもいいですし、お経(ドレミ般若心経?!)を唱えるように覚えてもいいです。

さあ、これでめでたくボタンが押せるようになりました。

これがすなわち、大人のピアノの初心者の演奏です。

●でも、これでは、弾けた事にならない

以上、半分冗談、ネタ話のようにも思えますが、大人の初心者がピアノを弾く状態は、本質的にこれと同じです。だから、けっこう本気でこの文章を書いています。

しかし、これでは、あまりにも脆弱。もし、左右の順を(鍵盤を押す順を)を必死に暗記したとしても、一度でもつかえたり、間違えたりすると、もう何だか分からなくなります。

現実の楽曲の場合は、ボタンは88鍵あります。曲の長さも少なくとも数百音符あります。これをクソ暗記で覚えても、あまりにも不安定ですし、その記憶を長期にわたって維持する事は、ほぼ不可能です。

これが、初心者が弾けない本質的な理由だと思います。

●では、どうしたらよいのか?

解決策は二つです。二つしか、ありません。

一つは「L」と「R」が瞬間的、直観的に区別できるようになる事です。

音楽で言えば、意識しなくても曲が自動的に「ドレミ」に聞こえるようになる事です。

前回の記事でいうと、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」を習得する、という事です。

これが出来れば、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」が、そのままちゃんと「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」に聞こえるはずです。そして、聞こえた内容を暗譜すれば、自動的に正しい「L」と「R」のボタンを選択できます。

もう一つは、楽譜を読めるようになる事です。

「ロリ、ロリ、ラリレー」と暗譜できている状態(すなわち、音としては暗譜できている状態)で、次のような「楽譜」を用意ます。

【RR LL RLL-】

この「楽譜」を見ながら、ボタンを押すのです。楽譜を読む訓練はしんどいですが、リアルタイムで正しく「L」と「R」(記号としての「ドレミ」)を読み取る事ができれば、正しく演奏できます。

これが、前回の記事に書いた「リアルタイム読譜・運指力」を習得する、という事です。
 
【補足 2015/03/16 12:05】

ちょっぴり理系的に説明すると、ラベリング能力が無い人の場合、曲が「Xo、Xi、Xo、Xi、Xa、Xi、Xe〜」という形で頭に入っているのです。「o、i、o、a、i、e」すなわち音の高さ、曲そのものは暗譜していますが、ドレミが分からない「X」の状態です。

ここで、「RR LL RLL」という楽譜を読むと、「X」に、「L」、「R」が順次代入され、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」という「ドレミ」と「音そのもの」の組合せが再現されます。これを運指に変換するのです。この操作が、瞬間的に出来るようになりたいのです。

●分かって頂けたでしょうか?

今回の発表会では、3ページ中1ページ目は、楽譜を見てました。2ページ目に来た時に、一瞬、楽譜から視線が外れてしまいました。それで、その後は、ガタガタでした。

私は、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」を習得する事が出来ないみたいなので、まだしも見込みのある「リアルタイム読譜・運指力」を訓練するしかありません。

もちろん、実際のピアノ演奏では、初見以外は、ある程度まで指使いを暗譜します。

しかし、完全な暗譜は目指さずに、基本的には楽譜を見て、次の小節、次のフレーズのパターン、出だしの音や注意点のドレミなどを、楽譜からほぼ瞬間的に読み取れるように自分を鍛えるしか無いと思うのです。

また、「楽譜を見て弾く」と言っても、実際問題として、全く鍵盤を見ない「完全ブラインドタッチ」は多くの大人には無理です。要所要所で鍵盤をチラ見する「部分ブラインドタッチ」を練習するしかありません。

要するに、如何に「目を使うか」、言い換えれば、「読譜力の(超)高速化と、楽譜と鍵盤との間の視線移動のコツの習得」に、当分、全力でチャレンジしてみるしか無いな、と思っています。

※これが、「正しい練習法」かどうか、分かりません。その人のタイプにも依存すると思います。私の記事を参考になさる場合は、注意してください。

ピアノの先生は、「ピアノは耳で弾け」、「手首や腕や体全体で弾け」、「音楽を感じながら弾け」とおっしゃいます。もちろん、それはそれで当然なのですが、大人の初心者にとって、もしかしたら一番大切なのは、次の事です。

「ピアノは目で弾け」。

 
| 坂上酔狂 | 「大人のピアノ」私論 | 10:31 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -
大人がピアノを《普通》に弾くためには
●大人のピアノの目標

《「普通の曲」を「普通に弾ける」ようになりたい》

これが大人から始めた方の典型的な目標でしょう。他にも、《あこがれの「あの1曲」が弾きたい》というのもあると思いますが、1曲弾けたら、他も弾きたくなるのが人情と言うものです。

ここで、「普通の曲」というのは、例えばクラシック系なら「ピアノ名曲集(初級編)」とか、ポピュラー系なら「J-POP&アニソン定番曲集」とか、ジャズ系なら「永遠のスタンダードナンバー ピアノソロ編」とか、その手の楽譜集に載っていそうな曲(ただし複数)という意味です。

そして、「普通に弾ける」というのは、そんな超絶技巧なんて無理だから、止まらずに、そこそこ音楽的に弾ければよい、ということです。

●ぜんぜん普通じゃない《普通》

実は、《あこがれの「あの1曲」が弾きたい》は簡単です。

大人の気合と集中力と見栄とセコさで、数か月か1年その曲をひたすら練習すれば、簡略化したアレンジ譜かもしれませんが、いちおう弾けるようになります。勘のいい若い方なら、数週間で行けるかもしれません。はい、たいへんよくできました(花マル)!

それで、普通は、「1曲弾けたんだから、他の曲も《普通》に練習すれば弾けるようなるだろ」と考えます。

これが、ならないんです。ホントに。悲しいくらいに。

正確に言うと、弾けるようになるんですけど、前の曲が弾けなくなります。暗譜が記憶から消えます。だから、何とか弾けるのは、練習中の今の1曲だけ。

永遠の《あこがれの「あの1曲」型》です。

ここに至って、「基礎力が無いからダメなんだ」と悟ります。

それで、遅かれ早かれ、基礎練習を始めます。

そして、その基礎練習を通じて、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるためには、膨大な時間と労力が必要なことを理解します。《普通》は普通じゃないんです。

もう、ここまでは、超定番、お約束のコースです。

「初心者ピアノ」のBlogを良く見るのですが、それはもう皆さん、感心するぐらいに同じ道を通ります。

さて、ここから先が、今回、書きたいことの本題です。(前置きが長くてスミマセン)

●《普通》に弾けない理由

「音楽性が無い」からじゃありません。ピアノを弾きたいと思う大人は、みんな音楽が好きでしょうし、音楽を「歌う力」を持っているはずです。

「指が動かない」からでもありません。「普通の曲」程度であれば、訓練で動くようになります。

では、何が問題かというと・・・。

それは、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」が無いからです。(詳細は後述しますが、内容は何となく分かると思います。)

どちらの能力もない場合、曲を弾くためには、運指をひたすら暗記するしかありません。多くは視覚的な記憶に頼ることになります。大人の初心者に多く見られる、いわゆる「鍵盤凝視弾き」、「うつむき弾き」、「覚え弾き」です。

人間の記憶力には限界がありますから、この「覚え弾き」で弾ける曲数には限界があります。これが、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようにならない理由です。

●「普通に弾く」ための能力

ピアノを「普通に弾く」ためには、次の二つの能力の「どちらか一方」が必須です。曲がりなりにも11年間ピアノを弾いてきた私の結論です。(もちろん両方あればなおよい)

(1) ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力

音を聴くだけ(あるいは、思い浮かべるだけ)でドレミと鍵盤位置が分かる(ラベリングできる)能力です。絶対音感か相対音感かは問いません。絶対音感の方なら、「ド」の音を聴けばそれが自動的に音名の「ド」と認識され、「ド」の鍵盤位置が決定されます。相対音感の方なら、認識された階名から調に応じた鍵盤位置への変換が必要になりますが、それさえできれば、絶対音感の方とほぼ同じです。

絶対音感・相対音感どちらの場合でも、知っている曲なら、それを頭の中でドレミで鳴らすことができ、ドレミが鳴った時点で鍵盤位置が決定されます。すなわち、弾けます。

補足】よく考えたら、音からドレミを介在せずに直接鍵盤位置にラベリングするタイプもあるはずです。いわば、「ダイレクト鍵盤位置ラベリング能力」です。もしかしたら、ジャズ・ポピュラー系の方に多いのかもしれません。今回の記事では、便宜上、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の一変種ということにさせてください。また、以下の文章も適宜読み替えてください。(ちょっと手抜きですが、書き直す元気がないので・・・笑)

(2) リアルタイム読譜・運指力

演奏速度で楽譜を読んでそれを運指に変換する能力です。クラシック系なら楽譜に忠実に、ジャズ系ならリードシート(メロディ+コード)からアドリブ(インプロヴァイゼーション)で運指を決定します。楽譜を見ますから、当然、鍵盤を見ないで弾くブラインドタッチが前提となります。(チラ見はOK・・・ジャズだとかなり鍵盤見てもOKかな?)

この能力があれば、基本的に楽譜さえあればどんな曲でも弾けるはずです。

●なぜ、「どちらか一方」あればいいのか

まず、曲そのものは、ほぼ頭の中に入っていることが大前提です。

また、たくさんの曲の運指をすべて覚えているのは、驚異的な記憶力の持ち主でない限り、不可能です。

ですから、頭の中で曲のイメージをどうやって保持しているのか、そこからどうやって運指を決定しているのか、それが鍵となると思うのです。

私は、大きく分けて二つの方法があると考えています。「弾いたことは無いが、知っている曲を初めて弾く」ことを想定してみてください。

(1) もし「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」があれば、「曲を知っている」ことと「ドレミを知っている」ことは等価です。ただし、「弾いた事はない」ので、鍵盤位置は演奏時に認識されます。したがって、(基本的には楽譜無しでも)次の順で運指が決定されます。
【頭の中の曲のイメージ+ドレミ】→【弾くべき鍵盤位置】→【運指】

(2) もし「リアルタイム読譜・運指力」があれば、曲のイメージと楽譜からの外部情報により、次の順で運指が決定されます。(ただし、ラベリング能力が弱い場合は、「曲を知っている」ことと「ドレミを知っている」ことは等価ではないことに注意してください。)
【頭の中の曲の音のイメージ+楽譜の音符・指番号】→【ドレミ+弾くべき鍵盤位置】→【運指】

初見が得意な方、耳コピが得意な方は、この双方が強力かつうまく連携できているのだと思います。(細部は個人差があると思いますが)

いずれにしても、上の(1)か(2)のどちらか一方が動けば、曲は弾けます。

●ピアノの先生には分からないかもしれない

ピアノの先生は、子供の時から練習を重ねて、この「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」の両方を身に付けた人たちです。

一方、大人から始めた初心者は、この二つの能力がまったくありません。

もちろん小さな子供にもこの二つの能力は無いのですが、ちゃんと教えて、ちゃんと練習すれば、身に付きます。

もしかしたら、ピアノの先生は、ご自分が小さい時にどうやってこの能力を身に付けたか、記憶が無いのかもしれません。特に、ドレミがどういうプロセスを踏んでドレミに聞こえるようになったのか、その成長過程を客観的に説明できるでしょうか?

だから、ピアノの先生は、大人から始めた人の頭の中が分からないのかもしれません。(ピアノの先生のBlogなどで、そう受け取れる記述を時々見かけます)

●大人から始めて「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」は身に付くのか?

あくまでも私の場合です。

11年間、それなりに努力もしましたが、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」はまったく付きませんでした。私には、どうしても曲がドレミに聞こえません。ドレミが分からないので、当然、鍵盤位置にも変換できません。

その代わりに、例えば下のト長調の音階を「シ・ミ・ド・ラ・ファ・レ・ラ・ソ・レ〜」とか歌えます。(一度、師匠の前でやってみせました。師匠「気持ち悪くありませんか?」、私「いえ、全然!」。)

G-Dur

これは、「相対音感が無い」というのとは違いますから、間違えないでくださいね。それなりの相対音感は、たぶん、あります。

そうではなくて、「ド」の音が「ド」という記号(ラベル)と結びつかないのです。これは、そういう風に私の脳が出来上がってしまっているからだと思います。要するに、「ラベリング能力が無い(→だったら鍛えればよい)」というのではなく、「ラベリングしない方向に能力が発達してしまっている」ということだと思います。

私の主張に疑問をお持ちの方(で、ラベリング能力がある方)、上のト長調の音階を、下のように歌う練習をしてみてください。けっこう「キツイ」と思いますよ。

(1) ド・ラ・ファ・レ・レ・ド・ド・ソ・ラ
(2) レ・ミ・ファ・ファ・ラ・ミ・ド・ド・ド
(3) ソ・ミ・ミ・ミ・レ・ファ・ミ・ラ・ド
(4) ミ・ファ・シ・ファ・レ・ラ・ファ・レ・ファ
(5) レ・ソ・ラ・シ・ド・ファ・ド・ファ・ソ
(6) ラ・シ・ファ・ファ・レ・レ・レ・レ・ミ
以下、果てしなく続く・・・

これは、「ラベリング型」の音感の方に、「ノン・ラベリング型」の音感を身に付けていただくための、暗黒のソルフェージュ(笑)の練習です。

「ノン・ラベリング型」の私が、「ラベリング型」の練習をするのも、たぶん、同じぐらい大変です。

もしかしたら、「ノン・ラベリング型」から「ラベリング型」への移行には、ある種の年齢的な限界(臨界期)があるのかもしれない、と感じています。(実証研究を探したのですが、うまく見つけられませんでした。よって、あくまでも「個人の感想(笑)」です。)

ちなみに、絶対音感は6〜7歳ぐらいまでに何らかの訓練をしないと習得できない、とされています。(根拠を知りたい方は、そのへんの素人のサイト(←たとえば私のサイト。笑)ではなくて、Google Scholarあたりで「絶対音感」、「absolute pitch」といったキーワードで論文を検索してみてください。)

●大人から始めて「リアルタイム読譜・運指力」は身に付くのか?

こちらも、あくまでも私の場合です。

身に付きます。恐ろしく、時間と手間はかかりますが。

いま、バッハの平均律の鬼楽譜(笑)と悪戦苦闘してますが、たまに、昔やった楽譜を取り出してみると、易しく感じます。

当時は、数小節進むだけで何日もかかった曲でも、とりあえず、超ゆっくり、間違えたり止まったりはしますが、通しで弾けます。(ということは、弾けてない、ということですが・・・笑)

だから現状だと、《「普通の曲」を「ヘナチョコに弾ける」》程度ですが、読譜力も運指力もゆっくり向上して来てるのが分かります。まだ「普通に弾ける」まで何年もかかりそうですが、手の届かない目標ではないと思います。

●努力目標・・・私の場合

ですから、私の場合、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるためには、

(1) 「リアルタイム読譜・運指力」に全力を投入する。すなわち、楽譜を見て弾くことに集中する。

(2) 「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」は、あきらめる。

というのが唯一の方法ではないかと考えています。

普通に弾ける》までの道はタイプによって違う

実は、今回の記事を書くきっかけになったのは、前回の記事で「暗譜した方がよい」というコメントを頂いた事と、大人の指導に力を入れているであろうピアノの先生のBlog(複数)に「大人に楽譜を読むように指導するのは困難」という主旨の発言を見つけたからです。

もし、ある大人の生徒さんが、私のように「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」が身に付かないタイプだとすると、楽譜を読むことを放棄した時点で、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようにならない、という結論になります。これは、「良い・悪い」の問題でなくて、論理的に考えて、そうなる、という話です。

このような生徒さんの場合は、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ためには、たとえ道は長く険しくとも、読譜力とブラインドタッチ力を徹底的に強化するのが、ほぼ唯一の方法のはずです。

また、楽譜を見て弾くのが基本なので、暗譜にはこだわらなくよい、ということになります。

逆のケースとして、その生徒さんが、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の素質はあるが、「リアルタイム読譜・運指力」が苦手な場合を考えてみます。ようするに「聴いて覚えた曲は弾ける」方です。

このような方は、もしかしたらクラシック系より、コード奏法によるポピュラー演奏などに向いているのかもしれません。右手のメロディは「知っている」ので弾けますし、左手のコード演奏は、ある意味ワンパターンです。ポピュラー系限定なら、意外とあっさり《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるかもしれません。ただし、複雑な音を駆使するクラシック、特にバッハのような曲は苦手かもしれません。

さらに言えば、このタイプの人は、さほどブラインドタッチにこだわらなくてよいのかもしれません。(猫背で鍵盤凝視はマズイと思いますが。)

●片手練習 v.s. 両手練習

その人の「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」の優位性と、効率的な練習法にも関係があるはずです。

例えば、片手練習と両手練習のどちらが良いのか、という議論。

「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」が優位の方は、たぶん、片手練習が有効です。

このような方は、曲を、左右それぞれのメロディとして「聴いて覚える」はずです。人間は、同時に複数のメロディを「聞く」ことはできますが、同時に複数のメロディを「発声」することは、身体構造上不可能です。よって、一つのメロディを弾いて歌って覚えて、最後にそれらを組み合わせる、という練習は合理的です。

一方、「リアルタイム読譜・運指力」が優位の方は、たぶん、両手練習の方が有効です。

ちょっと話がそれますが、楽譜がまったく読めない初心者でも、将来、読譜力が育つ可能性か高いかどうか判定する方法があります。(たぶん)

それは、本を読むのが速いかどうか、です。(私は、自慢しているようで申し訳ないのですが、かなり速いです。)

速読する時は、複数箇所をほぼ同時に読んでます。もちろん、ある瞬間には一箇所を注視しているのですが、視点を高速に動かしています。また、語の順番どおりには読みません。飛ばして読んで、必要とあらばさっと戻って読んで、前の行を読んで、次の行を読んで、という読み方をします。

この能力が、そのまま読譜力に転化されるはずです。

このような方の場合、曲を、楽譜を読む視点移動の連鎖として「見て覚える」はずです。「正しい場所」を見ることができれば「正しく弾けます」。片手練習は、(テニック的に弾きにくい箇所ではやりますが、)基本的に無駄、場合によっては有害です。なぜなら、片手練習と両手練習では視点移動のやり方が異なるからです。片手練習で付けた「視点移動の癖」を、両手練習に切り替えた時にいったんリセットして、改めて両手演奏用の「視点移動の癖」を付けるのは二度手間です。最初から、両手練習によって曲を弾くために必要な視点移動を練習した方が有効です。(もちろん歌うことも有効ですよ!)

●タイプによって練習法を変える−−それが《普通に弾ける》ための最短距離

最後にまとめとして、大人の初心者の場合は、タイプに応じて練習法を変えるべき、というのが結論です。ピアノの先生側から見ると、指導法を変える、場合によっては、まったく逆の指導をする、ということになります。

もちろん、「リアルタイム読譜・運指力」と「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の双方を鍛えることが理想ですし、小さな子供さんの場合はある程度可能でしょう。

しかし、大人の場合は、時間がありませんし、脳の可塑性が低下しています。本人の適性と逆の練習/指導だと、ピアノがイヤになってしまいます。

大人には、子供の柔軟性・学習能力はありませんが、知恵はあります。ぜひ、いろいろと考えて工夫して、《普通に弾ける》ための最短コースを探してください。それが、《「普通の曲」を「自由に楽しく弾く」》ためのコツです。


※今回の記事では、下のサイトが大変参考になりました。ありがとうございました。
あなたの音感は何型か?(たくき よしみさん) http://takuki.com/onkangata.html
 
| 坂上酔狂 | 「大人のピアノ」私論 | 22:05 | comments(11) | trackbacks(0) | - | -
ピアノ継続率(挫折率)と教本
前回の記事の続きとなります。今回は、ピティナ・ピアノステップの各ステップ毎の分布と、使用されている教本(教則本)を、少し詳しく見ていきたいと思います。(前回の記事と合わせてお読みいただければ、と思います。)

結果は、基本的に前回の記事と同じ傾向を示すのですが、詳しく見ることで、少し変わってきた点もあります。

●ピティナ・ピアノステップとは

繰り返しになりますが、ピティナ・ピアノステップについて簡単に説明します。

「ピティナ・ピアノステップ」というのは、PTNA(ピティナ/一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)の開催しているイベントで、簡単に言うと、
  • 導入1から展開3まで段階別になった23ステップの課題曲(以下「ステップ」と略)
または、
  • フリーステップといって、3分、5分、7分、10分、12分、15分の自由曲(以下「フリー」と略)
のいずれかをステージ上で演奏し、講師の先生方から評価してもらう、というものです。

(詳しくは、PTNAのWebサイトを参照してください。開催記録データの出典も同サイトになります。)

このPNTAのサイトに、過去約一年分、2万件超の開催記録(ステップやフリーの区分、曲名など)が載っています。このデータを酔狂流屁理屈で分析(?)したのが、この記事です。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ22,850件)

●結果のグラフと表

以下の通りです。まずはじっくりご覧ください。

グラフが23ステップの課題曲(フリーは除く)の受講者の割合です。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ11,941件、数値は一番受講者の多い「基礎1」を100%とした時の相対比率)

グラフの下に代表的な教本(教則本)と、ステップとの対応を載せてあります。曲番の指定がある場合はその番号、無い場合はマル印、ソナチネに関しては易しいグループと難しいグループに分かれているので「易」「難」と記載してあります。

表のいちばん下の「段階」は、私が独断と偏見で付けた上達のレベルです。



●教本はいろいろ

注意していただきたいのは、ピティナ・ピアノステップでは、さまざまな教本が使用されている、という点です。例えばバイエルですが、基礎段階のステップでの採択率は5〜6パーセント前後です。他にも、バスティン、ギロック、トンプソン、その他もろもろ、20種類前後の本が使用されています。

使用されている教本について、後ほど、個々のステップ別に詳しく見ていきます。

以下の教本の表で使用しているのは、各ステップ毎の「作曲者」ごとのトップ10です。(期間は上に同じ。ステップとフリー合わせて22,850件、41,088曲のデータです。一度に、一人2曲演奏というケースが多いです。なお、ステップでは課題曲と自由曲の2曲を弾きますので、その双方のデータが含まれています。)

作曲者を集計しているは、作曲者が教本の通称になるケースが多いからです。あと傾向を分析するのに便利です。

ただし、けっこう表記に揺れがあるので、必ずしも作曲者になっていない場合がかなり含まれます。あくまでも、目安とお考えください。

基本的に、以下のルールで集計しました。
  • 原則として作曲者で集計
  • 作曲者が曲集名となっている場合は、曲集名を使用する
  • 表記に揺れがあるので、可能な範囲で集約する
  • 編曲者が以下の場合、または、作曲者不詳の場合は、編曲者を作曲者とみなす
    •     J.S.バッハ
    •     バスティン
    •     トンプソン

●導入1〜導入3:ここは小さな子供さん向け




ここは、基本的に、就学前の小さなお子さんや小学校低学年の生徒さんなどが「ピアノに初めて触る」段階です。

大人の場合は、ここは省略してしまう事も多いでしょう。よって、説明も省略。(^^)

※作曲者の集計がうまくいってません。「なんとか民謡」とか「外国曲」とかになってしまってます。悪しからず。

●基礎1〜基礎4:初級前半は挫折しない




基礎1は「バイエル45番」からになっていますが、ここが、まさに、私が45才でピアノを始めた時の曲です。(正確には、40番をやって、4曲飛ばして、45番からほぼ順番どおりにやりました。)

他の教本の場合でも、まったく未経験の大人が始めるのは、ほぼこのレベルからだと思います。

グラフを見れば分かるように、基礎1〜基礎4は、ほとんど件数が減っていません。

この段階ははっきり言って「簡単」ですし、鍵盤を押して音がでるのが楽しい時期です。大人も子供もたぶん同じでしょう。

また、教本としてはバスティンが多いようです。我らがバイエル(?)も健闘してます。

最後の基礎4で、ブルグミュラーが出てきます。これは、「ブルグミュラー25の練習曲」です。根強い人気があるようです。

●基礎5・応用1〜応用3:初級後半の壁




基礎5から件数が急速に減少し、応用3の段階で半減以下になってしまいます。

バイエルで言うと90番台以降、ブルグミュラー25の練習曲だと5番以降です。

難易度がどんどん高くなっていくのです。

ここは私がかつて「バイエル80番台の壁」と呼んだ箇所です。

「バイエル80番台と90番台だと、10番ずれてるじゃないか!」という突っ込み無しでお願いします。個人の体感の差もありますし、バイエルやっていた子が、80番台は頑張ったけど、90番台には行けなかったのかもしれません。(←苦しい言い訳)

それはともかく、上に書いたように、ピティナ・ピアノステップでは様々な教本が使用されています。「どんな教本を使おうが急減少している」という点から考えて、初級後半の持っている本質的な難しさが出ているのだと思います。

したがって、ここは、「バイエル80番台の壁」じゃなくて、「初級後半の壁」と呼んだ方がよさそうです。

前回の記事にも書いたように、このピティナ・ピアノステップのデータからは時間軸や個人の長期データが分からないので、件数がそのまま継続率になる訳ではありません。しかし、いちステップあたりの所要時間は基礎より応用の方が長い、と推定するのが妥当でしょうから、実際には初級後半を終える事が出来るのは、ざっくり言って、1/3程度ではないか、と思います。

また、この段階の特徴として、「初級後半全体が分厚い壁になっている」という事が言えると思います。これが次の「中級入口の壁」との大きな違いです。

※注:前回の記事では、基礎5を「初級前半」としていましたが、以上述べたように「初級後半」に分類した方がよさそうです。今回の記事では基礎5から応用3を「初級後半」としています。

一方、教本としては、ブルグミュラーが強い。

ただし、クレメンティ、クーラウ、A.スカルラッティなどは、曲集ソナチネの作曲家です。この段階の後半になると、その合計数がブルグミュラーを上回ります。ソナチネもまた、根強い人気を誇るようです。

一つの面白いのは、まるで生き残りレースのように件数が減っていくのですが、ブルグミュラーの件数が安定していて、あまり減少していない点です。(他の作曲家は、けっこう増減幅が大きいです)

これは、「ブルグミュラーやってる子は挫折しにくい」のか、「単に定番という事でとりあえずブルグミュラー弾いてる」のか、分かりません。どっちなんでしょう?

応用2でブルグミュラー25の練習曲は、ステップ課題曲としては、おしまいです。応用3のブルグミュラーはステップ課題曲の「ブルグミュラー18の練習曲」と、自由曲として弾いている「25の練習曲」が、ほぼ半々です。(ステップでは、課題曲と自由曲を2曲弾く)

また、ここで一回だけギロックが首位に立ちます。

●応用4:中級入口の壁




非常に興味深い事に、応用4、すなわち、中級の入口でいったん件数が持ち直します。

実は、ここで大きな転換点があります。教本が、がらっと変わるのです。

このステップから使われ始める教本が、J.S.バッハ(以下単にバッハと言います)のインベンションとツェルニー30番です。教本の表でわかるとおり、バッハがいきなり首位に躍り出ます。ソナチネ勢も合算するとバッハに匹敵するので、依然として強いです。

初級のうちは、子供の(あるいは大人も)興味を引いたりモチベーションを高めようと、あの手この手でいろいろな教本が作られているのに、ここに来たとたん、「バッハ、ソナチネ、ツェルニー」という昔ながらの王道コース(?!)まっしぐらです。

ここで、「中級《入口》の壁」と入口に限定したのは、中級最初の応用4と、次の応用5の落差に特徴があるからです。

応用4から応用5への減少率(およそマイナス40%)は、初級から中級のステップを通じて最大です。という事は、「中級の入口でいったん件数が持ち直した」のは、ここが簡単だから増えていると言うより、ここで止まっている人が多い、という事を示唆しています。

ステップは、S、A、B、C、Dの5段階評価がつけられ、C以上が合格、Dは不合格で再挑戦です。要するに、不合格者、再挑戦者が多いのではないか、と思うのです。

合格率のデータが無いので、これは私の憶測にすぎません。

本当にそうかどうか、個人のデータを追跡しないと断言はできません。しかし、応用5以降は減少率が明らかに緩くなるので、多分、当たらずとも遠からず、ではないかと思います。

「初級後半の壁」が「低いけど分厚い壁」なのに対して、「中級入口の壁」は「薄いけど高くて頑丈な壁」のように思えます。

要するに、「やっと中級に来た、やれやれ」と思っていたら、いきなり「異次元の難しさ(バッハ)」、あるいは、「異次元のつまらなさ(ツェルニー)」に遭遇して、ここで挫折してしまう子が多いのではないでしょうか? 私の個人的な体験ですが、教本の変化は、そのくらい大きなインパクトがあります。

また、ここでついにショパンが登場します。ショパンでも比較的易しい曲は、この段階で手が届くのです。やはりショパンはみんなの憧れなんでしょう。

あと、応用6で2位のベートーヴェンは、ほとんどが「エリーゼのために」です。「エリーゼのために」って、初級曲の代表のように言われる事がありますが、けっこう難しいんですね。

(かつて「中級の壁」シリーズという記事も書きました。ご興味があれば、そちらもご覧ください。
ピアノ中級の壁(1)
ピアノ中級の壁(2)
ピアノ中級の壁(3)
ピアノ中級の壁(4)
ピアノ中級の壁(5)
ピアノ中級の壁(6)
ピアノ中級の壁(7)
ピアノ中級の壁(8)
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●中級前半〜中級後半:ここまで来れば・・・




これ以降も件数は漸減していきます。ただし、前回の記事で見たようにフリーの参加率が上がっているので、ステップ→フリーへの移行組の影響で減り具合が大きめに出ている可能性があります。

発展1(中級後半の入口)や展開1(次の上級の途中。ここでついにショパンのエチュード!)で再び件数の持ち直しがあります。ここも、「中級入口の壁」と同じような現象が起こっているのかもしれません。

また、子供が圧倒的だった初級段階に比べて、大人の比率が高まっていきます。これが、「大人の再開者」なのか、「子供が成長して大人になった」のかは、残念ながら分かりません。

しかし、中級前半ぐらいの技術を身につけてしまえば、「趣味で楽しむ」程度であれば、充分ではないかと思います。超絶技巧の曲は別ですが、「普通のクラシックの曲」なら、じっくり取り組めば弾けるようになるはずです。譜読みとか、練習の組み立て方とか、先生に頼らなくてもある程度自分で出来るようになっているはずです。

●上級:そしてショパン、バッハ、ベートーヴェンへと集約していく




圧倒的な強さを誇ったバッハが、発展5でショパンに首位を明け渡します。

しかしながら、発展4以降は、ショパン、バッハ、ベートーヴェンが不動の3強です。

もしかしたらこれは、ステップの課題曲の制約のせいか、と思い、フリー(自由曲)の方も集計してみました。そしたら結果はご覧のとおり。



おそらく、中級程度には達しているであろう「フリー7分」以降は、やっぱりショパン、バッハ、ベートーヴェン。まったく同じです。

ついでに言うと、この3人が音大入試の定番の組合せみたいです。

クラシック系のピアノというのは、結局この3人に集約していくのでしょうか・・・。

●大人も子供もそう変わらないのでは?

このピティナ・ピアノステップのデータは、圧倒的に子供が多いです。しかし、以上述べてきたような「壁」、すなわち、「厳しかった時期」は、私の個人的な経験とほぼ一致します。(例えばこちらの記事をご覧ください。)

前回の記事では、『「大人のピアノ」に、このデータを直接適用する事には慎重になった方がよさそう』と書きましたが、前言撤回! 大人も子供もそう変わらないのでは、という気がしてきました。(^^) 

この記事をお読みいただいている方の中には、ピアノを弾いてみたい、あるいは、いま習っているという大人の方もいるかと思いますが、「厳しい時期は、大人も子供、みんないっしょ」という事を、上のグラフから読み取っていただければ幸いです。

また、教本の傾向も、何かのご参考にしていただければ幸いです。
| 坂上酔狂 | 「大人のピアノ」私論 | 12:40 | comments(13) | trackbacks(0) | - | -
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