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2011.02.05 Saturday
ピアノ中級の壁(4)
前回の続きです。
今回は、一般論から具体論への橋渡しです。
ただし、「中級の壁」に悪戦苦闘しているオヂサンがテキトーな屁理屈を言っているだけなので、信じてはいけません。(笑) その点を、あらかじめお断りしておきます。
●みんなの「中級の壁」
このシリーズの第1回目の記事で、エラソーに「中級の壁」というものを定義してみました。
これは、あくまでも「自分の個人的な体験」+「他の人もそうなんじゃないかなぁ」という想像の産物です。 したがって、間違っているかもしれません。
でも、『上を目指して頑張る→頑張りすぎる→基礎力不足を痛感する→基礎練習に取り組む→めげる』という図式は、けっこう一般的なので、そう大きくは外していない、と思います。
さて、それで、です。
その「基礎」って何でしょう?
何が出来れば「中級の壁」を克服した、と言えるのでしょぅか?
「中級の壁の内容は人それぞれ」なのですが、いろいろ見聞きした事を踏まえると、いくつかの「タイプ(類型)」に分類できると思います。 主なものは、次の四つではないでしょうか?
上に挙げた四つのタイプのうち、「筋力不足」は別格です。 これはもう、「筋トレ」するしかありません。 (ただし、「指の独立」がきちんとできれば、「筋力不足」をかなりカバーできるような気もします。)
残りの三つ、読譜力不足、指の独立不足、音感不足ですが、最初は別々に対処法を考えていたのですが、よく考えると、これは相互に強く結びついているような気がしてきました。
下の図を見てください。
これは、読譜力(運指力を含む)、指の独立(鍵盤感覚を含む)、音感の相互関係を、私なりに考えて図示したものです。 名付けて、「基礎力不足トライアングル」。
(上の図をクリックすると、拡大図がでます)
図の見方ですが、例えば、図の左上の、
【指の独立/鍵盤感覚】⇔【読譜力/運指力】
指に対する指令が混乱⇔運指が適当
のところを見てください。
読譜力がいい加減だと、運指も適当になりがちです。 弾くたびに指が違ったりします。 すると、どの指を使うのか迷いが生じて、複数の指に矛盾した指令が行って、間違えたり、関係ない指がピンと突っ張ったりします。 指プルプル状態になります。 これでは、「指の独立」に関して悪影響、マイナスの学習になってしまう可能性があります。
逆に、指の独立が不完全で、指プルプル状態だと、どの指を使うのか考える方までプルプルしちゃて、場当たり的な運指になりがちです。 場当たり的な運指のクセが付いてしまうと、いつまでたっても楽譜を正確に読む事ができません。
要するに、「運指が適当」なので「指に対する指令が混乱」し、「指に対する指令が混乱」しているので「運指が適当」になるという悪循環です。 別の部分の基礎力不足が、相互に足の引っ張り合いをするわけです。
他も同様です。
思いついた事を書き込んでみたので、図をじっくり見てください。 ここに書いたこと以外にも、いろいろな相互関係がありうると思います。
●作戦会議
もし、この「基礎力不足トライアングル」が中級の壁の正体だとしたら、どのような作戦をとればよいのでしょうか?
選択肢は、次の二つ。 ごくごくオーソドックスなものです。
しかし、敵は手強い。 正面攻撃だけでは、なかなか戦果が上がりません。
そこで、重要になってくるのが、「間接支援」です。
「基礎力不足トライアングル」の考えが有効だとしたら、弱点以外の場所の練習が、弱点の補強に役立つはずです。
例えば、「読譜力不足」を改善するために、一見、読譜力とは関係なさそうな「指の独立」の練習をする、というものです。
指が自由に動くようなってくると、運指上の指定の指が確実に動くようになる。 すると、運指が安定してくる。弾き間違いが減る。弾き間違いが減れば、楽譜を読む事により注意を払う事ができる。
というように、「良い循環」が形成されます。
この間接支援の考え方、ちょっと盲点なのではないでしょうか?
日本人は真面目なので、「基礎」→「ハノンやチェルニー」→「それだけやればよい」と短絡思考して、ひたすらハノンやチェルニーを弾きまくる状態に陥りがちなのではないでしょうか?
これでは、ダメです。非効率的です。
あるいは、別の例。
「フォームが悪い」といって、ひたすらフォームの矯正をしようとする。 とにかく、「型にはめよう」とする。 そういうケースです。
型にはめると、見た目はいいフォームに見えますが、実際は無駄な力が入ってうまく弾けない場合がけっこうあります。
うまく弾けないんで、先生が躍起になって直そうとするけど、生徒の方は言われた事が多すぎて消化できない。 熱心な先生であればあるほど、直そうといろいろやってくださるのですが、頭と体がついていかない。 (言われただけで出来れば、誰も苦労しません。涙)
そのうち、何がどう悪いのか混乱してさっぱり分からなくなってきて、全部投げ出したくなる。
この時、先生は、「フォームが悪いんだからフォームを直せばよい」という一面しか見てない。
直接攻撃がうまく行かないパターンです。
子供だと、頭も体も柔軟なので、これでけっこう何とかなるかもしれません。 でも、大人だと厳しいです。
このとき、一度フォームの事は忘れて、「綺麗な音」、「滑らかな音」をイメージして、その音を出す練習をする。
ある程度満足できる音が出た時に、フォームを再確認すると、改善の方向にある。
このとき改めてフォームの矯正に取り組むと、今度は、フォームと音の関連が自覚できるので、前と違って効果が出る。
これが間接支援です。
間接支援は、直接攻撃の替りにはなりませんが、直接攻撃の効率を大幅に改善します。
もう一つ、別の例。
楽譜を読むときに、慣れないうちは、知っている音から順番に数えます。 だれでも最初はそうです。
ところが、オタマジャクシの位置がなかなか覚えられないので、ずっと数えてばかりいると、「数えグセ」がついてしまいます。 それで、ますます位置が覚えられなくなります。
特に、五線から外れた加線でこの傾向が顕著に出ます。
そこで、ハノンのスケール(音階)です。
スケールの出だしの音は、左手がヘ音記号部の下加線、右手はヘ音記号部の五線の上です。 当たり前ですが、左手がドなら右手もド、レならレ、オクターブ違いの同じ音です。 そして、出だしの音には、知らず知らずのうちに注意が払われます。
それで、いつの間にか、ヘ音記号部の下加線の音は、いちいち数えなくても分かるようになっています。 鍵盤上の位置も覚えています。 音符カードみたいなもので覚えた場合は、こうはいきません。 (他の加線部は、まだちょっと苦手です)
別に読譜力鍛えようなどと意識したわけではありません。
意図せざる間接支援になっているのです。
続きはまた、次回に……
ただし、「中級の壁」に悪戦苦闘しているオヂサンがテキトーな屁理屈を言っているだけなので、信じてはいけません。(笑) その点を、あらかじめお断りしておきます。
●みんなの「中級の壁」
このシリーズの第1回目の記事で、エラソーに「中級の壁」というものを定義してみました。
これは、あくまでも「自分の個人的な体験」+「他の人もそうなんじゃないかなぁ」という想像の産物です。 したがって、間違っているかもしれません。
でも、『上を目指して頑張る→頑張りすぎる→基礎力不足を痛感する→基礎練習に取り組む→めげる』という図式は、けっこう一般的なので、そう大きくは外していない、と思います。
さて、それで、です。
その「基礎」って何でしょう?
何が出来れば「中級の壁」を克服した、と言えるのでしょぅか?
「中級の壁の内容は人それぞれ」なのですが、いろいろ見聞きした事を踏まえると、いくつかの「タイプ(類型)」に分類できると思います。 主なものは、次の四つではないでしょうか?
- 読譜力不足
-
「楽譜を見ながら弾けない」タイプです。
ここでは、読譜力を少し広くとらえて、運指を考える力(運指力)も含めます。
大人でゼロから始めた場合に多いタイプだと思います。 私もコレです。
- 指の独立不足
-
「左右の手、10本の指が、独立して動かない」タイプです。
ここでは、鍵盤感覚も含めて考えます。
無駄な力が入るので、おそらく、「脱力」にも問題があるでしょう。
先生から「力を抜け」とか、「フォームが悪い」とか、いろいろ言われるはずです。
- 音感不足
-
楽譜も読める、指も動く。
でも、何だか曲にならない、というタイプです。
リズム感、フレーズ感に難ありです。 先生からは、おそらく、「自分の出している音をもっとよく聞きなさい」と言われるはずです。 「耳を鍛える」事が必要です。
- 筋力不足
- 指や手の筋力が足らない、指がころんでしまうというタイプの方です。 女性に多いかもしれません。
上に挙げた四つのタイプのうち、「筋力不足」は別格です。 これはもう、「筋トレ」するしかありません。 (ただし、「指の独立」がきちんとできれば、「筋力不足」をかなりカバーできるような気もします。)
残りの三つ、読譜力不足、指の独立不足、音感不足ですが、最初は別々に対処法を考えていたのですが、よく考えると、これは相互に強く結びついているような気がしてきました。
下の図を見てください。
これは、読譜力(運指力を含む)、指の独立(鍵盤感覚を含む)、音感の相互関係を、私なりに考えて図示したものです。 名付けて、「基礎力不足トライアングル」。
(上の図をクリックすると、拡大図がでます)
図の見方ですが、例えば、図の左上の、
【指の独立/鍵盤感覚】⇔【読譜力/運指力】
指に対する指令が混乱⇔運指が適当
のところを見てください。
読譜力がいい加減だと、運指も適当になりがちです。 弾くたびに指が違ったりします。 すると、どの指を使うのか迷いが生じて、複数の指に矛盾した指令が行って、間違えたり、関係ない指がピンと突っ張ったりします。 指プルプル状態になります。 これでは、「指の独立」に関して悪影響、マイナスの学習になってしまう可能性があります。
逆に、指の独立が不完全で、指プルプル状態だと、どの指を使うのか考える方までプルプルしちゃて、場当たり的な運指になりがちです。 場当たり的な運指のクセが付いてしまうと、いつまでたっても楽譜を正確に読む事ができません。
要するに、「運指が適当」なので「指に対する指令が混乱」し、「指に対する指令が混乱」しているので「運指が適当」になるという悪循環です。 別の部分の基礎力不足が、相互に足の引っ張り合いをするわけです。
他も同様です。
思いついた事を書き込んでみたので、図をじっくり見てください。 ここに書いたこと以外にも、いろいろな相互関係がありうると思います。
●作戦会議
もし、この「基礎力不足トライアングル」が中級の壁の正体だとしたら、どのような作戦をとればよいのでしょうか?
選択肢は、次の二つ。 ごくごくオーソドックスなものです。
- 正面攻撃
- 間接支援
しかし、敵は手強い。 正面攻撃だけでは、なかなか戦果が上がりません。
そこで、重要になってくるのが、「間接支援」です。
「基礎力不足トライアングル」の考えが有効だとしたら、弱点以外の場所の練習が、弱点の補強に役立つはずです。
例えば、「読譜力不足」を改善するために、一見、読譜力とは関係なさそうな「指の独立」の練習をする、というものです。
指が自由に動くようなってくると、運指上の指定の指が確実に動くようになる。 すると、運指が安定してくる。弾き間違いが減る。弾き間違いが減れば、楽譜を読む事により注意を払う事ができる。
というように、「良い循環」が形成されます。
この間接支援の考え方、ちょっと盲点なのではないでしょうか?
日本人は真面目なので、「基礎」→「ハノンやチェルニー」→「それだけやればよい」と短絡思考して、ひたすらハノンやチェルニーを弾きまくる状態に陥りがちなのではないでしょうか?
これでは、ダメです。非効率的です。
あるいは、別の例。
「フォームが悪い」といって、ひたすらフォームの矯正をしようとする。 とにかく、「型にはめよう」とする。 そういうケースです。
型にはめると、見た目はいいフォームに見えますが、実際は無駄な力が入ってうまく弾けない場合がけっこうあります。
うまく弾けないんで、先生が躍起になって直そうとするけど、生徒の方は言われた事が多すぎて消化できない。 熱心な先生であればあるほど、直そうといろいろやってくださるのですが、頭と体がついていかない。 (言われただけで出来れば、誰も苦労しません。涙)
そのうち、何がどう悪いのか混乱してさっぱり分からなくなってきて、全部投げ出したくなる。
この時、先生は、「フォームが悪いんだからフォームを直せばよい」という一面しか見てない。
直接攻撃がうまく行かないパターンです。
子供だと、頭も体も柔軟なので、これでけっこう何とかなるかもしれません。 でも、大人だと厳しいです。
このとき、一度フォームの事は忘れて、「綺麗な音」、「滑らかな音」をイメージして、その音を出す練習をする。
ある程度満足できる音が出た時に、フォームを再確認すると、改善の方向にある。
このとき改めてフォームの矯正に取り組むと、今度は、フォームと音の関連が自覚できるので、前と違って効果が出る。
これが間接支援です。
間接支援は、直接攻撃の替りにはなりませんが、直接攻撃の効率を大幅に改善します。
もう一つ、別の例。
楽譜を読むときに、慣れないうちは、知っている音から順番に数えます。 だれでも最初はそうです。
ところが、オタマジャクシの位置がなかなか覚えられないので、ずっと数えてばかりいると、「数えグセ」がついてしまいます。 それで、ますます位置が覚えられなくなります。
特に、五線から外れた加線でこの傾向が顕著に出ます。
そこで、ハノンのスケール(音階)です。
スケールの出だしの音は、左手がヘ音記号部の下加線、右手はヘ音記号部の五線の上です。 当たり前ですが、左手がドなら右手もド、レならレ、オクターブ違いの同じ音です。 そして、出だしの音には、知らず知らずのうちに注意が払われます。
それで、いつの間にか、ヘ音記号部の下加線の音は、いちいち数えなくても分かるようになっています。 鍵盤上の位置も覚えています。 音符カードみたいなもので覚えた場合は、こうはいきません。 (他の加線部は、まだちょっと苦手です)
別に読譜力鍛えようなどと意識したわけではありません。
意図せざる間接支援になっているのです。
続きはまた、次回に……
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