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2011.05.08 Sunday

2 大人から始めて弾けるようになるか(大人のピアノの始め方)

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    ●大人から始めて弾けるようになるか

    この質問が、これから大人のピアノを始めたい方にとっての最大の懸念事項でしょう。

    それで……、

    「なるか、ならないか」と聞かれれば、答えは「条件次第」となります。

    「それじゃあ、答えになってない」というのなら、逆に質問します。
    • ピアノの練習に、どのくらい時間を投入する気がありますか?
    • 何年ぐらい、続ける自信がありますか?
    • 目標到達レベルは、どのあたりですか?
    ピアノの上達は、なんと言っても練習量に比例します。

    「何年で弾けるようになりますか?」という質問もよく見かけますが、練習量を無視して「何年」と質問しても無意味です。 また、「どこまで弾けるようになりたいか」という目標によっても、話が違ってきます。

    それで、です。

    私のような理系人間は、数字で議論できる場合は、数字で定量的に議論しないと気がすみません。 「なる、ならない」みたいな二元論も、「その人による」みたいな議論放棄も、私は嫌いです。

    そこで、今回は、練習量を目安に、「弾けるようになる/ならない」という事を考えてみましょう。

    ●一万時間の法則

    有名な「一万時間の法則」というのがあります。

    その道のプロになるような方は、若いときに一万時間ぐらいの練習や努力の積み重ねがある、という法則です。

    例えば、次の本にかなり詳しい記述があります。



    この本によると、バイオリニストやピアニスト、あるいは具体的な個人としては、ビートルズ、ビル・ゲイツやビル・ジョイのようなIT業界の大物、等々、それぞれの道でプロとして成功した人は、若い頃に一万時間という時間をかけている、という例が紹介されています。

    この「一万時間の法則」が全てに当てはまるかどうか分かりませんが、けっこう信憑性のある数字のように思えます。

    もちろん、若いときの一万時間と中高年の一万時間は決して同じではありません。

    でも、全く比較にならないか、というと、そうでもないでしょう。

    若いときの一万時間が「プロへの入り口までの時間」なら、中高年の一万時間は、「ハイ・アマチュアの入り口までの時間」ぐらいの事は言えるかもしれません。

    そこで、半ば期待をこめて、「上級レベルのピアノが弾ける」までの必要時間の目安を一万時間と仮定してみましょう。

    【蛇足】「一万時間の法則」を「一万時間練習すれば誰でもプロになれる」と誤解する人もいると思いますが、そうじゃありません。その逆です。上の本で紹介されている「一万時間の法則」は、要するに「プロになるような人は一万時間ぐらいは練習している」というものです。 (一万時間練習しても、プロになれない人は、たくさんいる、ということです)

    私の上の「仮定」は、それを承知の上で、一万時間練習すれば、そこそこ弾けるようになるかな、と「期待」しているだけです。

    ●3倍と3分の1

    しかし、一万時間はあまりにも長いです。

    そこで、その10分の1、千時間ならどうでしょう?

    一万時間が上級レベルだとすると、千時間は初級ぐらいでしょうか?

    あるいは、一万時間と、その10分の1の千時間では、ちょっと間が開きすぎです。 約1/3の三千時間ならどうでしょう?

    これだと、中級あたりでしょうか?

    実際にあれこれやってみると、この「3倍刻み」(あるいは「3分の1刻み」)というは、けっこう便利な数字です。 3倍の3倍は9倍……あまり細かな数字にこだわる必要が無ければ、ほぼ10倍とみなしてよいので、直感的に理解しやすい数字でもあります。

    そこで、この「3倍刻み」を目安にしてみましょう。

    あらかじめ断っておきますが、「3倍刻み」に統計的、理論的な根拠があるわけじゃありません。 「ま、こんなモンかな?」という当てずっぽうです。

    あと、日々の練習時間についても、大体3倍違いぐらいの、次の四つのケースを考えてみます。
    1. 1日3時間練習する場合
      ピアノに相当のめりこんだ生活をする場合(若い方なら、将来、音大を目指すような場合)
    2. 週7時間練習する場合
      (平日0.5時間×5+週末2時間強×2≒1日1時間)
      アマチュアとしては、かなり熱心に練習する場合
    3. 週2時間練習する場合
      (平日0、週末1時間×2)
      仕事をお持ちの方の典型的(?)な場合
    4. 月3時間練習する場合
      (毎月二、三回、気が向いたときに1時間ちょっと)
      単なる暇つぶし(?)程度の場合
    自分は、大体どのあたりに該当するでしょうか?

    ●到達レベルのイイカゲンな予測

    下の表は、以上をまとめてみたものです。 最初に述べたように、ほぼ未経験の大人の方を想定しています。

    表の見方ですが、例えば、総練習時間が300時間あれば、導入レベルは終了するだろう、また、「1日3時間コース」の練習をすれば、100日で総練習時間が300時間に達する(したがって導入レベルは終了する)だろう、という意味です。

    なお、初級とか中級という「到達レベル」は、「そのレベルで要求される代表的な教本をほぼマスターして終了する」という意味です。 (「そのレベルの入り口に到達するまで」ではありません。お間違えなきように。)

    それから、「教本の目安」のところに挙げた曲は、あくまでも、そのレベルの曲がひろく弾ける、という意味です。

    しかし、騙されはいけません。

    細かい数字にまったく意味はありません。 理系人間の言う「オーダーが合ってる」、ようするに、二倍三倍の違いは気にしない、桁が合ってりゃ、それでOKという大雑把な表です。

    まあ、それを前提に下の表をながめてみてください。

    総練習時間 到達レベル 教本の目安 1日3時間 週7時間 週2時間 月3時間
    300時間 導入 バイエル後半ぐらい
    簡単なアレンジ譜の曲が弾ける
    100日 約1年 約3年 約10年
    1,000時間 初級 ブルクミュラー25の練習曲終了ぐらい
    「エリーゼのために」がまあまあ弾ける
    約1年 約3年 約10年 約30年
    3,000時間 中級 ツェルニー30/40番、
    インベンションとシンフォニア、
    またはソナタアルバム1終了ぐらい
    ショパン等の本格的作品で低〜中難易度の曲が弾ける
    約3年 約10年 約30年 約100年
    10,000時間 上級 ショパンのエチュードがそこそこ弾ける
    ここまで来て、やっと音大入学レベル……かな?
    約10年 約30年 約100年 約300年

    どうでしょうか?

    自分で言うのもなんですが、当てずっぽうで作ってみた割には、「当たらずとも遠からず」、意外と「もっともらしい」表になっています。

    では、ピアノの練習に割ける時間と、自分の根性が何年ぐらい続きそうかをこの表に当てはめてみてください。

    先程申し上げたように、「オーダーが合ってりゃいい」という表なので、二倍三倍の誤差は平気であります。 「3年」と書いてあっても、人によっては1年かもしれませんし10年かもしれません。 ただ、「桁が違う」ようなケース、例えば「3ヶ月」だったり「30年」だったりする場合は、まれ、という見方をしてください。

    例えば、あなたが45才(私がピアノを始めた年)で、「週7時間コース」の練習をしたとします。 その場合は、10年頑張れば何とか中級レベルには到達しそう、しかし、30年後の上級レベルは微妙、という事です。 (45才+30年=75才! ちょっと頭と体にガタが来る年です)

    もし30年ではなくて20年で上級のスキルをある程度習得できたら、ギリギリ60才台で「難曲」と呼ばれる曲に何とか手がとどくかもしれません。 でも、40年、50年かかってしまうようなら、それはまず無理、という事です。

    なお、大人の場合、「導入〜初級」あたりまでは「大人のガンバリと集中力」で、けっこう「すっ飛ばす」事ができます。 上の表より進度が速い場合が多いかもしれません。 (ただし、その後で、「中級の壁」にあたってもがき苦しみます)

    それから、「一曲集中」で練習した場合は、かなり難易度の高い曲でも何とかなります。

    例えば、「週2時間コース」で「エリーゼのために」が「10年」とありますが、エリーゼのために『だけ』弾ければよいのであれば、必要な時間は上の表の数分の1ぐらいでしょう。

    ただし、あくまでも、「その一曲だけ」で、「仕上がりは、それなりに」です。

    ●大人から始めて弾けるようになるか[再掲]

    何度も言いますが、上の表は、恐ろしくアバウトな表です。 それでも、「何もない」よりは、マシだと思います。

    ピアノの練習に投入可能な時間と年数から見て、あなたの目標到達レベルが、誤差も考慮した上で、十分射程距離に入っているなら、「頑張れば弾けるようになると期待できます」。

    逆に、あなたの目標到達レベルが高すぎるなら、「多分無理です」。

    最後に結論的な事を言えば、毎週数時間の練習を10年続ける気があるなら、初級から中級まで幅があると思いますが、けっこう弾けるようになるはずです。 あとは、10年という時間を、「長すぎて耐えられない」と思うか、「長く楽しめてラッキー」と思うか、気の持ちようです。

    これが答えです。

    ま、でも、人生、やってみなくちゃ、分かりませんけどね。 (と、最後に議論放棄する軟弱者のわたし。だって、そうなんだもん。)
    コメント
    こんばんはです!

    大変、楽しく拝読しました。

    やり始めて2年それなりに楽しく頑張ってるつもりの私です(週10時間くらい)。最初の頃読んでも全然実感がわかなかったと思いますが、練習時間と曲の表は、すごく納得しました(笑)よし!順調だ!
    集中と継続が必要なのがピアノ技術の取得だと思うのですが、やはり練習時間の継続的な確保が現実問題として、一番難しいですね。あと、その練習自体が楽しめないと継続できないし(^^ゞ
    私の場合、目標設定自体が先ず継続すること(最初は三カ月、次が一年、その次が三年・・・)としていて、その後に曲が来ます。上級は目指しませんが(^^ゞ中級にはいつかはなりたいですね(^v^)

    又遊びに来ます!

    • kassii3
    • 2011.05.08 Sunday 23:52
    こんばんは。いつぞやの「ぼの」です。
    今回も理系感あふれる分析記事で楽しく読ませていただきました。

    私はエレクトーンですがクラシック指向なのでちょっと近い所もあるかと思って当てはめてみました。週7時間で1年くらいですので、ピアノで言えばたぶんバイエル後半くらい、うん、自己認識と一致します。
    しかし、インベンションまで10年ですね。5年くらいで何とか到達したいと思ってましたが、このペースでは客観的に見ると厳しいですね。
    まあでも、私は酔狂様のおっしゃるところの「楽しむ派」でして、「アンナマグダレーナの音楽帳」とか、わりと簡単目の曲で大満足していますので、ゆっくり行くことにしようと、自己認識を新たにいたしました。
    • ぼの
    • 2011.05.10 Tuesday 01:03
    kassii3様
    ぼの様
    コメント、ありがとうございます。

    またまた、懲りもせずに駄文シリーズを始めてしまいました。

    本文中にも書きましたが、期間は「相当にアバウトな目安」に過ぎませんので、数字にはこだわらないでくださいね。(笑)

    ただ、私がピアノを始めた時に、こういった目安が何もなかったので、まあ批判を覚悟で適当にでっち上げてみたのです。

    それから、到達レベルは、そのレベルがほぼマスターできるという意味です。だから、「インベンションに入るまでに10年」ではなくて、「インベンションを含めた中級レベルの教本をほぼ習得するまでに10年」です。ちょっと書き方があいまいだったかな? 本文の方も修正しておきます。

    月一、二回ぐらいの更新ペースになると思いますが、よろしくお願いします。
    • 坂上酔狂
    • 2011.05.10 Tuesday 07:12
    こんばんは。また、おじゃましました。
    到達レベルの表はすばらしいですね。未経験の大人だけでなく、子供を含めた初心者全般に当てはまると思います。自分自身と2人の子供たちもやはり、1日30分〜1時間の練習で10年かかってショパンやドビッシーを発表会で弾けるようになりました。

    できれば、酔狂さんの分析に加えていただきたい要素があります。の「脳の老化」です・・・。
    子供のころにはスラスラできた暗譜が今はまったくできません。
    基本に戻って練習しているハノンも音階の自分の弾いている調が全然頭に入ってこないです。今、46歳主婦なのですが、このまま毎日10年練習して上級になれるか?自分自身に限っては無理な気がいたします。

    ところで、遅くなりましたが中級の壁超え、おめでとうございます!!!。
    自分の練習にも励みになります。

    これからも色々な理論分析・情報を楽しみにしています。
    • のだめファン
    • 2011.05.16 Monday 22:53
    のだめファン様
    コメントありがとうございます。

    「表」、参考になったみたいで、うれしいです。

    それから、「老化」ですよね。自分自身の事も含めてこれも大きな問題だと思います。

    この問題を考えるヒントは「結晶性知能」と「流動性知能」です。私が下手くそな説明をするより、ネットを検索した方が分かりやすい説明が載っていると思うので、お手数ですが検索していただけると助かります。

    要するに、年を取ると記憶力などの一般的な意味での知能(流動性知能)は衰えるが、経験や知識の豊富さをベースにした「結晶性知能」は成長を続ける、というものです。

    だから、「大人のピアノ」は、この結晶性知能を生かした弾き方、練習の仕方をしなければいけない、と思うのです。流動性知能がピークに向かいつつある子供と同じ練習方法を取り入れても、そして、それでうまくいかないと嘆いても、ダメです。

    結晶性知能を生かした練習法の具体例の一つが、「頭で弾く」、「理屈で弾く」事です。

    これは、音楽家の人がよく言うような、「心で弾く」、「感性で弾く」といった事とは正反対です。しかし、結晶性知能を生かした弾き方になっているはずです。

    私がこのBlogで「屁理屈」をこねくり回しているのも、この「頭で弾く」、「理屈で弾く」事の実践だと思っています。

    一方、音楽家の人たち(ピアノの先生)は若い頃、すなわち、流動性知能が高かった時に音楽を習得したので、自分の経験をそのまま中高年に適用しようする傾向があると思います。けれどもそれは、「不適切なやり方」になっている恐れがあります。

    いつになるか分かりませんが、この件についても、自分なりの考えがまとまってきたら、また書いてみたいと思います。
    • 坂上酔狂
    • 2011.05.17 Tuesday 08:09
    酔狂様
    「脳」の件で丁寧な解説をありがとうございました。〈結晶性知能〉を自分でも調べてみました。中年以降でも高まる知能ということで、うれしい限りです。
    若いころとは違う別のアプローチで曲を練習するように、がんばります。
    • のだめファン
    • 2011.05.19 Thursday 19:56
    こんばんは。
    今日は、格別に暑かったですね~(*_*)

    このマトリックス・・・なかなか、説得力があります・・・妙に納得してしまいました。。。

    実際には、時間(量)×効率(質)×才能なのかも知れません。
    • papi
    • 2011.08.10 Wednesday 22:02
    papi様
    コメント、ありがとうございます。(昨日の分も含めて)

    今日は私のレッスン日でした。どうでもいいですけど、モーレツに暑い日でしたね。もう、熱中症の半歩手前でした。

    papi様も今月から正式にレッスンを開始されたとのこと、頑張ってください。

    上達の目安の表ですが、たいしたものではありませんが、この表を思いつくまでにけっこう時間かかっています。

    あくまでも「目安」で、papi様がおっしゃるように効率やら才能やら年齢やら気合い(?)やらで相当に幅が出てくると思うのですが、とにかく私がピアノを始めた時には、目安と呼べるものすら何もなかったのです。みなさんの参考になれば、と思って、欠点を承知の上で、公開しました。

    誰かがもっと統計的・実証的なデータを公開してくれるとイイのですが・・・笑。
    • 坂上酔狂
    • 2011.08.10 Wednesday 23:26
    こんばんは。

    最近、自分と子どもの練習量について考えていました。

    過去の自分は、小学生までは、週3時間程度。
    幼稚園から小学校までで、ざっと1000時間ではないでしょうか。教本は、ソナチネアルバム1 あたりまで。

    中学になり宿題と部活で、週1時間 ←レッスン30分+自習30分… という停滞期が中3の夏まで。
    中3の後半は、気分転換という受験勉強からの逃避で、週4-5時間とか?
    中学時代に300時間くらいかけて、ソナタアルバム1をやったのでしょう。

    その後、練習は週3-5時間程度だったか&#8264;
    高1でモーツァルトソナタからいくつか。高2は、ショパンワルツを弾きたいという私の希望を聞いてもらい、数曲弾いて、12年程のピアノ歴に幕…

    ここまでの総練習時間は、1500-2000時間くらいか&#8264;


    再開後は、月10時間を目標に取り組み、1年かけて、ブルグミュラー全曲レッスンしました。

    1000時間、約10年を目標に、どこまで行けるか&#8264;
    脳の老化もくるでしょうし。


    ちなみに、自分の子どもは、週2時間か練習目標。3年続けて、読譜力を身につけ、ポップスの初級レベル曲が弾けるようになる。ということを、私の中の目標にしていますが、この相関図とも一致しそうですね。
    私が3年と思ったのは、石の上にも三年、からでしたが。

    • 再開両立ママ
    • 2015.04.11 Saturday 23:47
    再開両立ママ、こんにちは
    酔狂です。
    古い記事にコメントいただきまして、ありがとうございます。

    子供は、吸収率・柔軟性が大人の比ではありませんから、意欲さえあれば、あっという間に上達していきそうですね。3年間がんばれば、きっと弾けるようになります。ポップス曲でも、いい曲はたくさんあります。私の好みだと、「千本桜」とか、「ルパン3世」とか、弾いてみたいと思ってます。

    千本桜は、御存じと思いますが、もともと初音ミク(ボーカロイド)の電子的合成音声の曲だったのが、ヒットして広まったものです。ちょうどいま、YahooのGYAO!動画に、日本人グループがカバーしたライブ映像が載っていて、けっこう面白いです。(GYAO!で検索してみてください。)

    ここのところの子供の発表会は、アナ雪と妖怪体操が人気みたいですね。

    老化は、中高年には避けて通れない現実ですけど、ピアノの老化防止効果に期待してコツツコ練習していきたいと思います。

    何にしても、モチベーションを維持して続ける事が一番だと思います。

    再開両立ママさまも、お子様と一緒に頑張ってください。そのうち、連弾で発表会とか出れたら、いいですね。(^^)

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