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2011.01.27 Thursday

ピアノ中級の壁(1)

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    ●中級の壁に至るまで

    たぶん今、私は、「ピアノ中級の壁」の長いトンネルの中にいるのだと思います。

    ピアノをやっていると、何回か壁……スランプと言ってもいいですが、とにかく思うように前に進めない状態に当たります。

    その中でも、この「中級の壁」は、大人のアマチュアのピアノ弾きにとって最大の壁かもしれません。

    初級段階のうちは、大人の場合、初級中盤の難易度が急上昇する局面(以前書いた「バイエル80番台の壁」)を乗り越えれば、あとは大人のガンバリと集中力で、けっこう何とかなります。

    練習曲集で言うとブルクミュラー終了程度まで。

    発表会用の曲だと、中程度の難しさのクラシックの原曲に挑戦できるあたりです。 ショパンとか、ドビュッシーとか、モーツァルトとか、「あこがれの名曲」でも「それなりに」弾けるものです。

    でも、「それなりに」しか弾けないんです。 思うように弾けないんです。 綺麗に弾けないんです。 安定しないんです。 トチるんです。 止まるんです。 遅いんです。 練習しても練習しても、うまく弾けないんです。

    ここに至って、自分の基礎力の無さを痛感します。

    「よ〜し、基礎からみっちり、やったるわい」と決意します。

    そして、「中級の壁」にぶち当たります。

    ●バブルとしての中級の壁

    大人――特に男性の場合は、「ひたすら上を目指す」という傾向が強いと思います。 これはもう、オスの本能みたいなものですら、どうしようもありません。

    ピアノの場合だと、より難易度の高い曲、より高度なテクニックを追求したがります。 「いや〜あ、私はコツコツとマイペースでやりますよ」とか言っていても、内心では教本を次々と「制覇」することにこだわります。

    「何とかなる」うちは、ひたすら難しいことに挑戦し続けます。

    そして、初級段階のうちは、「何とかなってしまう」のです。 実はこれが、大問題なのです。

    これは、ある種のバブル状態です。 「練習すれば上に行ける」という期待、そして実際に「行けてしまう」という事実が、「ひたすら上を目指す」という傾向を必要以上に助長してしまうのです。

    株や不動産といっしょです。 「まだまだ上がる」という期待そのものが、適正水準をはるかに超える高騰を招いてしまうのです。

    しかし、あらゆるバブルは必ず崩壊します。

    ●中級の壁の構造

    ピアノ力を構成するいろいろなテクニックは、新たに学習してから、何度も繰り返し練習することでゆっくりと定着していきます。 「ひたすら上を目指す」のはよいのですが、「定着させる」方の練習が減ってしまうのは問題です。

    この定着プロセスをおろそかにして、ひたすら上を目指し続けると、どこかで、

    【定着せずに不安定化するテクニック > 新たに学習するテクニック】

    という状態に陥ります。

    この状態はピアノを弾いていれば実感できます。 ちょっと無理しすぎているな、基礎力が不足しているな、と自分で認識できます。

    そこで、基礎練習を始めるのですが、これが、つらい。

    挑戦できていたはずの難曲に比べて、基礎練習ははるかにレベルが低い……ように感じる。 にもかかわらず、その基礎練習がうまくできない。 (だから、基礎力不足なのです。あたり前です。)

    ショパンがどーの、ベトベンがこーの、とかいう遥か以前の問題として、ハ長調のスケール(音階)が安定してうまく弾けない。 自分で弾いた録音を聞いてみて、はっきり言って、ヘタ。 あんたぁ、ピアノ、何年やってるの、自分で自分に向かって言いたくなる。

    「なにくそっ」と、大人のガンバリと集中力で基礎練習に取り組む……のですが、初級段階の頃のように「上手くなっている」という実感がまるで沸かない。 (定着には、練習量と時間が必要なのです。)

    そのうち、「オレって、やっぱり才能無いんだぁ」とか、「子供からやっていた人にはかなわないんだぁ」とか、「この辺が自分の限界なんだぁ」とか思い始めて、意欲のデフレスパイラルに陥ってしまう。

    そして、あんなに燃えていたピアノへの情熱が、一気にしぼむ。 練習時間が減ったり、レッスンをついついサボったり。 で、ますます悪循環にはまる。

    これすなわち、バブル崩壊。

    これが中級の壁です。

    私の場合、中級の壁との遭遇は、ピアノを始めてもうすぐ4年目の2008年の1月頃の事でした。 ちなみに、この頃からBlogの更新も滞り気味になってしまいました。

    続きはまた次回に……



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