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2015.03.16 Monday
「ラベリングが出来ない」とはどういう事なのか/ピアノは目で弾け
●このままでは弾けるようにならない
先日(3/15)は、私の所属する音楽院の発表会でした。例によって、ボロボロ。
最近、このままではいくら練習しても、弾けるようにならない−−練習の方法を根本的に見直す必要があるのではないか、と思うようになってきました。
それはさておき、発表会の後で、ある方(ピアノの先生!)から、私が前回の記事で書いた「ラベリングが出来ない、という事が、いまひとつ分からない」という指摘を受けました。(音楽院では、わたくし酔狂の本名バレバレです・・・笑)
少々、こじつけ気味のたとえ話ですが、もう一度、説明してみたいと思います。
●「L」と「R」のゲーム
標準的な日本人(?)なら、英語の「L」と「R」の区別が苦手だと思います。(私も、そうです)
そこで、まず、下のようなボタンを用意ます。
次に、英語が母国語の方に、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」とか言ってもらい、対応するボタンを押すとします。
当然、標準的な日本人なら、正答率は約50%になるはずです。
なぜかと言うと、日本人には、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」が、「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」と聞こえるからです。「L」と「R」が別の音に聞こえません。したがって、左右どちらのボタンを押せばよいのか、分からないはずです。
一方、「a、i、u、e、o」は聞こえます。これは、日本語の母音の「あ、い、う、え、お」として聴き取れます。したがって、上下の行は、正しく選択できます。
だから、左右は分からないけど、上下は分かる。よって、正答率は50%です。
そこで、ちょっと無理がありますが、左右の「L」と「R」を音のラベル、すなわち、「ドレミ」だと、上下の「a、i、u、e、o」を音そのものの高さだと思ってください。
これがまさに、音は分かるけど、ドレミが分からない、「大人の初心者」の状態そのものなのです。
※縦と横の数が違うので、なんだかヘンですけど、細かい事は気にしないでください。要は、両方とも「音」なのだけど、聴き分けられる音とそうでない音がある、という事が書きたいのです。
●初心者でも音は分かるし、暗譜もできるし、歌える
「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」と聞こえた時点で、「音の高さ(=母音)」は正しく認識できています。
暗譜もできるはずです。
えっ! 覚えられないですか? じゃあ、曲のアナリーゼをしましょう。
「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」は、とっても「ロリっ子」な「ラリレーちゃん」の事なんだぜ! 「ロリ、ロリ、ラリレー、イェィ!」。さ、これで覚えましたね。(←お前は変態オヤヂか?!)
これで、暗譜できました。「ロリ、ロリ、ラリレー」と言えば、音の高さ(=母音)は合っていますから、正しく歌えている事になります。母音に関する音感はあるので、簡単です。
●しかし、場所のクソ暗記をしないと弾けない
音の高さも分かったし、暗譜もできました。
それでは、上のボタンを正しく押せますか?
押せないはずです。相変わらず、正解率50%。
音は分かっていても、ラベリング(「L」と「R」の区別=ドレミの区別)が出来ていません。「ロ」と言った時に、それが「Lo」なのか「Ro」なのか、まったく認識できまん。
だから正しいボタンは押せません。(ピアノなら、正しい鍵盤は押せません)
また、「ロリ、ロリ、ラリレー」とは言えますが、「L」と「R」を区別して発音できません。曲で言うなら、正しい「音程」では歌えますが、「ドレミ」では歌えません。(多くの日本人は、「L」と「R」が分かっていても、正しく発音できないと思います。例えば、lightとright。同じように、ドレミが「記号」として分かっていても、正しい「ドレミ」では歌えないのです。正しく歌えるのは、「ドレミ」ではなくて、「曲そのもの」を知っている場合です。)
では、この状態で、正しくボタンを押す(演奏する)ためには、どうしたらよいのか、というと、初期の段階では、ボタンの左右の順番をクソ暗記するしかありません。
「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」を、「右、右、左、右、左、左」とボタン(鍵盤)を押す順番として覚えるのです。覚え方は人それぞれ。視覚的に場所で覚えてもいいですし、お経(ドレミ般若心経?!)を唱えるように覚えてもいいです。
さあ、これでめでたくボタンが押せるようになりました。
これがすなわち、大人のピアノの初心者の演奏です。
●でも、これでは、弾けた事にならない
以上、半分冗談、ネタ話のようにも思えますが、大人の初心者がピアノを弾く状態は、本質的にこれと同じです。だから、けっこう本気でこの文章を書いています。
しかし、これでは、あまりにも脆弱。もし、左右の順を(鍵盤を押す順を)を必死に暗記したとしても、一度でもつかえたり、間違えたりすると、もう何だか分からなくなります。
現実の楽曲の場合は、ボタンは88鍵あります。曲の長さも少なくとも数百音符あります。これをクソ暗記で覚えても、あまりにも不安定ですし、その記憶を長期にわたって維持する事は、ほぼ不可能です。
これが、初心者が弾けない本質的な理由だと思います。
●では、どうしたらよいのか?
解決策は二つです。二つしか、ありません。
一つは「L」と「R」が瞬間的、直観的に区別できるようになる事です。
音楽で言えば、意識しなくても曲が自動的に「ドレミ」に聞こえるようになる事です。
前回の記事でいうと、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」を習得する、という事です。
これが出来れば、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」が、そのままちゃんと「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」に聞こえるはずです。そして、聞こえた内容を暗譜すれば、自動的に正しい「L」と「R」のボタンを選択できます。
もう一つは、楽譜を読めるようになる事です。
「ロリ、ロリ、ラリレー」と暗譜できている状態(すなわち、音としては暗譜できている状態)で、次のような「楽譜」を用意ます。
【RR LL RLL-】
この「楽譜」を見ながら、ボタンを押すのです。楽譜を読む訓練はしんどいですが、リアルタイムで正しく「L」と「R」(記号としての「ドレミ」)を読み取る事ができれば、正しく演奏できます。
これが、前回の記事に書いた「リアルタイム読譜・運指力」を習得する、という事です。
●分かって頂けたでしょうか?
今回の発表会では、3ページ中1ページ目は、楽譜を見てました。2ページ目に来た時に、一瞬、楽譜から視線が外れてしまいました。それで、その後は、ガタガタでした。
私は、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」を習得する事が出来ないみたいなので、まだしも見込みのある「リアルタイム読譜・運指力」を訓練するしかありません。
もちろん、実際のピアノ演奏では、初見以外は、ある程度まで指使いを暗譜します。
しかし、完全な暗譜は目指さずに、基本的には楽譜を見て、次の小節、次のフレーズのパターン、出だしの音や注意点のドレミなどを、楽譜からほぼ瞬間的に読み取れるように自分を鍛えるしか無いと思うのです。
また、「楽譜を見て弾く」と言っても、実際問題として、全く鍵盤を見ない「完全ブラインドタッチ」は多くの大人には無理です。要所要所で鍵盤をチラ見する「部分ブラインドタッチ」を練習するしかありません。
要するに、如何に「目を使うか」、言い換えれば、「読譜力の(超)高速化と、楽譜と鍵盤との間の視線移動のコツの習得」に、当分、全力でチャレンジしてみるしか無いな、と思っています。
※これが、「正しい練習法」かどうか、分かりません。その人のタイプにも依存すると思います。私の記事を参考になさる場合は、注意してください。
ピアノの先生は、「ピアノは耳で弾け」、「手首や腕や体全体で弾け」、「音楽を感じながら弾け」とおっしゃいます。もちろん、それはそれで当然なのですが、大人の初心者にとって、もしかしたら一番大切なのは、次の事です。
「ピアノは目で弾け」。
先日(3/15)は、私の所属する音楽院の発表会でした。例によって、ボロボロ。
最近、このままではいくら練習しても、弾けるようにならない−−練習の方法を根本的に見直す必要があるのではないか、と思うようになってきました。
それはさておき、発表会の後で、ある方(ピアノの先生!)から、私が前回の記事で書いた「ラベリングが出来ない、という事が、いまひとつ分からない」という指摘を受けました。(音楽院では、わたくし酔狂の本名バレバレです・・・笑)
少々、こじつけ気味のたとえ話ですが、もう一度、説明してみたいと思います。
●「L」と「R」のゲーム
標準的な日本人(?)なら、英語の「L」と「R」の区別が苦手だと思います。(私も、そうです)
そこで、まず、下のようなボタンを用意ます。
次に、英語が母国語の方に、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」とか言ってもらい、対応するボタンを押すとします。
当然、標準的な日本人なら、正答率は約50%になるはずです。
なぜかと言うと、日本人には、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」が、「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」と聞こえるからです。「L」と「R」が別の音に聞こえません。したがって、左右どちらのボタンを押せばよいのか、分からないはずです。
一方、「a、i、u、e、o」は聞こえます。これは、日本語の母音の「あ、い、う、え、お」として聴き取れます。したがって、上下の行は、正しく選択できます。
だから、左右は分からないけど、上下は分かる。よって、正答率は50%です。
そこで、ちょっと無理がありますが、左右の「L」と「R」を音のラベル、すなわち、「ドレミ」だと、上下の「a、i、u、e、o」を音そのものの高さだと思ってください。
これがまさに、音は分かるけど、ドレミが分からない、「大人の初心者」の状態そのものなのです。
※縦と横の数が違うので、なんだかヘンですけど、細かい事は気にしないでください。要は、両方とも「音」なのだけど、聴き分けられる音とそうでない音がある、という事が書きたいのです。
●初心者でも音は分かるし、暗譜もできるし、歌える
「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」と聞こえた時点で、「音の高さ(=母音)」は正しく認識できています。
暗譜もできるはずです。
えっ! 覚えられないですか? じゃあ、曲のアナリーゼをしましょう。
「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」は、とっても「ロリっ子」な「ラリレーちゃん」の事なんだぜ! 「ロリ、ロリ、ラリレー、イェィ!」。さ、これで覚えましたね。(←お前は変態オヤヂか?!)
これで、暗譜できました。「ロリ、ロリ、ラリレー」と言えば、音の高さ(=母音)は合っていますから、正しく歌えている事になります。母音に関する音感はあるので、簡単です。
●しかし、場所のクソ暗記をしないと弾けない
音の高さも分かったし、暗譜もできました。
それでは、上のボタンを正しく押せますか?
押せないはずです。相変わらず、正解率50%。
音は分かっていても、ラベリング(「L」と「R」の区別=ドレミの区別)が出来ていません。「ロ」と言った時に、それが「Lo」なのか「Ro」なのか、まったく認識できまん。
だから正しいボタンは押せません。(ピアノなら、正しい鍵盤は押せません)
また、「ロリ、ロリ、ラリレー」とは言えますが、「L」と「R」を区別して発音できません。曲で言うなら、正しい「音程」では歌えますが、「ドレミ」では歌えません。(多くの日本人は、「L」と「R」が分かっていても、正しく発音できないと思います。例えば、lightとright。同じように、ドレミが「記号」として分かっていても、正しい「ドレミ」では歌えないのです。正しく歌えるのは、「ドレミ」ではなくて、「曲そのもの」を知っている場合です。)
では、この状態で、正しくボタンを押す(演奏する)ためには、どうしたらよいのか、というと、初期の段階では、ボタンの左右の順番をクソ暗記するしかありません。
「ロ、リ、ロ、リ、ラ、リ、レ〜」を、「右、右、左、右、左、左」とボタン(鍵盤)を押す順番として覚えるのです。覚え方は人それぞれ。視覚的に場所で覚えてもいいですし、お経(ドレミ般若心経?!)を唱えるように覚えてもいいです。
さあ、これでめでたくボタンが押せるようになりました。
これがすなわち、大人のピアノの初心者の演奏です。
●でも、これでは、弾けた事にならない
以上、半分冗談、ネタ話のようにも思えますが、大人の初心者がピアノを弾く状態は、本質的にこれと同じです。だから、けっこう本気でこの文章を書いています。
しかし、これでは、あまりにも脆弱。もし、左右の順を(鍵盤を押す順を)を必死に暗記したとしても、一度でもつかえたり、間違えたりすると、もう何だか分からなくなります。
現実の楽曲の場合は、ボタンは88鍵あります。曲の長さも少なくとも数百音符あります。これをクソ暗記で覚えても、あまりにも不安定ですし、その記憶を長期にわたって維持する事は、ほぼ不可能です。
これが、初心者が弾けない本質的な理由だと思います。
●では、どうしたらよいのか?
解決策は二つです。二つしか、ありません。
一つは「L」と「R」が瞬間的、直観的に区別できるようになる事です。
音楽で言えば、意識しなくても曲が自動的に「ドレミ」に聞こえるようになる事です。
前回の記事でいうと、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」を習得する、という事です。
これが出来れば、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」が、そのままちゃんと「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」に聞こえるはずです。そして、聞こえた内容を暗譜すれば、自動的に正しい「L」と「R」のボタンを選択できます。
もう一つは、楽譜を読めるようになる事です。
「ロリ、ロリ、ラリレー」と暗譜できている状態(すなわち、音としては暗譜できている状態)で、次のような「楽譜」を用意ます。
【RR LL RLL-】
この「楽譜」を見ながら、ボタンを押すのです。楽譜を読む訓練はしんどいですが、リアルタイムで正しく「L」と「R」(記号としての「ドレミ」)を読み取る事ができれば、正しく演奏できます。
これが、前回の記事に書いた「リアルタイム読譜・運指力」を習得する、という事です。
【補足 2015/03/16 12:05】
ちょっぴり理系的に説明すると、ラベリング能力が無い人の場合、曲が「Xo、Xi、Xo、Xi、Xa、Xi、Xe〜」という形で頭に入っているのです。「o、i、o、a、i、e」すなわち音の高さ、曲そのものは暗譜していますが、ドレミが分からない「X」の状態です。
ここで、「RR LL RLL」という楽譜を読むと、「X」に、「L」、「R」が順次代入され、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」という「ドレミ」と「音そのもの」の組合せが再現されます。これを運指に変換するのです。この操作が、瞬間的に出来るようになりたいのです。
ちょっぴり理系的に説明すると、ラベリング能力が無い人の場合、曲が「Xo、Xi、Xo、Xi、Xa、Xi、Xe〜」という形で頭に入っているのです。「o、i、o、a、i、e」すなわち音の高さ、曲そのものは暗譜していますが、ドレミが分からない「X」の状態です。
ここで、「RR LL RLL」という楽譜を読むと、「X」に、「L」、「R」が順次代入され、「Ro、Ri、Lo、Li、Ra、Li、Le〜」という「ドレミ」と「音そのもの」の組合せが再現されます。これを運指に変換するのです。この操作が、瞬間的に出来るようになりたいのです。
●分かって頂けたでしょうか?
今回の発表会では、3ページ中1ページ目は、楽譜を見てました。2ページ目に来た時に、一瞬、楽譜から視線が外れてしまいました。それで、その後は、ガタガタでした。
私は、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」を習得する事が出来ないみたいなので、まだしも見込みのある「リアルタイム読譜・運指力」を訓練するしかありません。
もちろん、実際のピアノ演奏では、初見以外は、ある程度まで指使いを暗譜します。
しかし、完全な暗譜は目指さずに、基本的には楽譜を見て、次の小節、次のフレーズのパターン、出だしの音や注意点のドレミなどを、楽譜からほぼ瞬間的に読み取れるように自分を鍛えるしか無いと思うのです。
また、「楽譜を見て弾く」と言っても、実際問題として、全く鍵盤を見ない「完全ブラインドタッチ」は多くの大人には無理です。要所要所で鍵盤をチラ見する「部分ブラインドタッチ」を練習するしかありません。
要するに、如何に「目を使うか」、言い換えれば、「読譜力の(超)高速化と、楽譜と鍵盤との間の視線移動のコツの習得」に、当分、全力でチャレンジしてみるしか無いな、と思っています。
※これが、「正しい練習法」かどうか、分かりません。その人のタイプにも依存すると思います。私の記事を参考になさる場合は、注意してください。
ピアノの先生は、「ピアノは耳で弾け」、「手首や腕や体全体で弾け」、「音楽を感じながら弾け」とおっしゃいます。もちろん、それはそれで当然なのですが、大人の初心者にとって、もしかしたら一番大切なのは、次の事です。
「ピアノは目で弾け」。
2015.03.04 Wednesday
大人がピアノを《普通》に弾くためには
●大人のピアノの目標
《「普通の曲」を「普通に弾ける」ようになりたい》
これが大人から始めた方の典型的な目標でしょう。他にも、《あこがれの「あの1曲」が弾きたい》というのもあると思いますが、1曲弾けたら、他も弾きたくなるのが人情と言うものです。
ここで、「普通の曲」というのは、例えばクラシック系なら「ピアノ名曲集(初級編)」とか、ポピュラー系なら「J-POP&アニソン定番曲集」とか、ジャズ系なら「永遠のスタンダードナンバー ピアノソロ編」とか、その手の楽譜集に載っていそうな曲(ただし複数)という意味です。
そして、「普通に弾ける」というのは、そんな超絶技巧なんて無理だから、止まらずに、そこそこ音楽的に弾ければよい、ということです。
●ぜんぜん普通じゃない《普通》
実は、《あこがれの「あの1曲」が弾きたい》は簡単です。
大人の気合と集中力と見栄とセコさで、数か月か1年その曲をひたすら練習すれば、簡略化したアレンジ譜かもしれませんが、いちおう弾けるようになります。勘のいい若い方なら、数週間で行けるかもしれません。はい、たいへんよくできました(花マル)!
それで、普通は、「1曲弾けたんだから、他の曲も《普通》に練習すれば弾けるようなるだろ」と考えます。
これが、ならないんです。ホントに。悲しいくらいに。
正確に言うと、弾けるようになるんですけど、前の曲が弾けなくなります。暗譜が記憶から消えます。だから、何とか弾けるのは、練習中の今の1曲だけ。
永遠の《あこがれの「あの1曲」型》です。
ここに至って、「基礎力が無いからダメなんだ」と悟ります。
それで、遅かれ早かれ、基礎練習を始めます。
そして、その基礎練習を通じて、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるためには、膨大な時間と労力が必要なことを理解します。《普通》は普通じゃないんです。
もう、ここまでは、超定番、お約束のコースです。
「初心者ピアノ」のBlogを良く見るのですが、それはもう皆さん、感心するぐらいに同じ道を通ります。
さて、ここから先が、今回、書きたいことの本題です。(前置きが長くてスミマセン)
●《普通》に弾けない理由
「音楽性が無い」からじゃありません。ピアノを弾きたいと思う大人は、みんな音楽が好きでしょうし、音楽を「歌う力」を持っているはずです。
「指が動かない」からでもありません。「普通の曲」程度であれば、訓練で動くようになります。
では、何が問題かというと・・・。
それは、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」が無いからです。(詳細は後述しますが、内容は何となく分かると思います。)
どちらの能力もない場合、曲を弾くためには、運指をひたすら暗記するしかありません。多くは視覚的な記憶に頼ることになります。大人の初心者に多く見られる、いわゆる「鍵盤凝視弾き」、「うつむき弾き」、「覚え弾き」です。
人間の記憶力には限界がありますから、この「覚え弾き」で弾ける曲数には限界があります。これが、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようにならない理由です。
●「普通に弾く」ための能力
ピアノを「普通に弾く」ためには、次の二つの能力の「どちらか一方」が必須です。曲がりなりにも11年間ピアノを弾いてきた私の結論です。(もちろん両方あればなおよい)
(1) ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力
音を聴くだけ(あるいは、思い浮かべるだけ)でドレミと鍵盤位置が分かる(ラベリングできる)能力です。絶対音感か相対音感かは問いません。絶対音感の方なら、「ド」の音を聴けばそれが自動的に音名の「ド」と認識され、「ド」の鍵盤位置が決定されます。相対音感の方なら、認識された階名から調に応じた鍵盤位置への変換が必要になりますが、それさえできれば、絶対音感の方とほぼ同じです。
絶対音感・相対音感どちらの場合でも、知っている曲なら、それを頭の中でドレミで鳴らすことができ、ドレミが鳴った時点で鍵盤位置が決定されます。すなわち、弾けます。
※【補足】よく考えたら、音からドレミを介在せずに直接鍵盤位置にラベリングするタイプもあるはずです。いわば、「ダイレクト鍵盤位置ラベリング能力」です。もしかしたら、ジャズ・ポピュラー系の方に多いのかもしれません。今回の記事では、便宜上、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の一変種ということにさせてください。また、以下の文章も適宜読み替えてください。(ちょっと手抜きですが、書き直す元気がないので・・・笑)
(2) リアルタイム読譜・運指力
演奏速度で楽譜を読んでそれを運指に変換する能力です。クラシック系なら楽譜に忠実に、ジャズ系ならリードシート(メロディ+コード)からアドリブ(インプロヴァイゼーション)で運指を決定します。楽譜を見ますから、当然、鍵盤を見ないで弾くブラインドタッチが前提となります。(チラ見はOK・・・ジャズだとかなり鍵盤見てもOKかな?)
この能力があれば、基本的に楽譜さえあればどんな曲でも弾けるはずです。
●なぜ、「どちらか一方」あればいいのか
まず、曲そのものは、ほぼ頭の中に入っていることが大前提です。
また、たくさんの曲の運指をすべて覚えているのは、驚異的な記憶力の持ち主でない限り、不可能です。
ですから、頭の中で曲のイメージをどうやって保持しているのか、そこからどうやって運指を決定しているのか、それが鍵となると思うのです。
私は、大きく分けて二つの方法があると考えています。「弾いたことは無いが、知っている曲を初めて弾く」ことを想定してみてください。
(1) もし「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」があれば、「曲を知っている」ことと「ドレミを知っている」ことは等価です。ただし、「弾いた事はない」ので、鍵盤位置は演奏時に認識されます。したがって、(基本的には楽譜無しでも)次の順で運指が決定されます。
【頭の中の曲のイメージ+ドレミ】→【弾くべき鍵盤位置】→【運指】
(2) もし「リアルタイム読譜・運指力」があれば、曲のイメージと楽譜からの外部情報により、次の順で運指が決定されます。(ただし、ラベリング能力が弱い場合は、「曲を知っている」ことと「ドレミを知っている」ことは等価ではないことに注意してください。)
【頭の中の曲の音のイメージ+楽譜の音符・指番号】→【ドレミ+弾くべき鍵盤位置】→【運指】
初見が得意な方、耳コピが得意な方は、この双方が強力かつうまく連携できているのだと思います。(細部は個人差があると思いますが)
いずれにしても、上の(1)か(2)のどちらか一方が動けば、曲は弾けます。
●ピアノの先生には分からないかもしれない
ピアノの先生は、子供の時から練習を重ねて、この「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」の両方を身に付けた人たちです。
一方、大人から始めた初心者は、この二つの能力がまったくありません。
もちろん小さな子供にもこの二つの能力は無いのですが、ちゃんと教えて、ちゃんと練習すれば、身に付きます。
もしかしたら、ピアノの先生は、ご自分が小さい時にどうやってこの能力を身に付けたか、記憶が無いのかもしれません。特に、ドレミがどういうプロセスを踏んでドレミに聞こえるようになったのか、その成長過程を客観的に説明できるでしょうか?
だから、ピアノの先生は、大人から始めた人の頭の中が分からないのかもしれません。(ピアノの先生のBlogなどで、そう受け取れる記述を時々見かけます)
●大人から始めて「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」は身に付くのか?
あくまでも私の場合です。
11年間、それなりに努力もしましたが、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」はまったく付きませんでした。私には、どうしても曲がドレミに聞こえません。ドレミが分からないので、当然、鍵盤位置にも変換できません。
その代わりに、例えば下のト長調の音階を「シ・ミ・ド・ラ・ファ・レ・ラ・ソ・レ〜」とか歌えます。(一度、師匠の前でやってみせました。師匠「気持ち悪くありませんか?」、私「いえ、全然!」。)
これは、「相対音感が無い」というのとは違いますから、間違えないでくださいね。それなりの相対音感は、たぶん、あります。
そうではなくて、「ド」の音が「ド」という記号(ラベル)と結びつかないのです。これは、そういう風に私の脳が出来上がってしまっているからだと思います。要するに、「ラベリング能力が無い(→だったら鍛えればよい)」というのではなく、「ラベリングしない方向に能力が発達してしまっている」ということだと思います。
私の主張に疑問をお持ちの方(で、ラベリング能力がある方)、上のト長調の音階を、下のように歌う練習をしてみてください。けっこう「キツイ」と思いますよ。
(1) ド・ラ・ファ・レ・レ・ド・ド・ソ・ラ
(2) レ・ミ・ファ・ファ・ラ・ミ・ド・ド・ド
(3) ソ・ミ・ミ・ミ・レ・ファ・ミ・ラ・ド
(4) ミ・ファ・シ・ファ・レ・ラ・ファ・レ・ファ
(5) レ・ソ・ラ・シ・ド・ファ・ド・ファ・ソ
(6) ラ・シ・ファ・ファ・レ・レ・レ・レ・ミ
以下、果てしなく続く・・・
これは、「ラベリング型」の音感の方に、「ノン・ラベリング型」の音感を身に付けていただくための、暗黒のソルフェージュ(笑)の練習です。
「ノン・ラベリング型」の私が、「ラベリング型」の練習をするのも、たぶん、同じぐらい大変です。
もしかしたら、「ノン・ラベリング型」から「ラベリング型」への移行には、ある種の年齢的な限界(臨界期)があるのかもしれない、と感じています。(実証研究を探したのですが、うまく見つけられませんでした。よって、あくまでも「個人の感想(笑)」です。)
ちなみに、絶対音感は6〜7歳ぐらいまでに何らかの訓練をしないと習得できない、とされています。(根拠を知りたい方は、そのへんの素人のサイト(←たとえば私のサイト。笑)ではなくて、Google Scholarあたりで「絶対音感」、「absolute pitch」といったキーワードで論文を検索してみてください。)
●大人から始めて「リアルタイム読譜・運指力」は身に付くのか?
こちらも、あくまでも私の場合です。
身に付きます。恐ろしく、時間と手間はかかりますが。
いま、バッハの平均律の鬼楽譜(笑)と悪戦苦闘してますが、たまに、昔やった楽譜を取り出してみると、易しく感じます。
当時は、数小節進むだけで何日もかかった曲でも、とりあえず、超ゆっくり、間違えたり止まったりはしますが、通しで弾けます。(ということは、弾けてない、ということですが・・・笑)
だから現状だと、《「普通の曲」を「ヘナチョコに弾ける」》程度ですが、読譜力も運指力もゆっくり向上して来てるのが分かります。まだ「普通に弾ける」まで何年もかかりそうですが、手の届かない目標ではないと思います。
●努力目標・・・私の場合
ですから、私の場合、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるためには、
(1) 「リアルタイム読譜・運指力」に全力を投入する。すなわち、楽譜を見て弾くことに集中する。
(2) 「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」は、あきらめる。
というのが唯一の方法ではないかと考えています。
●《普通に弾ける》までの道はタイプによって違う
実は、今回の記事を書くきっかけになったのは、前回の記事で「暗譜した方がよい」というコメントを頂いた事と、大人の指導に力を入れているであろうピアノの先生のBlog(複数)に「大人に楽譜を読むように指導するのは困難」という主旨の発言を見つけたからです。
もし、ある大人の生徒さんが、私のように「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」が身に付かないタイプだとすると、楽譜を読むことを放棄した時点で、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようにならない、という結論になります。これは、「良い・悪い」の問題でなくて、論理的に考えて、そうなる、という話です。
このような生徒さんの場合は、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ためには、たとえ道は長く険しくとも、読譜力とブラインドタッチ力を徹底的に強化するのが、ほぼ唯一の方法のはずです。
また、楽譜を見て弾くのが基本なので、暗譜にはこだわらなくよい、ということになります。
逆のケースとして、その生徒さんが、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の素質はあるが、「リアルタイム読譜・運指力」が苦手な場合を考えてみます。ようするに「聴いて覚えた曲は弾ける」方です。
このような方は、もしかしたらクラシック系より、コード奏法によるポピュラー演奏などに向いているのかもしれません。右手のメロディは「知っている」ので弾けますし、左手のコード演奏は、ある意味ワンパターンです。ポピュラー系限定なら、意外とあっさり《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるかもしれません。ただし、複雑な音を駆使するクラシック、特にバッハのような曲は苦手かもしれません。
さらに言えば、このタイプの人は、さほどブラインドタッチにこだわらなくてよいのかもしれません。(猫背で鍵盤凝視はマズイと思いますが。)
●片手練習 v.s. 両手練習
その人の「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」の優位性と、効率的な練習法にも関係があるはずです。
例えば、片手練習と両手練習のどちらが良いのか、という議論。
「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」が優位の方は、たぶん、片手練習が有効です。
このような方は、曲を、左右それぞれのメロディとして「聴いて覚える」はずです。人間は、同時に複数のメロディを「聞く」ことはできますが、同時に複数のメロディを「発声」することは、身体構造上不可能です。よって、一つのメロディを弾いて歌って覚えて、最後にそれらを組み合わせる、という練習は合理的です。
一方、「リアルタイム読譜・運指力」が優位の方は、たぶん、両手練習の方が有効です。
ちょっと話がそれますが、楽譜がまったく読めない初心者でも、将来、読譜力が育つ可能性か高いかどうか判定する方法があります。(たぶん)
それは、本を読むのが速いかどうか、です。(私は、自慢しているようで申し訳ないのですが、かなり速いです。)
速読する時は、複数箇所をほぼ同時に読んでます。もちろん、ある瞬間には一箇所を注視しているのですが、視点を高速に動かしています。また、語の順番どおりには読みません。飛ばして読んで、必要とあらばさっと戻って読んで、前の行を読んで、次の行を読んで、という読み方をします。
この能力が、そのまま読譜力に転化されるはずです。
このような方の場合、曲を、楽譜を読む視点移動の連鎖として「見て覚える」はずです。「正しい場所」を見ることができれば「正しく弾けます」。片手練習は、(テニック的に弾きにくい箇所ではやりますが、)基本的に無駄、場合によっては有害です。なぜなら、片手練習と両手練習では視点移動のやり方が異なるからです。片手練習で付けた「視点移動の癖」を、両手練習に切り替えた時にいったんリセットして、改めて両手演奏用の「視点移動の癖」を付けるのは二度手間です。最初から、両手練習によって曲を弾くために必要な視点移動を練習した方が有効です。(もちろん歌うことも有効ですよ!)
●タイプによって練習法を変える−−それが《普通に弾ける》ための最短距離
最後にまとめとして、大人の初心者の場合は、タイプに応じて練習法を変えるべき、というのが結論です。ピアノの先生側から見ると、指導法を変える、場合によっては、まったく逆の指導をする、ということになります。
もちろん、「リアルタイム読譜・運指力」と「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の双方を鍛えることが理想ですし、小さな子供さんの場合はある程度可能でしょう。
しかし、大人の場合は、時間がありませんし、脳の可塑性が低下しています。本人の適性と逆の練習/指導だと、ピアノがイヤになってしまいます。
大人には、子供の柔軟性・学習能力はありませんが、知恵はあります。ぜひ、いろいろと考えて工夫して、《普通に弾ける》ための最短コースを探してください。それが、《「普通の曲」を「自由に楽しく弾く」》ためのコツです。
※今回の記事では、下のサイトが大変参考になりました。ありがとうございました。
あなたの音感は何型か?(たくき よしみさん) http://takuki.com/onkangata.html
《「普通の曲」を「普通に弾ける」ようになりたい》
これが大人から始めた方の典型的な目標でしょう。他にも、《あこがれの「あの1曲」が弾きたい》というのもあると思いますが、1曲弾けたら、他も弾きたくなるのが人情と言うものです。
ここで、「普通の曲」というのは、例えばクラシック系なら「ピアノ名曲集(初級編)」とか、ポピュラー系なら「J-POP&アニソン定番曲集」とか、ジャズ系なら「永遠のスタンダードナンバー ピアノソロ編」とか、その手の楽譜集に載っていそうな曲(ただし複数)という意味です。
そして、「普通に弾ける」というのは、そんな超絶技巧なんて無理だから、止まらずに、そこそこ音楽的に弾ければよい、ということです。
●ぜんぜん普通じゃない《普通》
実は、《あこがれの「あの1曲」が弾きたい》は簡単です。
大人の気合と集中力と見栄とセコさで、数か月か1年その曲をひたすら練習すれば、簡略化したアレンジ譜かもしれませんが、いちおう弾けるようになります。勘のいい若い方なら、数週間で行けるかもしれません。はい、たいへんよくできました(花マル)!
それで、普通は、「1曲弾けたんだから、他の曲も《普通》に練習すれば弾けるようなるだろ」と考えます。
これが、ならないんです。ホントに。悲しいくらいに。
正確に言うと、弾けるようになるんですけど、前の曲が弾けなくなります。暗譜が記憶から消えます。だから、何とか弾けるのは、練習中の今の1曲だけ。
永遠の《あこがれの「あの1曲」型》です。
ここに至って、「基礎力が無いからダメなんだ」と悟ります。
それで、遅かれ早かれ、基礎練習を始めます。
そして、その基礎練習を通じて、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるためには、膨大な時間と労力が必要なことを理解します。《普通》は普通じゃないんです。
もう、ここまでは、超定番、お約束のコースです。
「初心者ピアノ」のBlogを良く見るのですが、それはもう皆さん、感心するぐらいに同じ道を通ります。
さて、ここから先が、今回、書きたいことの本題です。(前置きが長くてスミマセン)
●《普通》に弾けない理由
「音楽性が無い」からじゃありません。ピアノを弾きたいと思う大人は、みんな音楽が好きでしょうし、音楽を「歌う力」を持っているはずです。
「指が動かない」からでもありません。「普通の曲」程度であれば、訓練で動くようになります。
では、何が問題かというと・・・。
それは、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」が無いからです。(詳細は後述しますが、内容は何となく分かると思います。)
どちらの能力もない場合、曲を弾くためには、運指をひたすら暗記するしかありません。多くは視覚的な記憶に頼ることになります。大人の初心者に多く見られる、いわゆる「鍵盤凝視弾き」、「うつむき弾き」、「覚え弾き」です。
人間の記憶力には限界がありますから、この「覚え弾き」で弾ける曲数には限界があります。これが、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようにならない理由です。
●「普通に弾く」ための能力
ピアノを「普通に弾く」ためには、次の二つの能力の「どちらか一方」が必須です。曲がりなりにも11年間ピアノを弾いてきた私の結論です。(もちろん両方あればなおよい)
(1) ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力
音を聴くだけ(あるいは、思い浮かべるだけ)でドレミと鍵盤位置が分かる(ラベリングできる)能力です。絶対音感か相対音感かは問いません。絶対音感の方なら、「ド」の音を聴けばそれが自動的に音名の「ド」と認識され、「ド」の鍵盤位置が決定されます。相対音感の方なら、認識された階名から調に応じた鍵盤位置への変換が必要になりますが、それさえできれば、絶対音感の方とほぼ同じです。
絶対音感・相対音感どちらの場合でも、知っている曲なら、それを頭の中でドレミで鳴らすことができ、ドレミが鳴った時点で鍵盤位置が決定されます。すなわち、弾けます。
※【補足】よく考えたら、音からドレミを介在せずに直接鍵盤位置にラベリングするタイプもあるはずです。いわば、「ダイレクト鍵盤位置ラベリング能力」です。もしかしたら、ジャズ・ポピュラー系の方に多いのかもしれません。今回の記事では、便宜上、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の一変種ということにさせてください。また、以下の文章も適宜読み替えてください。(ちょっと手抜きですが、書き直す元気がないので・・・笑)
(2) リアルタイム読譜・運指力
演奏速度で楽譜を読んでそれを運指に変換する能力です。クラシック系なら楽譜に忠実に、ジャズ系ならリードシート(メロディ+コード)からアドリブ(インプロヴァイゼーション)で運指を決定します。楽譜を見ますから、当然、鍵盤を見ないで弾くブラインドタッチが前提となります。(チラ見はOK・・・ジャズだとかなり鍵盤見てもOKかな?)
この能力があれば、基本的に楽譜さえあればどんな曲でも弾けるはずです。
●なぜ、「どちらか一方」あればいいのか
まず、曲そのものは、ほぼ頭の中に入っていることが大前提です。
また、たくさんの曲の運指をすべて覚えているのは、驚異的な記憶力の持ち主でない限り、不可能です。
ですから、頭の中で曲のイメージをどうやって保持しているのか、そこからどうやって運指を決定しているのか、それが鍵となると思うのです。
私は、大きく分けて二つの方法があると考えています。「弾いたことは無いが、知っている曲を初めて弾く」ことを想定してみてください。
(1) もし「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」があれば、「曲を知っている」ことと「ドレミを知っている」ことは等価です。ただし、「弾いた事はない」ので、鍵盤位置は演奏時に認識されます。したがって、(基本的には楽譜無しでも)次の順で運指が決定されます。
【頭の中の曲のイメージ+ドレミ】→【弾くべき鍵盤位置】→【運指】
(2) もし「リアルタイム読譜・運指力」があれば、曲のイメージと楽譜からの外部情報により、次の順で運指が決定されます。(ただし、ラベリング能力が弱い場合は、「曲を知っている」ことと「ドレミを知っている」ことは等価ではないことに注意してください。)
【頭の中の曲の音のイメージ+楽譜の音符・指番号】→【ドレミ+弾くべき鍵盤位置】→【運指】
初見が得意な方、耳コピが得意な方は、この双方が強力かつうまく連携できているのだと思います。(細部は個人差があると思いますが)
いずれにしても、上の(1)か(2)のどちらか一方が動けば、曲は弾けます。
●ピアノの先生には分からないかもしれない
ピアノの先生は、子供の時から練習を重ねて、この「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」の両方を身に付けた人たちです。
一方、大人から始めた初心者は、この二つの能力がまったくありません。
もちろん小さな子供にもこの二つの能力は無いのですが、ちゃんと教えて、ちゃんと練習すれば、身に付きます。
もしかしたら、ピアノの先生は、ご自分が小さい時にどうやってこの能力を身に付けたか、記憶が無いのかもしれません。特に、ドレミがどういうプロセスを踏んでドレミに聞こえるようになったのか、その成長過程を客観的に説明できるでしょうか?
だから、ピアノの先生は、大人から始めた人の頭の中が分からないのかもしれません。(ピアノの先生のBlogなどで、そう受け取れる記述を時々見かけます)
●大人から始めて「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」は身に付くのか?
あくまでも私の場合です。
11年間、それなりに努力もしましたが、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」はまったく付きませんでした。私には、どうしても曲がドレミに聞こえません。ドレミが分からないので、当然、鍵盤位置にも変換できません。
その代わりに、例えば下のト長調の音階を「シ・ミ・ド・ラ・ファ・レ・ラ・ソ・レ〜」とか歌えます。(一度、師匠の前でやってみせました。師匠「気持ち悪くありませんか?」、私「いえ、全然!」。)
これは、「相対音感が無い」というのとは違いますから、間違えないでくださいね。それなりの相対音感は、たぶん、あります。
そうではなくて、「ド」の音が「ド」という記号(ラベル)と結びつかないのです。これは、そういう風に私の脳が出来上がってしまっているからだと思います。要するに、「ラベリング能力が無い(→だったら鍛えればよい)」というのではなく、「ラベリングしない方向に能力が発達してしまっている」ということだと思います。
私の主張に疑問をお持ちの方(で、ラベリング能力がある方)、上のト長調の音階を、下のように歌う練習をしてみてください。けっこう「キツイ」と思いますよ。
(1) ド・ラ・ファ・レ・レ・ド・ド・ソ・ラ
(2) レ・ミ・ファ・ファ・ラ・ミ・ド・ド・ド
(3) ソ・ミ・ミ・ミ・レ・ファ・ミ・ラ・ド
(4) ミ・ファ・シ・ファ・レ・ラ・ファ・レ・ファ
(5) レ・ソ・ラ・シ・ド・ファ・ド・ファ・ソ
(6) ラ・シ・ファ・ファ・レ・レ・レ・レ・ミ
以下、果てしなく続く・・・
これは、「ラベリング型」の音感の方に、「ノン・ラベリング型」の音感を身に付けていただくための、暗黒のソルフェージュ(笑)の練習です。
「ノン・ラベリング型」の私が、「ラベリング型」の練習をするのも、たぶん、同じぐらい大変です。
もしかしたら、「ノン・ラベリング型」から「ラベリング型」への移行には、ある種の年齢的な限界(臨界期)があるのかもしれない、と感じています。(実証研究を探したのですが、うまく見つけられませんでした。よって、あくまでも「個人の感想(笑)」です。)
ちなみに、絶対音感は6〜7歳ぐらいまでに何らかの訓練をしないと習得できない、とされています。(根拠を知りたい方は、そのへんの素人のサイト(←たとえば私のサイト。笑)ではなくて、Google Scholarあたりで「絶対音感」、「absolute pitch」といったキーワードで論文を検索してみてください。)
●大人から始めて「リアルタイム読譜・運指力」は身に付くのか?
こちらも、あくまでも私の場合です。
身に付きます。恐ろしく、時間と手間はかかりますが。
いま、バッハの平均律の鬼楽譜(笑)と悪戦苦闘してますが、たまに、昔やった楽譜を取り出してみると、易しく感じます。
当時は、数小節進むだけで何日もかかった曲でも、とりあえず、超ゆっくり、間違えたり止まったりはしますが、通しで弾けます。(ということは、弾けてない、ということですが・・・笑)
だから現状だと、《「普通の曲」を「ヘナチョコに弾ける」》程度ですが、読譜力も運指力もゆっくり向上して来てるのが分かります。まだ「普通に弾ける」まで何年もかかりそうですが、手の届かない目標ではないと思います。
●努力目標・・・私の場合
ですから、私の場合、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるためには、
(1) 「リアルタイム読譜・運指力」に全力を投入する。すなわち、楽譜を見て弾くことに集中する。
(2) 「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」は、あきらめる。
というのが唯一の方法ではないかと考えています。
●《普通に弾ける》までの道はタイプによって違う
実は、今回の記事を書くきっかけになったのは、前回の記事で「暗譜した方がよい」というコメントを頂いた事と、大人の指導に力を入れているであろうピアノの先生のBlog(複数)に「大人に楽譜を読むように指導するのは困難」という主旨の発言を見つけたからです。
もし、ある大人の生徒さんが、私のように「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」が身に付かないタイプだとすると、楽譜を読むことを放棄した時点で、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようにならない、という結論になります。これは、「良い・悪い」の問題でなくて、論理的に考えて、そうなる、という話です。
このような生徒さんの場合は、《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ためには、たとえ道は長く険しくとも、読譜力とブラインドタッチ力を徹底的に強化するのが、ほぼ唯一の方法のはずです。
また、楽譜を見て弾くのが基本なので、暗譜にはこだわらなくよい、ということになります。
逆のケースとして、その生徒さんが、「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の素質はあるが、「リアルタイム読譜・運指力」が苦手な場合を考えてみます。ようするに「聴いて覚えた曲は弾ける」方です。
このような方は、もしかしたらクラシック系より、コード奏法によるポピュラー演奏などに向いているのかもしれません。右手のメロディは「知っている」ので弾けますし、左手のコード演奏は、ある意味ワンパターンです。ポピュラー系限定なら、意外とあっさり《「普通の曲」を「普通に弾ける」》ようになるかもしれません。ただし、複雑な音を駆使するクラシック、特にバッハのような曲は苦手かもしれません。
さらに言えば、このタイプの人は、さほどブラインドタッチにこだわらなくてよいのかもしれません。(猫背で鍵盤凝視はマズイと思いますが。)
●片手練習 v.s. 両手練習
その人の「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」と「リアルタイム読譜・運指力」の優位性と、効率的な練習法にも関係があるはずです。
例えば、片手練習と両手練習のどちらが良いのか、という議論。
「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」が優位の方は、たぶん、片手練習が有効です。
このような方は、曲を、左右それぞれのメロディとして「聴いて覚える」はずです。人間は、同時に複数のメロディを「聞く」ことはできますが、同時に複数のメロディを「発声」することは、身体構造上不可能です。よって、一つのメロディを弾いて歌って覚えて、最後にそれらを組み合わせる、という練習は合理的です。
一方、「リアルタイム読譜・運指力」が優位の方は、たぶん、両手練習の方が有効です。
ちょっと話がそれますが、楽譜がまったく読めない初心者でも、将来、読譜力が育つ可能性か高いかどうか判定する方法があります。(たぶん)
それは、本を読むのが速いかどうか、です。(私は、自慢しているようで申し訳ないのですが、かなり速いです。)
速読する時は、複数箇所をほぼ同時に読んでます。もちろん、ある瞬間には一箇所を注視しているのですが、視点を高速に動かしています。また、語の順番どおりには読みません。飛ばして読んで、必要とあらばさっと戻って読んで、前の行を読んで、次の行を読んで、という読み方をします。
この能力が、そのまま読譜力に転化されるはずです。
このような方の場合、曲を、楽譜を読む視点移動の連鎖として「見て覚える」はずです。「正しい場所」を見ることができれば「正しく弾けます」。片手練習は、(テニック的に弾きにくい箇所ではやりますが、)基本的に無駄、場合によっては有害です。なぜなら、片手練習と両手練習では視点移動のやり方が異なるからです。片手練習で付けた「視点移動の癖」を、両手練習に切り替えた時にいったんリセットして、改めて両手演奏用の「視点移動の癖」を付けるのは二度手間です。最初から、両手練習によって曲を弾くために必要な視点移動を練習した方が有効です。(もちろん歌うことも有効ですよ!)
●タイプによって練習法を変える−−それが《普通に弾ける》ための最短距離
最後にまとめとして、大人の初心者の場合は、タイプに応じて練習法を変えるべき、というのが結論です。ピアノの先生側から見ると、指導法を変える、場合によっては、まったく逆の指導をする、ということになります。
もちろん、「リアルタイム読譜・運指力」と「ドレミ・鍵盤位置ラベリング能力」の双方を鍛えることが理想ですし、小さな子供さんの場合はある程度可能でしょう。
しかし、大人の場合は、時間がありませんし、脳の可塑性が低下しています。本人の適性と逆の練習/指導だと、ピアノがイヤになってしまいます。
大人には、子供の柔軟性・学習能力はありませんが、知恵はあります。ぜひ、いろいろと考えて工夫して、《普通に弾ける》ための最短コースを探してください。それが、《「普通の曲」を「自由に楽しく弾く」》ためのコツです。
※今回の記事では、下のサイトが大変参考になりました。ありがとうございました。
あなたの音感は何型か?(たくき よしみさん) http://takuki.com/onkangata.html
2015.02.01 Sunday
ピアノ継続率(挫折率)と教本
前回の記事の続きとなります。今回は、ピティナ・ピアノステップの各ステップ毎の分布と、使用されている教本(教則本)を、少し詳しく見ていきたいと思います。(前回の記事と合わせてお読みいただければ、と思います。)
結果は、基本的に前回の記事と同じ傾向を示すのですが、詳しく見ることで、少し変わってきた点もあります。
●ピティナ・ピアノステップとは
繰り返しになりますが、ピティナ・ピアノステップについて簡単に説明します。
「ピティナ・ピアノステップ」というのは、PTNA(ピティナ/一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)の開催しているイベントで、簡単に言うと、
(詳しくは、PTNAのWebサイトを参照してください。開催記録データの出典も同サイトになります。)
このPNTAのサイトに、過去約一年分、2万件超の開催記録(ステップやフリーの区分、曲名など)が載っています。このデータを酔狂流屁理屈で分析(?)したのが、この記事です。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ22,850件)
●結果のグラフと表
以下の通りです。まずはじっくりご覧ください。
グラフが23ステップの課題曲(フリーは除く)の受講者の割合です。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ11,941件、数値は一番受講者の多い「基礎1」を100%とした時の相対比率)
グラフの下に代表的な教本(教則本)と、ステップとの対応を載せてあります。曲番の指定がある場合はその番号、無い場合はマル印、ソナチネに関しては易しいグループと難しいグループに分かれているので「易」「難」と記載してあります。
表のいちばん下の「段階」は、私が独断と偏見で付けた上達のレベルです。
●教本はいろいろ
注意していただきたいのは、ピティナ・ピアノステップでは、さまざまな教本が使用されている、という点です。例えばバイエルですが、基礎段階のステップでの採択率は5〜6パーセント前後です。他にも、バスティン、ギロック、トンプソン、その他もろもろ、20種類前後の本が使用されています。
使用されている教本について、後ほど、個々のステップ別に詳しく見ていきます。
以下の教本の表で使用しているのは、各ステップ毎の「作曲者」ごとのトップ10です。(期間は上に同じ。ステップとフリー合わせて22,850件、41,088曲のデータです。一度に、一人2曲演奏というケースが多いです。なお、ステップでは課題曲と自由曲の2曲を弾きますので、その双方のデータが含まれています。)
作曲者を集計しているは、作曲者が教本の通称になるケースが多いからです。あと傾向を分析するのに便利です。
ただし、けっこう表記に揺れがあるので、必ずしも作曲者になっていない場合がかなり含まれます。あくまでも、目安とお考えください。
基本的に、以下のルールで集計しました。
●導入1〜導入3:ここは小さな子供さん向け
ここは、基本的に、就学前の小さなお子さんや小学校低学年の生徒さんなどが「ピアノに初めて触る」段階です。
大人の場合は、ここは省略してしまう事も多いでしょう。よって、説明も省略。(^^)
※作曲者の集計がうまくいってません。「なんとか民謡」とか「外国曲」とかになってしまってます。悪しからず。
●基礎1〜基礎4:初級前半は挫折しない
基礎1は「バイエル45番」からになっていますが、ここが、まさに、私が45才でピアノを始めた時の曲です。(正確には、40番をやって、4曲飛ばして、45番からほぼ順番どおりにやりました。)
他の教本の場合でも、まったく未経験の大人が始めるのは、ほぼこのレベルからだと思います。
グラフを見れば分かるように、基礎1〜基礎4は、ほとんど件数が減っていません。
この段階ははっきり言って「簡単」ですし、鍵盤を押して音がでるのが楽しい時期です。大人も子供もたぶん同じでしょう。
また、教本としてはバスティンが多いようです。我らがバイエル(?)も健闘してます。
最後の基礎4で、ブルグミュラーが出てきます。これは、「ブルグミュラー25の練習曲」です。根強い人気があるようです。
●基礎5・応用1〜応用3:初級後半の壁
基礎5から件数が急速に減少し、応用3の段階で半減以下になってしまいます。
バイエルで言うと90番台以降、ブルグミュラー25の練習曲だと5番以降です。
難易度がどんどん高くなっていくのです。
ここは私がかつて「バイエル80番台の壁」と呼んだ箇所です。
「バイエル80番台と90番台だと、10番ずれてるじゃないか!」という突っ込み無しでお願いします。個人の体感の差もありますし、バイエルやっていた子が、80番台は頑張ったけど、90番台には行けなかったのかもしれません。(←苦しい言い訳)
それはともかく、上に書いたように、ピティナ・ピアノステップでは様々な教本が使用されています。「どんな教本を使おうが急減少している」という点から考えて、初級後半の持っている本質的な難しさが出ているのだと思います。
したがって、ここは、「バイエル80番台の壁」じゃなくて、「初級後半の壁」と呼んだ方がよさそうです。
前回の記事にも書いたように、このピティナ・ピアノステップのデータからは時間軸や個人の長期データが分からないので、件数がそのまま継続率になる訳ではありません。しかし、いちステップあたりの所要時間は基礎より応用の方が長い、と推定するのが妥当でしょうから、実際には初級後半を終える事が出来るのは、ざっくり言って、1/3程度ではないか、と思います。
また、この段階の特徴として、「初級後半全体が分厚い壁になっている」という事が言えると思います。これが次の「中級入口の壁」との大きな違いです。
※注:前回の記事では、基礎5を「初級前半」としていましたが、以上述べたように「初級後半」に分類した方がよさそうです。今回の記事では基礎5から応用3を「初級後半」としています。
一方、教本としては、ブルグミュラーが強い。
ただし、クレメンティ、クーラウ、A.スカルラッティなどは、曲集ソナチネの作曲家です。この段階の後半になると、その合計数がブルグミュラーを上回ります。ソナチネもまた、根強い人気を誇るようです。
一つの面白いのは、まるで生き残りレースのように件数が減っていくのですが、ブルグミュラーの件数が安定していて、あまり減少していない点です。(他の作曲家は、けっこう増減幅が大きいです)
これは、「ブルグミュラーやってる子は挫折しにくい」のか、「単に定番という事でとりあえずブルグミュラー弾いてる」のか、分かりません。どっちなんでしょう?
応用2でブルグミュラー25の練習曲は、ステップ課題曲としては、おしまいです。応用3のブルグミュラーはステップ課題曲の「ブルグミュラー18の練習曲」と、自由曲として弾いている「25の練習曲」が、ほぼ半々です。(ステップでは、課題曲と自由曲を2曲弾く)
また、ここで一回だけギロックが首位に立ちます。
●応用4:中級入口の壁
非常に興味深い事に、応用4、すなわち、中級の入口でいったん件数が持ち直します。
実は、ここで大きな転換点があります。教本が、がらっと変わるのです。
このステップから使われ始める教本が、J.S.バッハ(以下単にバッハと言います)のインベンションとツェルニー30番です。教本の表でわかるとおり、バッハがいきなり首位に躍り出ます。ソナチネ勢も合算するとバッハに匹敵するので、依然として強いです。
初級のうちは、子供の(あるいは大人も)興味を引いたりモチベーションを高めようと、あの手この手でいろいろな教本が作られているのに、ここに来たとたん、「バッハ、ソナチネ、ツェルニー」という昔ながらの王道コース(?!)まっしぐらです。
ここで、「中級《入口》の壁」と入口に限定したのは、中級最初の応用4と、次の応用5の落差に特徴があるからです。
応用4から応用5への減少率(およそマイナス40%)は、初級から中級のステップを通じて最大です。という事は、「中級の入口でいったん件数が持ち直した」のは、ここが簡単だから増えていると言うより、ここで止まっている人が多い、という事を示唆しています。
ステップは、S、A、B、C、Dの5段階評価がつけられ、C以上が合格、Dは不合格で再挑戦です。要するに、不合格者、再挑戦者が多いのではないか、と思うのです。
合格率のデータが無いので、これは私の憶測にすぎません。
本当にそうかどうか、個人のデータを追跡しないと断言はできません。しかし、応用5以降は減少率が明らかに緩くなるので、多分、当たらずとも遠からず、ではないかと思います。
「初級後半の壁」が「低いけど分厚い壁」なのに対して、「中級入口の壁」は「薄いけど高くて頑丈な壁」のように思えます。
要するに、「やっと中級に来た、やれやれ」と思っていたら、いきなり「異次元の難しさ(バッハ)」、あるいは、「異次元のつまらなさ(ツェルニー)」に遭遇して、ここで挫折してしまう子が多いのではないでしょうか? 私の個人的な体験ですが、教本の変化は、そのくらい大きなインパクトがあります。
また、ここでついにショパンが登場します。ショパンでも比較的易しい曲は、この段階で手が届くのです。やはりショパンはみんなの憧れなんでしょう。
あと、応用6で2位のベートーヴェンは、ほとんどが「エリーゼのために」です。「エリーゼのために」って、初級曲の代表のように言われる事がありますが、けっこう難しいんですね。
(かつて「中級の壁」シリーズという記事も書きました。ご興味があれば、そちらもご覧ください。
「ピアノ中級の壁(1)」
「ピアノ中級の壁(2)」
「ピアノ中級の壁(3)」
「ピアノ中級の壁(4)」
「ピアノ中級の壁(5)」
「ピアノ中級の壁(6)」
「ピアノ中級の壁(7)」
「ピアノ中級の壁(8)」
)
●中級前半〜中級後半:ここまで来れば・・・
これ以降も件数は漸減していきます。ただし、前回の記事で見たようにフリーの参加率が上がっているので、ステップ→フリーへの移行組の影響で減り具合が大きめに出ている可能性があります。
発展1(中級後半の入口)や展開1(次の上級の途中。ここでついにショパンのエチュード!)で再び件数の持ち直しがあります。ここも、「中級入口の壁」と同じような現象が起こっているのかもしれません。
また、子供が圧倒的だった初級段階に比べて、大人の比率が高まっていきます。これが、「大人の再開者」なのか、「子供が成長して大人になった」のかは、残念ながら分かりません。
しかし、中級前半ぐらいの技術を身につけてしまえば、「趣味で楽しむ」程度であれば、充分ではないかと思います。超絶技巧の曲は別ですが、「普通のクラシックの曲」なら、じっくり取り組めば弾けるようになるはずです。譜読みとか、練習の組み立て方とか、先生に頼らなくてもある程度自分で出来るようになっているはずです。
●上級:そしてショパン、バッハ、ベートーヴェンへと集約していく
圧倒的な強さを誇ったバッハが、発展5でショパンに首位を明け渡します。
しかしながら、発展4以降は、ショパン、バッハ、ベートーヴェンが不動の3強です。
もしかしたらこれは、ステップの課題曲の制約のせいか、と思い、フリー(自由曲)の方も集計してみました。そしたら結果はご覧のとおり。
おそらく、中級程度には達しているであろう「フリー7分」以降は、やっぱりショパン、バッハ、ベートーヴェン。まったく同じです。
ついでに言うと、この3人が音大入試の定番の組合せみたいです。
クラシック系のピアノというのは、結局この3人に集約していくのでしょうか・・・。
●大人も子供もそう変わらないのでは?
このピティナ・ピアノステップのデータは、圧倒的に子供が多いです。しかし、以上述べてきたような「壁」、すなわち、「厳しかった時期」は、私の個人的な経験とほぼ一致します。(例えばこちらの記事をご覧ください。)
前回の記事では、『「大人のピアノ」に、このデータを直接適用する事には慎重になった方がよさそう』と書きましたが、前言撤回! 大人も子供もそう変わらないのでは、という気がしてきました。(^^)
この記事をお読みいただいている方の中には、ピアノを弾いてみたい、あるいは、いま習っているという大人の方もいるかと思いますが、「厳しい時期は、大人も子供、みんないっしょ」という事を、上のグラフから読み取っていただければ幸いです。
また、教本の傾向も、何かのご参考にしていただければ幸いです。
結果は、基本的に前回の記事と同じ傾向を示すのですが、詳しく見ることで、少し変わってきた点もあります。
●ピティナ・ピアノステップとは
繰り返しになりますが、ピティナ・ピアノステップについて簡単に説明します。
「ピティナ・ピアノステップ」というのは、PTNA(ピティナ/一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)の開催しているイベントで、簡単に言うと、
- 導入1から展開3まで段階別になった23ステップの課題曲(以下「ステップ」と略)
- フリーステップといって、3分、5分、7分、10分、12分、15分の自由曲(以下「フリー」と略)
(詳しくは、PTNAのWebサイトを参照してください。開催記録データの出典も同サイトになります。)
このPNTAのサイトに、過去約一年分、2万件超の開催記録(ステップやフリーの区分、曲名など)が載っています。このデータを酔狂流屁理屈で分析(?)したのが、この記事です。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ22,850件)
●結果のグラフと表
以下の通りです。まずはじっくりご覧ください。
グラフが23ステップの課題曲(フリーは除く)の受講者の割合です。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ11,941件、数値は一番受講者の多い「基礎1」を100%とした時の相対比率)
グラフの下に代表的な教本(教則本)と、ステップとの対応を載せてあります。曲番の指定がある場合はその番号、無い場合はマル印、ソナチネに関しては易しいグループと難しいグループに分かれているので「易」「難」と記載してあります。
表のいちばん下の「段階」は、私が独断と偏見で付けた上達のレベルです。
●教本はいろいろ
注意していただきたいのは、ピティナ・ピアノステップでは、さまざまな教本が使用されている、という点です。例えばバイエルですが、基礎段階のステップでの採択率は5〜6パーセント前後です。他にも、バスティン、ギロック、トンプソン、その他もろもろ、20種類前後の本が使用されています。
使用されている教本について、後ほど、個々のステップ別に詳しく見ていきます。
以下の教本の表で使用しているのは、各ステップ毎の「作曲者」ごとのトップ10です。(期間は上に同じ。ステップとフリー合わせて22,850件、41,088曲のデータです。
作曲者を集計しているは、作曲者が教本の通称になるケースが多いからです。あと傾向を分析するのに便利です。
ただし、けっこう表記に揺れがあるので、必ずしも作曲者になっていない場合がかなり含まれます。あくまでも、目安とお考えください。
基本的に、以下のルールで集計しました。
- 原則として作曲者で集計
- 作曲者が曲集名となっている場合は、曲集名を使用する
- 表記に揺れがあるので、可能な範囲で集約する
- 編曲者が以下の場合、または、作曲者不詳の場合は、編曲者を作曲者とみなす
- J.S.バッハ
- バスティン
- トンプソン
●導入1〜導入3:ここは小さな子供さん向け
ここは、基本的に、就学前の小さなお子さんや小学校低学年の生徒さんなどが「ピアノに初めて触る」段階です。
大人の場合は、ここは省略してしまう事も多いでしょう。よって、説明も省略。(^^)
※作曲者の集計がうまくいってません。「なんとか民謡」とか「外国曲」とかになってしまってます。悪しからず。
●基礎1〜基礎4:初級前半は挫折しない
基礎1は「バイエル45番」からになっていますが、ここが、まさに、私が45才でピアノを始めた時の曲です。(正確には、40番をやって、4曲飛ばして、45番からほぼ順番どおりにやりました。)
他の教本の場合でも、まったく未経験の大人が始めるのは、ほぼこのレベルからだと思います。
グラフを見れば分かるように、基礎1〜基礎4は、ほとんど件数が減っていません。
この段階ははっきり言って「簡単」ですし、鍵盤を押して音がでるのが楽しい時期です。大人も子供もたぶん同じでしょう。
また、教本としてはバスティンが多いようです。我らがバイエル(?)も健闘してます。
最後の基礎4で、ブルグミュラーが出てきます。これは、「ブルグミュラー25の練習曲」です。根強い人気があるようです。
●基礎5・応用1〜応用3:初級後半の壁
基礎5から件数が急速に減少し、応用3の段階で半減以下になってしまいます。
バイエルで言うと90番台以降、ブルグミュラー25の練習曲だと5番以降です。
難易度がどんどん高くなっていくのです。
ここは私がかつて「バイエル80番台の壁」と呼んだ箇所です。
「バイエル80番台と90番台だと、10番ずれてるじゃないか!」という突っ込み無しでお願いします。個人の体感の差もありますし、バイエルやっていた子が、80番台は頑張ったけど、90番台には行けなかったのかもしれません。(←苦しい言い訳)
それはともかく、上に書いたように、ピティナ・ピアノステップでは様々な教本が使用されています。「どんな教本を使おうが急減少している」という点から考えて、初級後半の持っている本質的な難しさが出ているのだと思います。
したがって、ここは、「バイエル80番台の壁」じゃなくて、「初級後半の壁」と呼んだ方がよさそうです。
前回の記事にも書いたように、このピティナ・ピアノステップのデータからは時間軸や個人の長期データが分からないので、件数がそのまま継続率になる訳ではありません。しかし、いちステップあたりの所要時間は基礎より応用の方が長い、と推定するのが妥当でしょうから、実際には初級後半を終える事が出来るのは、ざっくり言って、1/3程度ではないか、と思います。
また、この段階の特徴として、「初級後半全体が分厚い壁になっている」という事が言えると思います。これが次の「中級入口の壁」との大きな違いです。
※注:前回の記事では、基礎5を「初級前半」としていましたが、以上述べたように「初級後半」に分類した方がよさそうです。今回の記事では基礎5から応用3を「初級後半」としています。
一方、教本としては、ブルグミュラーが強い。
ただし、クレメンティ、クーラウ、A.スカルラッティなどは、曲集ソナチネの作曲家です。この段階の後半になると、その合計数がブルグミュラーを上回ります。ソナチネもまた、根強い人気を誇るようです。
一つの面白いのは、まるで生き残りレースのように件数が減っていくのですが、ブルグミュラーの件数が安定していて、あまり減少していない点です。(他の作曲家は、けっこう増減幅が大きいです)
これは、「ブルグミュラーやってる子は挫折しにくい」のか、「単に定番という事でとりあえずブルグミュラー弾いてる」のか、分かりません。どっちなんでしょう?
応用2でブルグミュラー25の練習曲は、ステップ課題曲としては、おしまいです。応用3のブルグミュラーはステップ課題曲の「ブルグミュラー18の練習曲」と、自由曲として弾いている「25の練習曲」が、ほぼ半々です。(ステップでは、課題曲と自由曲を2曲弾く)
また、ここで一回だけギロックが首位に立ちます。
●応用4:中級入口の壁
非常に興味深い事に、応用4、すなわち、中級の入口でいったん件数が持ち直します。
実は、ここで大きな転換点があります。教本が、がらっと変わるのです。
このステップから使われ始める教本が、J.S.バッハ(以下単にバッハと言います)のインベンションとツェルニー30番です。教本の表でわかるとおり、バッハがいきなり首位に躍り出ます。ソナチネ勢も合算するとバッハに匹敵するので、依然として強いです。
初級のうちは、子供の(あるいは大人も)興味を引いたりモチベーションを高めようと、あの手この手でいろいろな教本が作られているのに、ここに来たとたん、「バッハ、ソナチネ、ツェルニー」という昔ながらの王道コース(?!)まっしぐらです。
ここで、「中級《入口》の壁」と入口に限定したのは、中級最初の応用4と、次の応用5の落差に特徴があるからです。
応用4から応用5への減少率(およそマイナス40%)は、初級から中級のステップを通じて最大です。という事は、「中級の入口でいったん件数が持ち直した」のは、ここが簡単だから増えていると言うより、ここで止まっている人が多い、という事を示唆しています。
ステップは、S、A、B、C、Dの5段階評価がつけられ、C以上が合格、Dは不合格で再挑戦です。要するに、不合格者、再挑戦者が多いのではないか、と思うのです。
合格率のデータが無いので、これは私の憶測にすぎません。
本当にそうかどうか、個人のデータを追跡しないと断言はできません。しかし、応用5以降は減少率が明らかに緩くなるので、多分、当たらずとも遠からず、ではないかと思います。
「初級後半の壁」が「低いけど分厚い壁」なのに対して、「中級入口の壁」は「薄いけど高くて頑丈な壁」のように思えます。
要するに、「やっと中級に来た、やれやれ」と思っていたら、いきなり「異次元の難しさ(バッハ)」、あるいは、「異次元のつまらなさ(ツェルニー)」に遭遇して、ここで挫折してしまう子が多いのではないでしょうか? 私の個人的な体験ですが、教本の変化は、そのくらい大きなインパクトがあります。
また、ここでついにショパンが登場します。ショパンでも比較的易しい曲は、この段階で手が届くのです。やはりショパンはみんなの憧れなんでしょう。
あと、応用6で2位のベートーヴェンは、ほとんどが「エリーゼのために」です。「エリーゼのために」って、初級曲の代表のように言われる事がありますが、けっこう難しいんですね。
(かつて「中級の壁」シリーズという記事も書きました。ご興味があれば、そちらもご覧ください。
「ピアノ中級の壁(1)」
「ピアノ中級の壁(2)」
「ピアノ中級の壁(3)」
「ピアノ中級の壁(4)」
「ピアノ中級の壁(5)」
「ピアノ中級の壁(6)」
「ピアノ中級の壁(7)」
「ピアノ中級の壁(8)」
)
●中級前半〜中級後半:ここまで来れば・・・
これ以降も件数は漸減していきます。ただし、前回の記事で見たようにフリーの参加率が上がっているので、ステップ→フリーへの移行組の影響で減り具合が大きめに出ている可能性があります。
発展1(中級後半の入口)や展開1(次の上級の途中。ここでついにショパンのエチュード!)で再び件数の持ち直しがあります。ここも、「中級入口の壁」と同じような現象が起こっているのかもしれません。
また、子供が圧倒的だった初級段階に比べて、大人の比率が高まっていきます。これが、「大人の再開者」なのか、「子供が成長して大人になった」のかは、残念ながら分かりません。
しかし、中級前半ぐらいの技術を身につけてしまえば、「趣味で楽しむ」程度であれば、充分ではないかと思います。超絶技巧の曲は別ですが、「普通のクラシックの曲」なら、じっくり取り組めば弾けるようになるはずです。譜読みとか、練習の組み立て方とか、先生に頼らなくてもある程度自分で出来るようになっているはずです。
●上級:そしてショパン、バッハ、ベートーヴェンへと集約していく
圧倒的な強さを誇ったバッハが、発展5でショパンに首位を明け渡します。
しかしながら、発展4以降は、ショパン、バッハ、ベートーヴェンが不動の3強です。
もしかしたらこれは、ステップの課題曲の制約のせいか、と思い、フリー(自由曲)の方も集計してみました。そしたら結果はご覧のとおり。
おそらく、中級程度には達しているであろう「フリー7分」以降は、やっぱりショパン、バッハ、ベートーヴェン。まったく同じです。
ついでに言うと、この3人が音大入試の定番の組合せみたいです。
クラシック系のピアノというのは、結局この3人に集約していくのでしょうか・・・。
●大人も子供もそう変わらないのでは?
このピティナ・ピアノステップのデータは、圧倒的に子供が多いです。しかし、以上述べてきたような「壁」、すなわち、「厳しかった時期」は、私の個人的な経験とほぼ一致します。(例えばこちらの記事をご覧ください。)
前回の記事では、『「大人のピアノ」に、このデータを直接適用する事には慎重になった方がよさそう』と書きましたが、前言撤回! 大人も子供もそう変わらないのでは、という気がしてきました。(^^)
この記事をお読みいただいている方の中には、ピアノを弾いてみたい、あるいは、いま習っているという大人の方もいるかと思いますが、「厳しい時期は、大人も子供、みんないっしょ」という事を、上のグラフから読み取っていただければ幸いです。
また、教本の傾向も、何かのご参考にしていただければ幸いです。
2015.01.22 Thursday
ピアノ継続率(挫折率)の客観データ
●ピティナ・ピアノステップの開催データ
前々から、ピアノ継続率(挫折率)の客観データが見てみたい、と思っていました。しかし、なかなかそういうデータはありません。
あるとき、PTNA(ピティナ/一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)のWebサイトを見ていたら、PTNAがやっているピティナ・ピアノステップの開催記録を見つけました。
「ピティナ・ピアノステップ」というのは、簡単に言うと、
(詳しくは、PTNAのWebサイトを参照してください。開催記録データの出典も同サイトになります。)
このPNTAのサイトに、過去約一年分、2万件超の開催記録(ステップやフリーの区分、曲名など)が載っています。これを根性で数えてみました。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ22,850件)
●開催データから見る段階別人数
下の表とグラフがその結果です。
件数としてステップとフリーがほぼ同じくらいなので、無理を承知で二つのデータを合体させてあります。(そうしないと、全体像が見えないので)
表とグラフの読み方の説明です。
なお、J、Gは基本的に子供と大人の区別です。PNTAのサイトによると次のような区分けになっています。まあ、中高生が微妙ですが、元データに中高生の区別が無いので、どうしようもありません。
●注意点・・・数字は目安
(1) データの信頼度はあまりありません
上達の段階と、ステップやフリーの区分の対応は、私の独断と偏見でつけたものです。合理的な根拠は乏しいです。
ピアノを習っている人がすべてPTNAのステップに来るはずもありません。あくまでも、限られた範囲のデータです。
また、私が「数え間違い」をしている可能性もあります。
(2) この表の数値は、「継続率(挫折率)」にはなっていません
記事のタイトルと矛盾しますが、表やグラフの中の何パーセントというのは、継続率にはなり得ません。
これは、次のようにして考えると、すぐ分かります。
例えば、あるピアノ教室のクラスの人数が次のようになっていたとします。
初級 100人
中級 100人
上級 100人
これで、「おお素晴らしい! 継続率100%ではないか!」と言っているようでは、いけません。上級になればなるほど、「時間がかかる」はずです。例えば、クラスを卒業するのに必要な平均的な期間が次のようになっているとします。
初級 1年
中級 2年
上級 5年
という事は、「1学年あたりの人数」を考えると、次のようになります。
初級 100人
中級 50人
上級 20人
はい。しっかり、挫折してます(笑)。
「じゃあ、この数字は何だ」と言うと、あくまでも、ピティナ・ピアノステップに来た人の「区分の構成割合」です。
(3) 子供のデータが圧倒的に多い
ピティナ・ピアノステップの受講者は、圧倒的に子供が多いです。上級になると大人が増えてきますが、私の興味のある「大人のピアノ」に、このデータを直接適用する事には慎重になった方がよさそうです。
(4) そもそも継続したから上達するとは限らない
あたり前の事ですが、継続したから上達するとは限らないです(^^)。
今回の記事は(も)、もともと制約と曖昧さの多いデータを使った「屁理屈」なので、「継続=上達」と短絡的に決めつけないでくださいね。(まあ、それなりに相関関係はあると思いますが)
●それでも、データから読み取れることはある
以上述べたように、このデータは信頼性に乏しく、かつ、限定的なものです。また、特定の個人の上達を継続的に追跡したものでもありません。
しかしそれでも、データから読み取れることはあります。
以下、かなり危うい「推測」、あるいは、「作業仮説」に過ぎませんが、いくつか書いてみましょう。
(1) 初級後半に壁がある
初級前半から後半にかけて件数が半減しています。これはおそらく、昔、私が「バイエル80番台の壁」と呼んだものだと思います。代表的な教本だと、バイエル後半からブルクミュラー25の練習曲に入るあたりで難易度が急上昇します。これについていけない者が半数程度いる、という事だと思います。
(2) 中級前半にも壁がある
教本で言うと、インベンション、ツェルニー30番に入るあたりです。ここで再び件数が半減します。子供さんの場合は塾や中学受験や部活などで忙しくてピアノとの両立が難しくなる時期です。
これ以降も、子供の件数は減少し続けてしまいます。
(3) 大人の場合は、中級までたどり着ければ継続できる可能性が高い
ところが面白い事に、大人(表・グラフ中の「フリーG」の部分)は初級後半以降、むしろ増えています。
さきほど書いたように、このパーセンテージはそのまま「継続率」とする事はできませんが、中級までたどり着ければ、そのまま継続できる可能性がかなり高い・・・のかもしれません。
あるいは、子供からやってきた方が大人になったのでステップからフリーに鞍替えした、または、子供の時に中級以上まで進んでいた方が大人になってふたたび再開した、というケースが、けっこう含まれていると思います。
(4) 中級後半から上級に行けるのは1割いるかいないか
「真の継続率」は、たぶん、この表・グラフの数字より下がると思います。最終的に、ピアノがある程度自由に弾けるレベル、すなわち、中級後半から上級まで上達するのは、最初に始めた人の1割いるかいないか・・・だと思います。
厳しいですが、これが現実です。(多分)
--
これ以上の事は、推察するにしても、なかなか難しいです。(2015/02/01追記。思い直して、もう少し、屁理屈を展開してみる事にしました。次の記事です。)
PTNAや大手音楽教室は、こういった「継続率」を評価するデータや、継続率を改善するためのノウハウを持っていると思います。そういったデータや分析結果を公開して頂けると、私のような「大人のピアノ」の学習者は大変助かるのですが・・・無理でしょうかねぇ。(企業秘密かも・・・笑)
今回は、このあたりで。
P.S.
この記事をまとめた後で気づいたのですが、PTNAのサイトにも以下のようなページがありました。ご興味のある方は、探してみてください。
PTNAのホーム > ピアノコンクール > ニュース(2014/10/3付)
「コンペデータから見るピアノ継続のポイント」
前々から、ピアノ継続率(挫折率)の客観データが見てみたい、と思っていました。しかし、なかなかそういうデータはありません。
あるとき、PTNA(ピティナ/一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)のWebサイトを見ていたら、PTNAがやっているピティナ・ピアノステップの開催記録を見つけました。
「ピティナ・ピアノステップ」というのは、簡単に言うと、
- 導入1から展開3まで段階別になった23ステップの課題曲(以下「ステップ」と略)
- フリーステップといって、3分、5分、7分、10分、12分、15分の自由曲(以下「フリー」と略)
(詳しくは、PTNAのWebサイトを参照してください。開催記録データの出典も同サイトになります。)
このPNTAのサイトに、過去約一年分、2万件超の開催記録(ステップやフリーの区分、曲名など)が載っています。これを根性で数えてみました。(2014/2/1〜2015/1/12のデータ22,850件)
●開催データから見る段階別人数
下の表とグラフがその結果です。
件数としてステップとフリーがほぼ同じくらいなので、無理を承知で二つのデータを合体させてあります。(そうしないと、全体像が見えないので)
表とグラフの読み方の説明です。
段階 | 私が独断と偏見で付けた上達の段階 |
全音分類 | 全音の楽譜の最後に載っている難易度表 |
PTNAステップ | 私が「えぃ!やぁ!」で決めた上達の段階とステップの対応。なお数字は、一番件数の多い「初級前半」のステップとフリーの合計を100%とした時の相対比率です。 |
PTNAフリー | こちらも、私が「シュワッチ! アタタタタ!」で決めた上達の段階と演奏時間の対応。正直言って、こちらは超イイカゲンです。例えばフリー3分だと、いかにも「バイエル程度」で弾きそうな曲も多いのですが、かなり難しそうな曲も含まれています。フリー7分以上は基本的には中級から上級の曲になります。本当は一曲一曲レベルを判定すべきなのですが、まあ、あくまでも目安という事でドンブリ勘定です。 |
比率 | ステップとフリーを合計した件数の相対比率です。一番件数の多い「初級前半」を100%としてあります。 |
代表的教本 | 全音の難易度表やピティナ・ピアノステップの説明から、適当に抜粋しました。 |
なお、J、Gは基本的に子供と大人の区別です。PNTAのサイトによると次のような区分けになっています。まあ、中高生が微妙ですが、元データに中高生の区別が無いので、どうしようもありません。
- J (ジュニアステージ) 就学前の幼児、小学生、中学生、高校生など
- G (グランミューズステージ) 大学生、社会人、ピアノを始めたばかりの中学生、高校生など
●注意点・・・数字は目安
(1) データの信頼度はあまりありません
上達の段階と、ステップやフリーの区分の対応は、私の独断と偏見でつけたものです。合理的な根拠は乏しいです。
ピアノを習っている人がすべてPTNAのステップに来るはずもありません。あくまでも、限られた範囲のデータです。
また、私が「数え間違い」をしている可能性もあります。
(2) この表の数値は、「継続率(挫折率)」にはなっていません
記事のタイトルと矛盾しますが、表やグラフの中の何パーセントというのは、継続率にはなり得ません。
これは、次のようにして考えると、すぐ分かります。
例えば、あるピアノ教室のクラスの人数が次のようになっていたとします。
初級 100人
中級 100人
上級 100人
これで、「おお素晴らしい! 継続率100%ではないか!」と言っているようでは、いけません。上級になればなるほど、「時間がかかる」はずです。例えば、クラスを卒業するのに必要な平均的な期間が次のようになっているとします。
初級 1年
中級 2年
上級 5年
という事は、「1学年あたりの人数」を考えると、次のようになります。
初級 100人
中級 50人
上級 20人
はい。しっかり、挫折してます(笑)。
「じゃあ、この数字は何だ」と言うと、あくまでも、ピティナ・ピアノステップに来た人の「区分の構成割合」です。
(3) 子供のデータが圧倒的に多い
ピティナ・ピアノステップの受講者は、圧倒的に子供が多いです。上級になると大人が増えてきますが、私の興味のある「大人のピアノ」に、このデータを直接適用する事には慎重になった方がよさそうです。
(4) そもそも継続したから上達するとは限らない
あたり前の事ですが、継続したから上達するとは限らないです(^^)。
今回の記事は(も)、もともと制約と曖昧さの多いデータを使った「屁理屈」なので、「継続=上達」と短絡的に決めつけないでくださいね。(まあ、それなりに相関関係はあると思いますが)
●それでも、データから読み取れることはある
以上述べたように、このデータは信頼性に乏しく、かつ、限定的なものです。また、特定の個人の上達を継続的に追跡したものでもありません。
しかしそれでも、データから読み取れることはあります。
以下、かなり危うい「推測」、あるいは、「作業仮説」に過ぎませんが、いくつか書いてみましょう。
(1) 初級後半に壁がある
初級前半から後半にかけて件数が半減しています。これはおそらく、昔、私が「バイエル80番台の壁」と呼んだものだと思います。代表的な教本だと、バイエル後半からブルクミュラー25の練習曲に入るあたりで難易度が急上昇します。これについていけない者が半数程度いる、という事だと思います。
(2) 中級前半にも壁がある
教本で言うと、インベンション、ツェルニー30番に入るあたりです。ここで再び件数が半減します。子供さんの場合は塾や中学受験や部活などで忙しくてピアノとの両立が難しくなる時期です。
これ以降も、子供の件数は減少し続けてしまいます。
(3) 大人の場合は、中級までたどり着ければ継続できる可能性が高い
ところが面白い事に、大人(表・グラフ中の「フリーG」の部分)は初級後半以降、むしろ増えています。
さきほど書いたように、このパーセンテージはそのまま「継続率」とする事はできませんが、中級までたどり着ければ、そのまま継続できる可能性がかなり高い・・・のかもしれません。
あるいは、子供からやってきた方が大人になったのでステップからフリーに鞍替えした、または、子供の時に中級以上まで進んでいた方が大人になってふたたび再開した、というケースが、けっこう含まれていると思います。
(4) 中級後半から上級に行けるのは1割いるかいないか
「真の継続率」は、たぶん、この表・グラフの数字より下がると思います。最終的に、ピアノがある程度自由に弾けるレベル、すなわち、中級後半から上級まで上達するのは、最初に始めた人の1割いるかいないか・・・だと思います。
厳しいですが、これが現実です。(多分)
--
これ以上の事は、推察するにしても、なかなか難しいです。(2015/02/01追記。思い直して、もう少し、屁理屈を展開してみる事にしました。次の記事です。)
PTNAや大手音楽教室は、こういった「継続率」を評価するデータや、継続率を改善するためのノウハウを持っていると思います。そういったデータや分析結果を公開して頂けると、私のような「大人のピアノ」の学習者は大変助かるのですが・・・無理でしょうかねぇ。(企業秘密かも・・・笑)
今回は、このあたりで。
P.S.
この記事をまとめた後で気づいたのですが、PTNAのサイトにも以下のようなページがありました。ご興味のある方は、探してみてください。
PTNAのホーム > ピアノコンクール > ニュース(2014/10/3付)
「コンペデータから見るピアノ継続のポイント」
2013.12.28 Saturday
大人のピアノ10年の記録/ピアノ練習における学習曲線
早いもので、年が明けて2014年になると、ピアノを始めて10年になります。
よくぞまあ、続いたものです。相変わらず、下手ですが・・・。
ピアノ10周年記念に、ちょっとしたグラフを作ってみました。(クリックで拡大)
横軸が「ピアノを始めてからの年数」、縦軸が「練習曲のマルの累積個数」です。
一部、「マルもらった日」をちゃんとメモしておかなかったので、適当に推定・補間した部分も含みますが、まあ、大勢に影響はありません。
それで、作った当人も意外でしたが、これがまた見事な「学習曲線」を描きます。
「何かに習熟する際には伸びる時期とスランプ(プラトー)を繰り返す」という事は、日常よく経験しますが、それを実際にデータに基づいて可視化してみると、けっこうインパクトがあります。(「学習曲線」を検索)
「マルの累積個数」と「実力」は、必ずしもストレートに比例するものではありませんが、成長の度合いを客観的に評価する一つの指標にはなりうるでしょう。
また、私の場合、「バイエル」→「ブルクミュラー」→「インベンション」→「シンフォニア」、という比較的オーソドックスな順で練習を進めてきたので、一般的な進度との比較もやり易いと思います。
それぞれの時期が分かりやすいように、ちょっとグラフに加筆してみました。当時の事を思い出して、けっこう感慨深いものがあります。
皆さまの何かのご参考になれば幸いです。
よくぞまあ、続いたものです。相変わらず、下手ですが・・・。
ピアノ10周年記念に、ちょっとしたグラフを作ってみました。(クリックで拡大)
横軸が「ピアノを始めてからの年数」、縦軸が「練習曲のマルの累積個数」です。
一部、「マルもらった日」をちゃんとメモしておかなかったので、適当に推定・補間した部分も含みますが、まあ、大勢に影響はありません。
それで、作った当人も意外でしたが、これがまた見事な「学習曲線」を描きます。
「何かに習熟する際には伸びる時期とスランプ(プラトー)を繰り返す」という事は、日常よく経験しますが、それを実際にデータに基づいて可視化してみると、けっこうインパクトがあります。(「学習曲線」を検索)
「マルの累積個数」と「実力」は、必ずしもストレートに比例するものではありませんが、成長の度合いを客観的に評価する一つの指標にはなりうるでしょう。
また、私の場合、「バイエル」→「ブルクミュラー」→「インベンション」→「シンフォニア」、という比較的オーソドックスな順で練習を進めてきたので、一般的な進度との比較もやり易いと思います。
それぞれの時期が分かりやすいように、ちょっとグラフに加筆してみました。当時の事を思い出して、けっこう感慨深いものがあります。
皆さまの何かのご参考になれば幸いです。
2012.04.21 Saturday
大人の初心者ための知見(3)
続きです。
大人の初心者ための知見(1)
大人の初心者ための知見(2)
●今回は、読譜力とブラインドタッチ/鍵盤感覚について
これまでの二回の記事で、次の二冊の本の内容から、主に読譜力についてどんな知見が得られるのか、考えてみました。 今回は、その続きです。 私が考えたことも含めて、書いてみたいと思います。
「ピアノがうまくなるにはワケがある: 努力よりコツ!」 (角聖子 著)
略称「ピアうま」
「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」 (古屋晋一 著)
略称「ピアノ脳」
実は、ブラインドタッチ/鍵盤感覚についての記事が、「ピアノ脳」の方にはあまり書かれていません。
ちなみに、ブラインドタッチとは、「鍵盤を見ないで弾く事」です。 当然、「鍵盤感覚」が必要です。
一方、「ピアうま」の方には、ブラインドタッチの重要性が大きく書かれています。(例えば、p.53-57)
あたり前の話ですが、「鍵盤を見ないと弾けない」状態では、楽譜を見ながら弾けません。 ある程度はブラインドタッチができる事が、読譜の前提となります。
ただし、絶対に鍵盤を見てはいけないのか、というと、「ピアうま」のp.54に「あくまでも、視線が指先にくぎ付けになる状態から自由になること」だと書いてあります。
あるいは、私の師匠のA先生曰く「基本的に楽譜を見ていて、鍵盤が何となく視界に入っている状態が理想」なんだそうです。
二人の先生は、基本的に同じ事を言っているのだと思います。
実は、ここが『大いなるクセ者』なのです。
何が言いたいかというと、ブラインドタッチでも、「チラ見」はOKという事です。 でも、「チラ見」のやり方が難しいのです。
●比較的容易にブラインドタッチができる範囲
手や指の左右の移動が無い「ナチュラルポジション」の範囲では、基本的に鍵盤を見る必要はありません。
また、指の幅を変える場合でも、3度(隣の隣)の鍵盤への移動は、比較的簡単です。
この二つは、例えばハノンの練習で身に付きます。 (ハノンの1番〜20番は、ハ長調(白鍵のみ)であれば、目をつぶっても弾けるようになります)
難関の指くぐりですが、これはスケール(音階)の練習で身に付きます。
オクターブの感覚も、いろいろな曲に出てくるので、だんだんと親指と小指(or薬指)がオクターブの幅をつかめるようになっていきます。
ここまでは、ほぼ、ブラインドタッチの状態に持っていけます。
問題は、この先です。
●「チラ見」の弊害が出てくる段階
上で述べたように、2度(隣の鍵盤)、3度(隣の隣)、8度(オクターブ)といった基本的なポジションは、比較的容易にブラインドタッチが習得できます。
ところが、この三つ以外が難しいのです。
特に、指を大きく広げたり跳躍したりする場合は、初心者の場合は、見ないと弾けません。
しかし、楽譜から完全に視線を外してはいけません。 その時点で、楽譜を読む作業が中断してしまいます。 最悪、どこを弾いていたか、分からなくなってしまいます。
そこで、鍵盤を「チラ見」するのですが、たとえ「チラ見」であっても、かなり有害です。
そして、【ここが重要】「チラ見の弊害が顕在化するのは、ある程度、読譜力が付いてきた段階」なのです。
●なぜ「チラ見」が有害なのか
前二回の記事でも書きましたが、読譜のためには、先読みが重要です。 先読みした音符が脳の中のパイプラインで順次処理されていって、最終的に指や手の運動に変換されます。
この時、鍵盤をチラ見をしてしまうと、パイプラインの動きが乱される・・・最悪、パイプラインが止まってしまいます。すると、拍感覚が壊れてしまって、曲が流れなくなってしまいます。
しがって、チラ見をするにしても最小限に、主たる注視点は楽譜上において、鍵盤の方は出来るだけ「周辺視野」で見るようにしないといけない、と思います。
●最初は「チラ見」の弊害が見えない
ところが、初心者の場合、そもそもパイプラインが出来ていませんから、チラ見しようがしまいが、曲になっていません。一音一音、順番に弾いているだけです。 この時点では、チラ見の弊害はほぼ認識されません。
そして、ある程度は楽譜が読めるようになり、超スローペースで1、2音の先読みができる状態になっても、まだ、チラ見の弊害は見えません。 脳の処理時間に余裕があるからです。
むしろ、チラチラ見る事で始めて曲が弾けるので、チラ見必須です。 「ピアうま」には「鍵盤を指先で探れ」と書いてありますが、これをやると、曲(歌、メロディーの流れ)が止まってしまいます。
たとえゆっくりでも拍を止めずに曲を弾く事と、鍵盤感覚を訓練することが相反関係になっていて、ついつい前者を優先してしまいます。
●インテンポ読譜に近づくと「チラ見」の弊害が一気に顕在化する
ところが、先読みの範囲が広くなり、ある程度インテンポ(本来の演奏速度)に近いスピードを出せるようになってくると、チラ見の弊害が一気に顕在化します。
要するに、「へなちょこパイプライン」が出来かかっている状態で「チラ見」をすると、パイプラインが即故障。演奏停止になってしまうのです。
なんたって、「へなちょこ」なんで、僅かな乱れで「なに弾いてんだかワケわかんない」状態になってしまうのです。
かといって、まだ鍵盤感覚が不完全なので、チラ見しないと音が取れません。 ものすごくイライラします。
結果として、どうしてもスピードが上がらない、あるいは、スピードを上げるとミス連発、という状態になります。
そこで、ブラインドタッチ/鍵盤感覚の重要性を再認識するのですが、「なるべく鍵盤を見ないように意識しながら数をこなす」以外の練習法が思いつけません。
楽譜が読めない大人の初心者にとって、「いわゆる初級レベルの楽譜をインテンポで弾ける」という事が、遠大な「夢」だと思います。(初見でサラサラという贅沢は言いません、多少はゆっくりでも構いません。でも、楽譜を見てそこそこ弾けるようになるのが、大いなる憧れなのです。)
そこに向けての最後の壁です。
●初心者状態から「ブラインドタッチ」で練習する事は有用か?
これは、有用です。断言できます。
角先生の持論でもあります。
ただ、読譜力に関して言えば、問題はむしろ基本的なポジション(2度、3度、オクターブなど)のブラインドタッチよりも、応用的なポジションのブラインドタッチの習得です。
あいるは、効果的な「チラ見」の習得、と言い換えてもよいかもしれません。
「ピアうま」には、盲目のピアニスト辻井伸行さんの話が出てきますが、これは例外的な才能の持ち主の場合です。
凡人ピアニストにとっては、やはりある程度は鍵盤を見る事が必要だと思います。 だから、「いかに鍵盤を見るか」という事が重要だと思います。
●知見(というか、お願い) インテンポ読譜ためには「良きチラ見」を習得せよ
ピアノ指導者の皆様。 ぜひ、以下の練習法(精神論・理想論ではなく現実的な時間と労力で実行可能な方法)を教えてください。
(1) 読譜を乱さない「チラ見」の方法
(2) レベルに応じて「チラ見」をだんだんと減らす方法
話が中途半端で申し訳ありませんが、この事が私にとっての現在の最大の課題なのです。
大人の初心者ための知見(1)
大人の初心者ための知見(2)
●今回は、読譜力とブラインドタッチ/鍵盤感覚について
これまでの二回の記事で、次の二冊の本の内容から、主に読譜力についてどんな知見が得られるのか、考えてみました。 今回は、その続きです。 私が考えたことも含めて、書いてみたいと思います。
「ピアノがうまくなるにはワケがある: 努力よりコツ!」 (角聖子 著)
略称「ピアうま」
「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」 (古屋晋一 著)
略称「ピアノ脳」
実は、ブラインドタッチ/鍵盤感覚についての記事が、「ピアノ脳」の方にはあまり書かれていません。
ちなみに、ブラインドタッチとは、「鍵盤を見ないで弾く事」です。 当然、「鍵盤感覚」が必要です。
一方、「ピアうま」の方には、ブラインドタッチの重要性が大きく書かれています。(例えば、p.53-57)
あたり前の話ですが、「鍵盤を見ないと弾けない」状態では、楽譜を見ながら弾けません。 ある程度はブラインドタッチができる事が、読譜の前提となります。
ただし、絶対に鍵盤を見てはいけないのか、というと、「ピアうま」のp.54に「あくまでも、視線が指先にくぎ付けになる状態から自由になること」だと書いてあります。
あるいは、私の師匠のA先生曰く「基本的に楽譜を見ていて、鍵盤が何となく視界に入っている状態が理想」なんだそうです。
二人の先生は、基本的に同じ事を言っているのだと思います。
実は、ここが『大いなるクセ者』なのです。
何が言いたいかというと、ブラインドタッチでも、「チラ見」はOKという事です。 でも、「チラ見」のやり方が難しいのです。
●比較的容易にブラインドタッチができる範囲
手や指の左右の移動が無い「ナチュラルポジション」の範囲では、基本的に鍵盤を見る必要はありません。
また、指の幅を変える場合でも、3度(隣の隣)の鍵盤への移動は、比較的簡単です。
この二つは、例えばハノンの練習で身に付きます。 (ハノンの1番〜20番は、ハ長調(白鍵のみ)であれば、目をつぶっても弾けるようになります)
難関の指くぐりですが、これはスケール(音階)の練習で身に付きます。
オクターブの感覚も、いろいろな曲に出てくるので、だんだんと親指と小指(or薬指)がオクターブの幅をつかめるようになっていきます。
ここまでは、ほぼ、ブラインドタッチの状態に持っていけます。
問題は、この先です。
●「チラ見」の弊害が出てくる段階
上で述べたように、2度(隣の鍵盤)、3度(隣の隣)、8度(オクターブ)といった基本的なポジションは、比較的容易にブラインドタッチが習得できます。
ところが、この三つ以外が難しいのです。
特に、指を大きく広げたり跳躍したりする場合は、初心者の場合は、見ないと弾けません。
しかし、楽譜から完全に視線を外してはいけません。 その時点で、楽譜を読む作業が中断してしまいます。 最悪、どこを弾いていたか、分からなくなってしまいます。
そこで、鍵盤を「チラ見」するのですが、たとえ「チラ見」であっても、かなり有害です。
そして、【ここが重要】「チラ見の弊害が顕在化するのは、ある程度、読譜力が付いてきた段階」なのです。
●なぜ「チラ見」が有害なのか
前二回の記事でも書きましたが、読譜のためには、先読みが重要です。 先読みした音符が脳の中のパイプラインで順次処理されていって、最終的に指や手の運動に変換されます。
この時、鍵盤をチラ見をしてしまうと、パイプラインの動きが乱される・・・最悪、パイプラインが止まってしまいます。すると、拍感覚が壊れてしまって、曲が流れなくなってしまいます。
しがって、チラ見をするにしても最小限に、主たる注視点は楽譜上において、鍵盤の方は出来るだけ「周辺視野」で見るようにしないといけない、と思います。
●最初は「チラ見」の弊害が見えない
ところが、初心者の場合、そもそもパイプラインが出来ていませんから、チラ見しようがしまいが、曲になっていません。一音一音、順番に弾いているだけです。 この時点では、チラ見の弊害はほぼ認識されません。
そして、ある程度は楽譜が読めるようになり、超スローペースで1、2音の先読みができる状態になっても、まだ、チラ見の弊害は見えません。 脳の処理時間に余裕があるからです。
むしろ、チラチラ見る事で始めて曲が弾けるので、チラ見必須です。 「ピアうま」には「鍵盤を指先で探れ」と書いてありますが、これをやると、曲(歌、メロディーの流れ)が止まってしまいます。
たとえゆっくりでも拍を止めずに曲を弾く事と、鍵盤感覚を訓練することが相反関係になっていて、ついつい前者を優先してしまいます。
●インテンポ読譜に近づくと「チラ見」の弊害が一気に顕在化する
ところが、先読みの範囲が広くなり、ある程度インテンポ(本来の演奏速度)に近いスピードを出せるようになってくると、チラ見の弊害が一気に顕在化します。
要するに、「へなちょこパイプライン」が出来かかっている状態で「チラ見」をすると、パイプラインが即故障。演奏停止になってしまうのです。
なんたって、「へなちょこ」なんで、僅かな乱れで「なに弾いてんだかワケわかんない」状態になってしまうのです。
かといって、まだ鍵盤感覚が不完全なので、チラ見しないと音が取れません。 ものすごくイライラします。
結果として、どうしてもスピードが上がらない、あるいは、スピードを上げるとミス連発、という状態になります。
そこで、ブラインドタッチ/鍵盤感覚の重要性を再認識するのですが、「なるべく鍵盤を見ないように意識しながら数をこなす」以外の練習法が思いつけません。
楽譜が読めない大人の初心者にとって、「いわゆる初級レベルの楽譜をインテンポで弾ける」という事が、遠大な「夢」だと思います。(初見でサラサラという贅沢は言いません、多少はゆっくりでも構いません。でも、楽譜を見てそこそこ弾けるようになるのが、大いなる憧れなのです。)
そこに向けての最後の壁です。
●初心者状態から「ブラインドタッチ」で練習する事は有用か?
これは、有用です。断言できます。
角先生の持論でもあります。
ただ、読譜力に関して言えば、問題はむしろ基本的なポジション(2度、3度、オクターブなど)のブラインドタッチよりも、応用的なポジションのブラインドタッチの習得です。
あいるは、効果的な「チラ見」の習得、と言い換えてもよいかもしれません。
「ピアうま」には、盲目のピアニスト辻井伸行さんの話が出てきますが、これは例外的な才能の持ち主の場合です。
凡人ピアニストにとっては、やはりある程度は鍵盤を見る事が必要だと思います。 だから、「いかに鍵盤を見るか」という事が重要だと思います。
●知見(というか、お願い) インテンポ読譜ためには「良きチラ見」を習得せよ
ピアノ指導者の皆様。 ぜひ、以下の練習法(精神論・理想論ではなく現実的な時間と労力で実行可能な方法)を教えてください。
(1) 読譜を乱さない「チラ見」の方法
(2) レベルに応じて「チラ見」をだんだんと減らす方法
話が中途半端で申し訳ありませんが、この事が私にとっての現在の最大の課題なのです。
2012.04.04 Wednesday
大人の初心者ための知見(2)
前回の続きです。
・大人の初心者ための知見(1)
●読譜力の構成要素(再掲)
「ピアノ脳」p.105-112に、初見演奏の能力差の要因が六つ挙げられています。
(1) 15歳までの初見演奏の練習量
(2) 左手を右手と同じくらい器用に使えるか
(3) 楽譜上の視覚情報を素早く処理できるか
(4) 楽譜を見て音を正確にイメージできるか
(5) ワーキングメモリの大きさ(注:ワーキングメモリ=作業記憶。作動記憶。一時的な記憶)
(6) 適切な指使いを素早く決められるか
前回は、(3)と(5)に着目しました。
そして、「(3)と(5)は、訓練によって大きくは変化しないという報告がある」という事から、素質として「読譜力が付きやすい人」はどういう人なのか、考えてみました。
今回は、その続きです。
●ワーキングメモリの「大きさ」は変化しないが「使い方」は変化する
「ピアノ脳」に、ワーキングメモリが大きくなくても、音符を効率良く覚える方法」がある、と書いてあります。それは、音階(スケール)、アルペジオ(分散和音)、和音をまとまりとして覚える事です。
「ピアうま」の方にも、「簡単で同じような譜面」をたくさん見る事で、「音を一つ一つ認識していくのではなく、ある種の型やパターンとして認識することが可能になる」と書いてあります。
両者はまったく同じことを言っています。
もうちょっと具体的な例を出してみましょう。
●ブルクミュラー25の練習曲1番
初級後半の定番教本、ブルクミュラー25の練習曲1番のLa candeur(邦名だと「素直な心」、「正直」)の冒頭部分です。
これを、「譜読み」(可能なら「初見演奏」)する事を考えてみます。
私も最初は「初心者」状態でしたが、いまは「ある程度読める」状態に少し近づいてきたかな、というところです。
この両者の違いはなんでしょう?
●初心者のワーキングメモリの使い方
ワーキングメモリの「大きさ」は同じでも、一つのワーキングメモリに対応する情報の塊(チャンクと言います)の大きさが違うのです。
初心者は、いち音いち音、音程と指使いを覚えたり考えたりするしかありません。 あっと言う間に、ワーキングメモリを使い切ります。 おそらく、この単純な曲でも、とりあえず1小節覚えるので精一杯でしょう。
だから、いち小節いち小節、ひたすら繰り返して体に叩き込むような方法しかとれません。 初見演奏なんて、夢のまた夢です。
技術レベルによる差は大きいと思いますが、最初の1小節に必要なチャンク(情報の塊)を数えてみましょう。(厳密な話ではなくて、「まあ、こんな感じ」という程度ですが)
右手と左手のそれぞれの開始位置で2個。
右手のソ→ミ→レ→ド(5→3→2→1)の指使いを覚えておくので1個。
右手を等間隔に順番に動かす、ということで1個。
右手を反復する、ということに1個。
左手のド−ミ−ソ(5-3-1)の位置に1個。
左手を押さえ続けるということで1個。
ここまでで計7個です。
有名なミラーの「マジカルナンバー7±2」によれば、「チャンク」は約7個であるとされています。 また、「おぼえる内容」によってこの数は増減します。 (複雑な内容ならチャンクは減る。しかもこの数字は若者の場合。子供や高齢者ではもっと少ないそうです。)
というわけで、1小節を「単純に弾く」だけで、ワーキングメモリは満杯です。
ここに、「優しい感じで」とか、「音を滑らかにつなげて」とか、「右手のメロディーを歌って」とか言われても、それは、脳の処理能力上、無理です。
ピアノの指導者が、(たぶん熱意・親切心から)上のようなことを初心者に要求するのは、実は、不可能を要求しているのです。
●ある程度読める人のワーキングメモリの使い方
ところが、楽譜が読めるようになってくると、非標準的な箇所以外は、もう、いち音いち音は覚えてません。音の進行と指使いのライブラリが長期記憶の中に既にあって、そこを指し示すポインタだけ覚えておけばいいのです。
例えば、最初の1小節に出てくる右手と左手の和音と音の進行は、「よく出てくるワンパターン」なので、これを覚えるためのチャンクは、2個ぐらい、熟達者ならたぶん1個で大丈夫です。 音型を見てCのワンパターン・アルペジオと認識しただけで、あとは特に意識することなく指使いまで自動的に処理されます。
言わば、記憶の省エネ化です。
上の能力差の要因の「(6) 適切な指使いを素早く決められるか」は、まさにこの事を言っているのだと思います。
●音の進行と指使いのライブラリ
だから、読譜力を鍛えるためには、この「音の進行と指使いのライブラリ」を鍛えることが必須です。
単に、「パッと見て音が分かる」だけでは、ダメです。
恐らく、ここを多くの人が誤解しています。 「譜面上の音が分からないから楽譜が読めない」のではなくて、「音の進行と指使いのライブラリが貧弱だから楽譜が読めない」のです。
「ピアうま」にも「ピアノ脳」にも、この「音の進行と指使いのライブラリ」に関して、ほぼ同様の事が書いてあります。
そして、音の進行と指使いのライブラリを鍛えるためには、いろいろなパターンの単純な譜面を繰り返し練習する事です。(少数の複雑な譜面をいくら読んでも、「音の進行と指使いのライブラリ」は鍛えられない。)
●知見「読譜力を鍛えるためには、頭の中に音の進行と指使いのライブラリを作ること」
これは、大人でも、≪適切な≫努力と練習次第で、できます。
しつこく、続きます(笑)。
・大人の初心者ための知見(1)
●読譜力の構成要素(再掲)
「ピアノ脳」p.105-112に、初見演奏の能力差の要因が六つ挙げられています。
(1) 15歳までの初見演奏の練習量
(2) 左手を右手と同じくらい器用に使えるか
(3) 楽譜上の視覚情報を素早く処理できるか
(4) 楽譜を見て音を正確にイメージできるか
(5) ワーキングメモリの大きさ(注:ワーキングメモリ=作業記憶。作動記憶。一時的な記憶)
(6) 適切な指使いを素早く決められるか
前回は、(3)と(5)に着目しました。
そして、「(3)と(5)は、訓練によって大きくは変化しないという報告がある」という事から、素質として「読譜力が付きやすい人」はどういう人なのか、考えてみました。
今回は、その続きです。
●ワーキングメモリの「大きさ」は変化しないが「使い方」は変化する
「ピアノ脳」に、ワーキングメモリが大きくなくても、音符を効率良く覚える方法」がある、と書いてあります。それは、音階(スケール)、アルペジオ(分散和音)、和音をまとまりとして覚える事です。
「ピアうま」の方にも、「簡単で同じような譜面」をたくさん見る事で、「音を一つ一つ認識していくのではなく、ある種の型やパターンとして認識することが可能になる」と書いてあります。
両者はまったく同じことを言っています。
もうちょっと具体的な例を出してみましょう。
●ブルクミュラー25の練習曲1番
初級後半の定番教本、ブルクミュラー25の練習曲1番のLa candeur(邦名だと「素直な心」、「正直」)の冒頭部分です。
これを、「譜読み」(可能なら「初見演奏」)する事を考えてみます。
(1) 初心者の場合
まずは、最初のト音記号の8分音符4個です。知っている音から数えて行って、ソ→ミ→レ→ドと下がる事を確認します。鍵盤の位置も確認します。次に、指番号が書いてあるので、とりあえず、右手だけ弾いてみます。同じ音符なんで、同じ長さでしょう……たぶん。
次にヘ音記号。これも数えてみて、ド、ミ、ソです。まあ、よく知っている和音です。指を鍵盤に当ててみて、指使いは5-3-1か、4-2-1か、ちょっと悩んで、5-3-1の方がラクそうなので、そうします。
次に、両手で弾くんですが、なかなか綺麗に同時発声できません。しばし練習です。
第一小節の後半の右手は、繰り返しです。そのくらいは見れば分かります。で、繰り返すんですけど、油断すると左手が離れてしまったり、右手につられて二度弾きしてしまいます。作曲しちゃってます。いけません。
そんなこんなで、数分〜数十分ほど格闘して、やっと一小節です。
えっ? ペダル? そんなものは踏んでる余裕はありましぇん。dolceの意味ですって? さあ、ドルセって何でしょうねえ。後で調べときます。
(2) ある程度読める人の場合
全体を眺める。
4/4拍子、C-Dur(ハ長調)。
臨時記号なし。よって黒鍵なし。
右手、基本8分音符でメロディー進行。左手、小節毎の単純和音。
最初の4小節、左手はC→F/C→C→C(タイで連続保持)の単純コード進行。このパターンだと、ドを5で取って、そこを基準とするのが原則。
右手は、左と同じコード進行。下げは、3度→2度→2度→2度のよくあるアルペジオ進行。指使いは標準の5→3→2→1。上げは、2→1指くぐりのスケール進行。3小節目に一箇所3度上げあり、注意。
2小節目冒頭を強めに弾いてクレッシェンドで落とす、小節間をベダルでつなぐ。
出だしはp(ピアノ)、弱い音で、ドルチェ(優しい感じ)。
概略分析OK。(自分の実力と相談して)演奏速度決定。
視線移動を全体分析モードから連続演奏モードへスイッチ。
手と指を、演奏開始位置へロック・オン。
準備完了。
脳内メトロノーム、スタート。
演奏開始。
多分、ここまでで数秒です。
必ずしも明確に意識しているワケではありませんが、ほぼこのような認識と処理が脳の中で実行されているはずです。
(ちとアニメ風にワルのりし過ぎかも・・・笑)
私も最初は「初心者」状態でしたが、いまは「ある程度読める」状態に少し近づいてきたかな、というところです。
この両者の違いはなんでしょう?
●初心者のワーキングメモリの使い方
ワーキングメモリの「大きさ」は同じでも、一つのワーキングメモリに対応する情報の塊(チャンクと言います)の大きさが違うのです。
初心者は、いち音いち音、音程と指使いを覚えたり考えたりするしかありません。 あっと言う間に、ワーキングメモリを使い切ります。 おそらく、この単純な曲でも、とりあえず1小節覚えるので精一杯でしょう。
だから、いち小節いち小節、ひたすら繰り返して体に叩き込むような方法しかとれません。 初見演奏なんて、夢のまた夢です。
技術レベルによる差は大きいと思いますが、最初の1小節に必要なチャンク(情報の塊)を数えてみましょう。(厳密な話ではなくて、「まあ、こんな感じ」という程度ですが)
右手と左手のそれぞれの開始位置で2個。
右手のソ→ミ→レ→ド(5→3→2→1)の指使いを覚えておくので1個。
右手を等間隔に順番に動かす、ということで1個。
右手を反復する、ということに1個。
左手のド−ミ−ソ(5-3-1)の位置に1個。
左手を押さえ続けるということで1個。
ここまでで計7個です。
有名なミラーの「マジカルナンバー7±2」によれば、「チャンク」は約7個であるとされています。 また、「おぼえる内容」によってこの数は増減します。 (複雑な内容ならチャンクは減る。しかもこの数字は若者の場合。子供や高齢者ではもっと少ないそうです。)
というわけで、1小節を「単純に弾く」だけで、ワーキングメモリは満杯です。
ここに、「優しい感じで」とか、「音を滑らかにつなげて」とか、「右手のメロディーを歌って」とか言われても、それは、脳の処理能力上、無理です。
ピアノの指導者が、(たぶん熱意・親切心から)上のようなことを初心者に要求するのは、実は、不可能を要求しているのです。
●ある程度読める人のワーキングメモリの使い方
ところが、楽譜が読めるようになってくると、非標準的な箇所以外は、もう、いち音いち音は覚えてません。音の進行と指使いのライブラリが長期記憶の中に既にあって、そこを指し示すポインタだけ覚えておけばいいのです。
例えば、最初の1小節に出てくる右手と左手の和音と音の進行は、「よく出てくるワンパターン」なので、これを覚えるためのチャンクは、2個ぐらい、熟達者ならたぶん1個で大丈夫です。 音型を見てCのワンパターン・アルペジオと認識しただけで、あとは特に意識することなく指使いまで自動的に処理されます。
言わば、記憶の省エネ化です。
上の能力差の要因の「(6) 適切な指使いを素早く決められるか」は、まさにこの事を言っているのだと思います。
●音の進行と指使いのライブラリ
だから、読譜力を鍛えるためには、この「音の進行と指使いのライブラリ」を鍛えることが必須です。
単に、「パッと見て音が分かる」だけでは、ダメです。
恐らく、ここを多くの人が誤解しています。 「譜面上の音が分からないから楽譜が読めない」のではなくて、「音の進行と指使いのライブラリが貧弱だから楽譜が読めない」のです。
「ピアうま」にも「ピアノ脳」にも、この「音の進行と指使いのライブラリ」に関して、ほぼ同様の事が書いてあります。
そして、音の進行と指使いのライブラリを鍛えるためには、いろいろなパターンの単純な譜面を繰り返し練習する事です。(少数の複雑な譜面をいくら読んでも、「音の進行と指使いのライブラリ」は鍛えられない。)
●知見「読譜力を鍛えるためには、頭の中に音の進行と指使いのライブラリを作ること」
これは、大人でも、≪適切な≫努力と練習次第で、できます。
しつこく、続きます(笑)。
2012.03.27 Tuesday
大人の初心者ための知見(1)
前の二つの記事(1、2)でも紹介したのですが、角先生の新著と、古屋晋一先生の次の著書は、大変役に立ちます。
「ピアノがうまくなるにはワケがある: 努力よりコツ!」 (角聖子 著)
「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」 (古屋晋一 著)
というのは、角先生の本(以下「ピアうま」と略)は、実際に多数の大人の初心者を教えた経験に基づく内容ですし、一方の古屋先生の本(以下「ピアノ脳」と略)は、「音楽演奏科学」を目指すサイエンスの立場から書かれたものです。
両者を比較すると、随所で共通する内容が、違う言葉で書かれています。
こういった内容を整理すると、この文章のタイトルである「大人の初心者ための知見」がいくつか見えてくると思います。
私が、偉そうにあれこれ論じるのもナンですが、例によって、屁理屈を展開してみたいと思います。
●知見「再開組と始めて組は違う」
再開組=子供のときにある程度習っていた方
始めて組=子供のときにまったくやってない方
よくある意見「子供の頃にやっていたけど、すっかり忘れてしまったので、ゼロから始めるのと同じ」
同じではありません。「ピアノ脳」の随所で、早期教育が有効であり、それが脳に変化をもたらしている事例が紹介されています。 また、「ピアうま」p.14では、大人がクラシックの原曲に短期間で到達したとしても、『それは、大人ならではの「にわか勉強」の結果であって、子供たちが充分時間をかけてやってきた基礎がごっそり抜けている』という記載があります。
したがって、再開組と始めて組に同じ教育メソッドを適用するのは困難なはずです。
かといって、大人が子どもと同じ教材、教育課程でよいのか、というと、それも難しいです。
そこで、「ピアうま」では、大人が挫折せずに続けていくためのヒントがたくさん述べられています。
次に、大人にとっての難関である「読譜力」について、もう少し考えてみます。
●読譜力の構成要素
「ピアノ脳」p.105-112に、初見演奏の能力差の要因が六つ挙げられています。(初見演奏と読譜力は同一のものではありませんが、初見ができれば相当の読譜力があるはずなので、ここでは両者は「ほぼ同じ」と考えてみます。)
(1) 15歳までの初見演奏の練習量
(2) 左手を右手と同じくらい器用に使えるか
(3) 楽譜上の視覚情報を素早く処理できるか
(4) 楽譜を見て音を正確にイメージできるか
(5) ワーキングメモリの大きさ(注:ワーキングメモリ=作業記憶。作動記憶。一時的な記憶)
(6) 適切な指使いを素早く決められるか
さらに、(3)と(5)は、訓練によって大きくは変化しないという報告があるそうです。
そうです。「変化しない」のです。
これは重要な情報です。「ダメな人は練習してもダメ」なんですけど、「もともとこの能力が高い人は読譜力の向上に潜在的に有利」という事でもあります。
●周辺視野
この(3)に関しては、周辺視野の広さが重要で、グループや規則性の発見能力と関連するという記述もあります。
「ピアうま」の方にも、「数をこなすことで」、音符を「ある種のパータンや型として認識する」と書いてあります。
これは、ほぼ同じ事を言っています。
周辺視野の能力が明確に表れるのが、文章の「速読能力」です。
自慢じゃないですが、わたし、文章を読むのが速いです。(自慢してるじゃん!)
意図的にナナメ読みで速読するときは、(もちろん主たる注意は一箇所ですが)ページの複数個所、複数行を同時に見ている感覚です。 まさに、周辺視野をフル活用している感じです。
そこで、次のような仮説を立てる事が出来ます。
●知見(仮説段階)「速読が得意な人は読譜力が付きやすい」(逆に苦手な人は読譜力も弱い)
検証方法:音楽教室では心理学や脳科学の研究室のような統制された実験はできませんが、興味のあるピアノ教師の方は、始めて組の方に聞いてみてもらえないでしょうか? かなりの確度で、成立しているものと予想します。
●ワーキングメモリ
もう一つの(5)の方です。ワーキングメモリの大小、すなわち、何かを一時的に(数秒〜数分)覚えておく能力の大小です。 これにも個人差があることが知られているそうです。
これが露骨に出るのが、神経衰弱のようなゲーム。レストランでの注文取り。ちょっと複雑な暗算。
そして、音符の先読みの能力です。
「ピアノ脳」によれば、初見の上手なピアニストは、いま弾いている箇所より、平均して4〜8音くらい先を見ているそうです。読み取った音符をワーキングメモリ上に保持して、その僅かな時間の間に音価や指使いを決定しているのです。
「ピアうま」の方でも、「先読みが読譜力につながる」と明言しています。
このワーキングメモリの大小が日常生活に影響する場面ですが……例えば、人の話を聞いたり、本を読んだりして、その内容を理解するためには、相手の言っている事、書いてある事を一時的に覚えて、関連付けなければなりません。したがって、ワーキングメモリが小さい人は、複雑な内容を話されても理解できない、長い文章を読んでも理解できない、という事になります。
別の例。スーパーやコンビニで買い物したときに、つり銭ができるだけ出ないようにして小銭を渡すと、一瞬固まるバイトがいます。(買い物が6,666円だったので、1万円札×1、千円札×2、百円玉×1、五十円玉×1、十円玉×2、一円玉×1を渡したりとか。大抵はレジが勝手に計算してくれるので実害は無いのですが、そうでないとけっこう悲惨。)
差別的な表現だと言って怒らないで欲しいのですが、要するにワーキングメモリの大小が頭の良し悪しに直結しています。実際、ワーキングメモリと流動性知能(新しいことを学習する知能や、新しい環境に適応するための問題解決能力……平たく言えば頭の良さ)は深く関連しているそうです。
そこで、身も蓋も無いのですが、次の知見。
●知見「頭のよい人は読譜力が付きやすい」
続きはまた次回に。
※蛇足
ここでは、「初見能力と読譜力を勝手に同一視」して、その「読譜力について論じた」だけです。 他の「ピアノ力」は、また別の話です。 誤解なきように。
「ピアノがうまくなるにはワケがある: 努力よりコツ!」 (角聖子 著)
「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」 (古屋晋一 著)
というのは、角先生の本(以下「ピアうま」と略)は、実際に多数の大人の初心者を教えた経験に基づく内容ですし、一方の古屋先生の本(以下「ピアノ脳」と略)は、「音楽演奏科学」を目指すサイエンスの立場から書かれたものです。
両者を比較すると、随所で共通する内容が、違う言葉で書かれています。
こういった内容を整理すると、この文章のタイトルである「大人の初心者ための知見」がいくつか見えてくると思います。
私が、偉そうにあれこれ論じるのもナンですが、例によって、屁理屈を展開してみたいと思います。
●知見「再開組と始めて組は違う」
再開組=子供のときにある程度習っていた方
始めて組=子供のときにまったくやってない方
よくある意見「子供の頃にやっていたけど、すっかり忘れてしまったので、ゼロから始めるのと同じ」
同じではありません。「ピアノ脳」の随所で、早期教育が有効であり、それが脳に変化をもたらしている事例が紹介されています。 また、「ピアうま」p.14では、大人がクラシックの原曲に短期間で到達したとしても、『それは、大人ならではの「にわか勉強」の結果であって、子供たちが充分時間をかけてやってきた基礎がごっそり抜けている』という記載があります。
したがって、再開組と始めて組に同じ教育メソッドを適用するのは困難なはずです。
かといって、大人が子どもと同じ教材、教育課程でよいのか、というと、それも難しいです。
そこで、「ピアうま」では、大人が挫折せずに続けていくためのヒントがたくさん述べられています。
次に、大人にとっての難関である「読譜力」について、もう少し考えてみます。
●読譜力の構成要素
「ピアノ脳」p.105-112に、初見演奏の能力差の要因が六つ挙げられています。(初見演奏と読譜力は同一のものではありませんが、初見ができれば相当の読譜力があるはずなので、ここでは両者は「ほぼ同じ」と考えてみます。)
(1) 15歳までの初見演奏の練習量
(2) 左手を右手と同じくらい器用に使えるか
(3) 楽譜上の視覚情報を素早く処理できるか
(4) 楽譜を見て音を正確にイメージできるか
(5) ワーキングメモリの大きさ(注:ワーキングメモリ=作業記憶。作動記憶。一時的な記憶)
(6) 適切な指使いを素早く決められるか
さらに、(3)と(5)は、訓練によって大きくは変化しないという報告があるそうです。
そうです。「変化しない」のです。
これは重要な情報です。「ダメな人は練習してもダメ」なんですけど、「もともとこの能力が高い人は読譜力の向上に潜在的に有利」という事でもあります。
●周辺視野
この(3)に関しては、周辺視野の広さが重要で、グループや規則性の発見能力と関連するという記述もあります。
「ピアうま」の方にも、「数をこなすことで」、音符を「ある種のパータンや型として認識する」と書いてあります。
これは、ほぼ同じ事を言っています。
周辺視野の能力が明確に表れるのが、文章の「速読能力」です。
自慢じゃないですが、わたし、文章を読むのが速いです。(自慢してるじゃん!)
意図的にナナメ読みで速読するときは、(もちろん主たる注意は一箇所ですが)ページの複数個所、複数行を同時に見ている感覚です。 まさに、周辺視野をフル活用している感じです。
そこで、次のような仮説を立てる事が出来ます。
●知見(仮説段階)「速読が得意な人は読譜力が付きやすい」(逆に苦手な人は読譜力も弱い)
検証方法:音楽教室では心理学や脳科学の研究室のような統制された実験はできませんが、興味のあるピアノ教師の方は、始めて組の方に聞いてみてもらえないでしょうか? かなりの確度で、成立しているものと予想します。
●ワーキングメモリ
もう一つの(5)の方です。ワーキングメモリの大小、すなわち、何かを一時的に(数秒〜数分)覚えておく能力の大小です。 これにも個人差があることが知られているそうです。
これが露骨に出るのが、神経衰弱のようなゲーム。レストランでの注文取り。ちょっと複雑な暗算。
そして、音符の先読みの能力です。
「ピアノ脳」によれば、初見の上手なピアニストは、いま弾いている箇所より、平均して4〜8音くらい先を見ているそうです。読み取った音符をワーキングメモリ上に保持して、その僅かな時間の間に音価や指使いを決定しているのです。
「ピアうま」の方でも、「先読みが読譜力につながる」と明言しています。
このワーキングメモリの大小が日常生活に影響する場面ですが……例えば、人の話を聞いたり、本を読んだりして、その内容を理解するためには、相手の言っている事、書いてある事を一時的に覚えて、関連付けなければなりません。したがって、ワーキングメモリが小さい人は、複雑な内容を話されても理解できない、長い文章を読んでも理解できない、という事になります。
別の例。スーパーやコンビニで買い物したときに、つり銭ができるだけ出ないようにして小銭を渡すと、一瞬固まるバイトがいます。(買い物が6,666円だったので、1万円札×1、千円札×2、百円玉×1、五十円玉×1、十円玉×2、一円玉×1を渡したりとか。大抵はレジが勝手に計算してくれるので実害は無いのですが、そうでないとけっこう悲惨。)
差別的な表現だと言って怒らないで欲しいのですが、要するにワーキングメモリの大小が頭の良し悪しに直結しています。実際、ワーキングメモリと流動性知能(新しいことを学習する知能や、新しい環境に適応するための問題解決能力……平たく言えば頭の良さ)は深く関連しているそうです。
そこで、身も蓋も無いのですが、次の知見。
●知見「頭のよい人は読譜力が付きやすい」
続きはまた次回に。
※蛇足
ここでは、「初見能力と読譜力を勝手に同一視」して、その「読譜力について論じた」だけです。 他の「ピアノ力」は、また別の話です。 誤解なきように。
2011.04.27 Wednesday
ピアノ中級の壁(8)
前回の続きです。
今回で、「ピアノ中級の壁」シリーズの最終回にしたいと思います。
●ここ数ヶ月の変化
私にとって、一番欠けていた基礎力は、読譜力でした。 これが、中級の壁のボトルネックでした。
ところが、去年(2010年)の秋ごろから、自分の読譜力が目だって改善してきている実感が沸いてきました。
それまでは、「楽譜が読める」といっても、「次に弾く音を読む」という「一音限定読譜」の状態だったのが、数音ですが「先読み読譜」ができるようになってきました。
すると、手元の鍵盤をあまり見ずに「楽譜を見ながら弾く」ことができるようになってきました。
私の場合は、この事が、様々な基礎力不足の足の引っ張り合いである基礎力不足トライアングルを打破するきっかけになったようです。
一度、「楽譜を見ながら弾く」ことができるようになると、それまでの暗譜頼みの状態に比べて、練習の効率が目に見えて改善します。 「基礎力『不足』トライアングル」は、逆の見方をすれば、「基礎力『強化』トライアングル」です。 ボトルネックであった読譜力が強化され、一度、好い循環が動き出せば、長い停滞から脱却できます。
明らかに、質的変化が生じた、と言ってよいと思います。
●インベンションの記録
その傍証として、最近の結果も含めて、インベンションのマルの表を下に示します。
最初は、なんと、2年で3曲。 たった6ページの楽譜に、それだけの時間がかかりました。 中級の壁に突入した時期です。
しかし、その後、ペースが上がっていきます。
当然、難易度の低い曲からやっているのですが、一曲をこなす時間が短縮していきます。 2010年になると、おおむね2か月強でマルがもらえるようになってきました。
そして……私は、基本的に月2回のレッスンなので、今年(2011年)になってからは、1回のレッスンでインベンションを1曲、マルもらっている事になります。 (合格基準は、相当に甘いのですが。あと、5番に手間取ったのは大震災でモチベーションが上がらなかったせいもあります。)
残りはあと2曲。 2曲とも、譜読みは終わって、弾き込みを始めています。
おそらく、今年の春……遅くとも夏にはインベンションを終えてシンフォニアに入れそうです。
多分、私、★★★中級の壁を越えつつあります。★★★
●中級の壁の長いトンネル
壁を超えるために一番大切なのは、現実的な時間で壁を越えられる「希望」だと書きました。 そして、「成功事例が必要」だとも書きました。 (ピアノ中級の壁(3))
上の表が、その成功事例になっているかどうか分かりませんが、ゼロから始めた大人(中高年)が、曲がりなりにも中級(中級前半)レベルの教本をクリアした、という一つのサンプルです。
あと、エラソーな事を書いているので、わたくし坂上酔狂のことを「ピアノがけっこう上手いんじゃないかと」思っている人が……まあ、いないと思いますが……もし万が一いたら、安心してください。下手です。
じゃあ、何でエラソーな事を書くのかというと、下手は下手なりに何とかピアノを辞めずに続けて来られたので、その記録のためと、中高年でゼロから始めた方の考えるヒントになれば、と思って書いているのです。
●中級の壁の「向こう側」
中級の壁の長いトンネルを抜けると雪国であった。(んなワケ、ない)
寒いオヤジギャグはさておき、私が長々と書いてきた「中級の壁」というのは、正確には、「中級の入り口段階にある壁」の事です。 けっして、「中級の壁」の次が「上級」なワケではありません。(笑)
中級の壁を超えて、やっと普通の中級になるのです。
遥か彼方に雪をかぶった上級の山々がかすかに見えますが、そんな遠くを見る前に、やる事はたくさんあります。
まず、スピードと正確性。
「読譜力強化」を優先するために、あえて「スピードと正確性」を犠牲にしました。 教本で言うと、ツェルニー系の練習をやりませんでした。
ツェルニーに関しては否定的なことも書きましたが(ツェルニー30番の罠)、ツェルニーを全否定しているのではなく、「読譜力がボトルネックの場合には効果が薄い」という事が言いたかったのです。状況が変わってきた以上、ツェルニー系の練習を再検討する時期が近いです。
次に和音。
インベンションは「左右それぞれ一度に一音」が基本です。 だからこそ、読譜のトレーニングにほどよい難易度なのです。 和音は、ほぼまったくと言ってよいくらい、出てきません。
そんなわけで、和音が出てくると、途端に読譜スピードが大幅ダウンです。 ロマン派や近現代の曲をもっと練習しないといけません。
そして、脱力。
我ながら、まだ無駄な力の塊です。 少し長く弾いていると、だんだんと疲れてきて、止まったり間違えたりしてしまいます。 上の「スピードと正確性」のためにも、もう少し脱力した弾き方をマスターしなければなりません。
しかし、これからどんな練習をするにせよ、読譜力が付いてきた事が大いに助けになっています。
まだまだ、ピアノの旅は続きます。
●ここ数ヶ月の変化
私にとって、一番欠けていた基礎力は、読譜力でした。 これが、中級の壁のボトルネックでした。
ところが、去年(2010年)の秋ごろから、自分の読譜力が目だって改善してきている実感が沸いてきました。
それまでは、「楽譜が読める」といっても、「次に弾く音を読む」という「一音限定読譜」の状態だったのが、数音ですが「先読み読譜」ができるようになってきました。
すると、手元の鍵盤をあまり見ずに「楽譜を見ながら弾く」ことができるようになってきました。
私の場合は、この事が、様々な基礎力不足の足の引っ張り合いである基礎力不足トライアングルを打破するきっかけになったようです。
一度、「楽譜を見ながら弾く」ことができるようになると、それまでの暗譜頼みの状態に比べて、練習の効率が目に見えて改善します。 「基礎力『不足』トライアングル」は、逆の見方をすれば、「基礎力『強化』トライアングル」です。 ボトルネックであった読譜力が強化され、一度、好い循環が動き出せば、長い停滞から脱却できます。
明らかに、質的変化が生じた、と言ってよいと思います。
●インベンションの記録
その傍証として、最近の結果も含めて、インベンションのマルの表を下に示します。
順番 | 曲名 | マルの日 | 期間 |
1曲目 | インベンション1番 | 2008年7月23日 | 7.1ヶ月 |
2曲目 | インベンション4番 | 2009年2月26日 | 7.3ヶ月 |
3曲目 | インベンション8番 | 2009年12月9日 | 9.5ヶ月 |
4曲目 | インベンション13番 | 2010年2月18日 | 2.4ヶ月 |
5曲目 | インベンション10番 | 2010年5月12日 | 2.8ヶ月 |
6曲目 | インベンション7番 | 2010年7月21日 | 2.3ヶ月 |
7曲目 | インベンション3番 | 2010年8月25日 | 1.2ヶ月 |
8曲目 | インベンション15番 | 2010年12月8日 | 3.5ヶ月 |
9曲目 | インベンション14番 | 2011年1月19日 | 1.4ヶ月 |
10曲目 | インベンション12番 | 2011年2月9日 | 0.7ヶ月 |
11曲目 | インベンション11番 | 2011年2月23日 | 0.5ヶ月 |
12曲目 | インベンション5番 | 2011年4月13日 | 1.6ヶ月 |
13曲目 | インベンション2番 | 2011年4月27日 | 0.5ヶ月 |
14曲目 | インベンション6番 | 練習中 | |
15曲目 | インベンション9番 | 練習中 |
最初は、なんと、2年で3曲。 たった6ページの楽譜に、それだけの時間がかかりました。 中級の壁に突入した時期です。
しかし、その後、ペースが上がっていきます。
当然、難易度の低い曲からやっているのですが、一曲をこなす時間が短縮していきます。 2010年になると、おおむね2か月強でマルがもらえるようになってきました。
そして……私は、基本的に月2回のレッスンなので、今年(2011年)になってからは、1回のレッスンでインベンションを1曲、マルもらっている事になります。 (合格基準は、相当に甘いのですが。あと、5番に手間取ったのは大震災でモチベーションが上がらなかったせいもあります。)
残りはあと2曲。 2曲とも、譜読みは終わって、弾き込みを始めています。
おそらく、今年の春……遅くとも夏にはインベンションを終えてシンフォニアに入れそうです。
多分、私、★★★中級の壁を越えつつあります。★★★
●中級の壁の長いトンネル
壁を超えるために一番大切なのは、現実的な時間で壁を越えられる「希望」だと書きました。 そして、「成功事例が必要」だとも書きました。 (ピアノ中級の壁(3))
上の表が、その成功事例になっているかどうか分かりませんが、ゼロから始めた大人(中高年)が、曲がりなりにも中級(中級前半)レベルの教本をクリアした、という一つのサンプルです。
あと、エラソーな事を書いているので、わたくし坂上酔狂のことを「ピアノがけっこう上手いんじゃないかと」思っている人が……まあ、いないと思いますが……もし万が一いたら、安心してください。下手です。
じゃあ、何でエラソーな事を書くのかというと、下手は下手なりに何とかピアノを辞めずに続けて来られたので、その記録のためと、中高年でゼロから始めた方の考えるヒントになれば、と思って書いているのです。
●中級の壁の「向こう側」
中級の壁の長いトンネルを抜けると雪国であった。(んなワケ、ない)
寒いオヤジギャグはさておき、私が長々と書いてきた「中級の壁」というのは、正確には、「中級の入り口段階にある壁」の事です。 けっして、「中級の壁」の次が「上級」なワケではありません。(笑)
中級の壁を超えて、やっと普通の中級になるのです。
遥か彼方に雪をかぶった上級の山々がかすかに見えますが、そんな遠くを見る前に、やる事はたくさんあります。
まず、スピードと正確性。
「読譜力強化」を優先するために、あえて「スピードと正確性」を犠牲にしました。 教本で言うと、ツェルニー系の練習をやりませんでした。
ツェルニーに関しては否定的なことも書きましたが(ツェルニー30番の罠)、ツェルニーを全否定しているのではなく、「読譜力がボトルネックの場合には効果が薄い」という事が言いたかったのです。状況が変わってきた以上、ツェルニー系の練習を再検討する時期が近いです。
次に和音。
インベンションは「左右それぞれ一度に一音」が基本です。 だからこそ、読譜のトレーニングにほどよい難易度なのです。 和音は、ほぼまったくと言ってよいくらい、出てきません。
そんなわけで、和音が出てくると、途端に読譜スピードが大幅ダウンです。 ロマン派や近現代の曲をもっと練習しないといけません。
そして、脱力。
我ながら、まだ無駄な力の塊です。 少し長く弾いていると、だんだんと疲れてきて、止まったり間違えたりしてしまいます。 上の「スピードと正確性」のためにも、もう少し脱力した弾き方をマスターしなければなりません。
しかし、これからどんな練習をするにせよ、読譜力が付いてきた事が大いに助けになっています。
まだまだ、ピアノの旅は続きます。
2011.02.27 Sunday
ピアノ中級の壁(7)
前回の続きです。
今回は、「具体論その2」です。
と言っても、あんまり書く事ありません。(笑)
そのわりには、また長いです。(爆)
●教本選び:補足
中高年の方は、今と違って(?)「先生はエライ」という環境で育った方が多いと思います。 だから、「先生の指示のまま教本を使う」ケースが多いのではないかと思います。
しかし、先生はけっして万能ではありません。
やはり、自ら主体的に教本を選ぶ事が、壁の突破に向けての大きなポイントだと思います。 どんな教本を使うかによって、中級の壁を乗り越える労力がかなり違ってくるはずです。
そういった事を踏まえて、前回と前々回で、いろいろ書いてみたワケです。
以上、ちょっと、補足。
●具体論と言っても……
それで、今回は、それ以外の点について、――例えば、練習方法、レッスン、先生との相性や相談の仕方等々について何か書こうかと思ったのですが……。
でも、多分、中級の手前ぐらいまで来ていれば、既に自分のスタイルをある程度確立しているはずなので、私が練習方法などについて何か書いても「小さな親切、大きなお世話」になってしまいそうです。
そこで今回は、ちょっと視点を変えて、何か考えるヒントになりそうな事を書いてみたいと思います。
●楽典と音楽理論
子供に比べて大人は大きなハンディを背負っています。
しかし、理屈、すなわち、音楽理論の面では、子供に勝てます。(勝って、どうする? 笑)
まあ、ともかく、この優位性を利用しない手はありません。
まず、楽典をちゃんと勉強しましょう。
オススメは、次のポケットブック。 必要な情報が要領よくまとまっています。
普通の音符は大丈夫でも、変化記号や演奏記号はあやしい場合があると思います。 それから、発想標語(adagio、andante、a tempo、etc.)も、ちゃんと調べましょう。
一度に全部覚えるのは大変(というか、無理)ですから、練習中の曲に出てきた記号やルールを、一つずつ覚えましょう。
さらに、和音や調の構造を理解しましょう。 和音は、とりあえず基本の三和音。 調の構造は、近親調とか、五度圏とかいったものです。 (と、エラソーに言ってますけど、私もまだ勉強中)
特に、楽譜から和音が読み取れるようになると、演奏が相当ラクになるはずです。 個別の音を拾うのではなく、和音の構成音を弾けばよいのですから。
ちなみに、アルペジオを練習する大きな理由の一つが、これです。
ちなみにのちなみに、私の師匠のA先生は、「これは属七」とか、和音を一瞬で読み取ってしまいます。 私は……当然まったくできません(涙)。
さらに上級編になると、音律の知識が出てきます。
例えば……
なぜ、音階は12音あるか説明できますか?
平均律、ピタゴラス律、純正律の違いを説明できますか?
バッハの平均律の何が「平均」なのか、分かりますか?
実は、ドレミは何種類もあるのです。 知ってました?
私は、ピアノを始めてかなりたつまで、知りませんでした。
ネタ本は次の一冊。 これを読んで初めて音律の事を少し知る事ができました。
まあ、趣味のピアノに音律の知識は必要ないかもしれませんが、こういった音楽理論を勉強するのも、「大人ならではのピアノの楽しみ方」の一つではないでしょうか?
ちなみに、音律の基本はピタゴラス律です。
ピタゴラスというのは、数学の時間に習ったピタゴラスの定理(三平方の定理)のピタゴラスです。 実は、音楽の基礎は数学とつながっているのです。
凝り性のわたくしめは、Excelでピタゴラス律のデータを生成して、それをMIDIで演奏して、悦に浸ったりもしてます。(←ただのバカ)
●百ます計算と論語素読
魔法の杖はありません。
壁を突破するためには、やはり「反復練習」しかありません。
では、何を「反復練習」すればよいのでしょうか?
ここで、ピアノではありませんが、参考になりそうな事例があります。
まずは、有名な『百ます計算』。 (詳しくはWikipediaの説明を見てください)
単純な計算の繰り返しで、スピード・正確性を競うものです。
昔ながらの九九の練習も、この百ます計算に通じるものがあると思います。
もう一つは、『論語素読』。
論語というのは、儒教の祖の孔子とその弟子達の言葉を記録した書です。 なんと、2000年以上前の書物であり、中国だけではなく、日本でも長く教育に用いられてきました。
出だしの有名なフレーズ、『子曰く、学びて時に之を習う。亦た悦ばしからずや。朋あり、遠方より来る。亦た楽しからずや』というのは、多くの方がご存知でしょう。 (詳しくはWikipediaの説明を見てください)
いまこの論語を素読すること(意味はひとまずおいて完全に暗誦できるまで繰り返し音読すること)、あるいは、論語だけでなくて古今東西の古典的な名作を声に出して音読することが流行っているみたいです。
この二つ、百ます計算と、論語素読に共通するのは、「ひたすら繰り返す」事。
そして、(使い方さえ間違えなければ)大きな教育効果を有しているという事。
違いは、百ます計算がきわめて単純な内容であるのに対して、論語の内容は難しい――おそらく最初はまったく意味が分からないであろう事です。 (それでも、「読書百遍意自ずから通ず」。だんだん意味が分かってくる……と思います。)
何か、似てませんか?
前者は、ハノンのような単純なパターン練習の繰り返し。
後者は、インベンションのような難しい練習曲の繰り返し。
やはり、この二つの異なったタイプの訓練が、基礎学力(そして、基礎ピアノ力)の養成に必要なのではないでしょうか?
次回は……、そろそろネタも尽きてきたので、「締め」にしましょうか。
そのわりには、また長いです。(爆)
●教本選び:補足
中高年の方は、今と違って(?)「先生はエライ」という環境で育った方が多いと思います。 だから、「先生の指示のまま教本を使う」ケースが多いのではないかと思います。
しかし、先生はけっして万能ではありません。
やはり、自ら主体的に教本を選ぶ事が、壁の突破に向けての大きなポイントだと思います。 どんな教本を使うかによって、中級の壁を乗り越える労力がかなり違ってくるはずです。
そういった事を踏まえて、前回と前々回で、いろいろ書いてみたワケです。
以上、ちょっと、補足。
●具体論と言っても……
それで、今回は、それ以外の点について、――例えば、練習方法、レッスン、先生との相性や相談の仕方等々について何か書こうかと思ったのですが……。
でも、多分、中級の手前ぐらいまで来ていれば、既に自分のスタイルをある程度確立しているはずなので、私が練習方法などについて何か書いても「小さな親切、大きなお世話」になってしまいそうです。
そこで今回は、ちょっと視点を変えて、何か考えるヒントになりそうな事を書いてみたいと思います。
●楽典と音楽理論
子供に比べて大人は大きなハンディを背負っています。
しかし、理屈、すなわち、音楽理論の面では、子供に勝てます。(勝って、どうする? 笑)
まあ、ともかく、この優位性を利用しない手はありません。
まず、楽典をちゃんと勉強しましょう。
オススメは、次のポケットブック。 必要な情報が要領よくまとまっています。
普通の音符は大丈夫でも、変化記号や演奏記号はあやしい場合があると思います。 それから、発想標語(adagio、andante、a tempo、etc.)も、ちゃんと調べましょう。
一度に全部覚えるのは大変(というか、無理)ですから、練習中の曲に出てきた記号やルールを、一つずつ覚えましょう。
さらに、和音や調の構造を理解しましょう。 和音は、とりあえず基本の三和音。 調の構造は、近親調とか、五度圏とかいったものです。 (と、エラソーに言ってますけど、私もまだ勉強中)
特に、楽譜から和音が読み取れるようになると、演奏が相当ラクになるはずです。 個別の音を拾うのではなく、和音の構成音を弾けばよいのですから。
ちなみに、アルペジオを練習する大きな理由の一つが、これです。
ちなみにのちなみに、私の師匠のA先生は、「これは属七」とか、和音を一瞬で読み取ってしまいます。 私は……当然まったくできません(涙)。
さらに上級編になると、音律の知識が出てきます。
例えば……
なぜ、音階は12音あるか説明できますか?
平均律、ピタゴラス律、純正律の違いを説明できますか?
バッハの平均律の何が「平均」なのか、分かりますか?
実は、ドレミは何種類もあるのです。 知ってました?
私は、ピアノを始めてかなりたつまで、知りませんでした。
ネタ本は次の一冊。 これを読んで初めて音律の事を少し知る事ができました。
まあ、趣味のピアノに音律の知識は必要ないかもしれませんが、こういった音楽理論を勉強するのも、「大人ならではのピアノの楽しみ方」の一つではないでしょうか?
ちなみに、音律の基本はピタゴラス律です。
ピタゴラスというのは、数学の時間に習ったピタゴラスの定理(三平方の定理)のピタゴラスです。 実は、音楽の基礎は数学とつながっているのです。
凝り性のわたくしめは、Excelでピタゴラス律のデータを生成して、それをMIDIで演奏して、悦に浸ったりもしてます。(←ただのバカ)
●百ます計算と論語素読
魔法の杖はありません。
壁を突破するためには、やはり「反復練習」しかありません。
では、何を「反復練習」すればよいのでしょうか?
ここで、ピアノではありませんが、参考になりそうな事例があります。
まずは、有名な『百ます計算』。 (詳しくはWikipediaの説明を見てください)
単純な計算の繰り返しで、スピード・正確性を競うものです。
昔ながらの九九の練習も、この百ます計算に通じるものがあると思います。
もう一つは、『論語素読』。
論語というのは、儒教の祖の孔子とその弟子達の言葉を記録した書です。 なんと、2000年以上前の書物であり、中国だけではなく、日本でも長く教育に用いられてきました。
出だしの有名なフレーズ、『子曰く、学びて時に之を習う。亦た悦ばしからずや。朋あり、遠方より来る。亦た楽しからずや』というのは、多くの方がご存知でしょう。 (詳しくはWikipediaの説明を見てください)
いまこの論語を素読すること(意味はひとまずおいて完全に暗誦できるまで繰り返し音読すること)、あるいは、論語だけでなくて古今東西の古典的な名作を声に出して音読することが流行っているみたいです。
この二つ、百ます計算と、論語素読に共通するのは、「ひたすら繰り返す」事。
そして、(使い方さえ間違えなければ)大きな教育効果を有しているという事。
違いは、百ます計算がきわめて単純な内容であるのに対して、論語の内容は難しい――おそらく最初はまったく意味が分からないであろう事です。 (それでも、「読書百遍意自ずから通ず」。だんだん意味が分かってくる……と思います。)
何か、似てませんか?
前者は、ハノンのような単純なパターン練習の繰り返し。
後者は、インベンションのような難しい練習曲の繰り返し。
やはり、この二つの異なったタイプの訓練が、基礎学力(そして、基礎ピアノ力)の養成に必要なのではないでしょうか?
次回は……、そろそろネタも尽きてきたので、「締め」にしましょうか。
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