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2012.03.27 Tuesday

大人の初心者ための知見(1)

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    前の二つの記事(12)でも紹介したのですが、角先生の新著と、古屋晋一先生の次の著書は、大変役に立ちます。

    「ピアノがうまくなるにはワケがある: 努力よりコツ!」 (角聖子 著)


    「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」 (古屋晋一 著)


    というのは、角先生の本(以下「ピアうま」と略)は、実際に多数の大人の初心者を教えた経験に基づく内容ですし、一方の古屋先生の本(以下「ピアノ脳」と略)は、「音楽演奏科学」を目指すサイエンスの立場から書かれたものです。

    両者を比較すると、随所で共通する内容が、違う言葉で書かれています。

    こういった内容を整理すると、この文章のタイトルである「大人の初心者ための知見」がいくつか見えてくると思います。

    私が、偉そうにあれこれ論じるのもナンですが、例によって、屁理屈を展開してみたいと思います。

    ●知見「再開組と始めて組は違う」

    再開組=子供のときにある程度習っていた方
    始めて組=子供のときにまったくやってない方

    よくある意見「子供の頃にやっていたけど、すっかり忘れてしまったので、ゼロから始めるのと同じ」

    同じではありません。「ピアノ脳」の随所で、早期教育が有効であり、それが脳に変化をもたらしている事例が紹介されています。 また、「ピアうま」p.14では、大人がクラシックの原曲に短期間で到達したとしても、『それは、大人ならではの「にわか勉強」の結果であって、子供たちが充分時間をかけてやってきた基礎がごっそり抜けている』という記載があります。

    したがって、再開組と始めて組に同じ教育メソッドを適用するのは困難なはずです。

    かといって、大人が子どもと同じ教材、教育課程でよいのか、というと、それも難しいです。

    そこで、「ピアうま」では、大人が挫折せずに続けていくためのヒントがたくさん述べられています。

    次に、大人にとっての難関である「読譜力」について、もう少し考えてみます。

    ●読譜力の構成要素

    「ピアノ脳」p.105-112に、初見演奏の能力差の要因が六つ挙げられています。(初見演奏と読譜力は同一のものではありませんが、初見ができれば相当の読譜力があるはずなので、ここでは両者は「ほぼ同じ」と考えてみます。)

    (1) 15歳までの初見演奏の練習量
    (2) 左手を右手と同じくらい器用に使えるか
    (3) 楽譜上の視覚情報を素早く処理できるか
    (4) 楽譜を見て音を正確にイメージできるか
    (5) ワーキングメモリの大きさ(注:ワーキングメモリ=作業記憶。作動記憶。一時的な記憶)
    (6) 適切な指使いを素早く決められるか

    さらに、(3)と(5)は、訓練によって大きくは変化しないという報告があるそうです。

    そうです。「変化しない」のです。

    これは重要な情報です。「ダメな人は練習してもダメ」なんですけど、「もともとこの能力が高い人は読譜力の向上に潜在的に有利」という事でもあります。

    ●周辺視野

    この(3)に関しては、周辺視野の広さが重要で、グループや規則性の発見能力と関連するという記述もあります。

    「ピアうま」の方にも、「数をこなすことで」、音符を「ある種のパータンや型として認識する」と書いてあります。

    これは、ほぼ同じ事を言っています。

    周辺視野の能力が明確に表れるのが、文章の「速読能力」です。

    自慢じゃないですが、わたし、文章を読むのが速いです。(自慢してるじゃん!)

    意図的にナナメ読みで速読するときは、(もちろん主たる注意は一箇所ですが)ページの複数個所、複数行を同時に見ている感覚です。 まさに、周辺視野をフル活用している感じです。

    そこで、次のような仮説を立てる事が出来ます。

    ●知見(仮説段階)「速読が得意な人は読譜力が付きやすい」(逆に苦手な人は読譜力も弱い)

    検証方法:音楽教室では心理学や脳科学の研究室のような統制された実験はできませんが、興味のあるピアノ教師の方は、始めて組の方に聞いてみてもらえないでしょうか? かなりの確度で、成立しているものと予想します。

    ●ワーキングメモリ

    もう一つの(5)の方です。ワーキングメモリの大小、すなわち、何かを一時的に(数秒〜数分)覚えておく能力の大小です。 これにも個人差があることが知られているそうです。

    これが露骨に出るのが、神経衰弱のようなゲーム。レストランでの注文取り。ちょっと複雑な暗算。

    そして、音符の先読みの能力です。

    「ピアノ脳」によれば、初見の上手なピアニストは、いま弾いている箇所より、平均して4〜8音くらい先を見ているそうです。読み取った音符をワーキングメモリ上に保持して、その僅かな時間の間に音価や指使いを決定しているのです。

    「ピアうま」の方でも、「先読みが読譜力につながる」と明言しています。

    このワーキングメモリの大小が日常生活に影響する場面ですが……例えば、人の話を聞いたり、本を読んだりして、その内容を理解するためには、相手の言っている事、書いてある事を一時的に覚えて、関連付けなければなりません。したがって、ワーキングメモリが小さい人は、複雑な内容を話されても理解できない、長い文章を読んでも理解できない、という事になります。

    別の例。スーパーやコンビニで買い物したときに、つり銭ができるだけ出ないようにして小銭を渡すと、一瞬固まるバイトがいます。(買い物が6,666円だったので、1万円札×1、千円札×2、百円玉×1、五十円玉×1、十円玉×2、一円玉×1を渡したりとか。大抵はレジが勝手に計算してくれるので実害は無いのですが、そうでないとけっこう悲惨。)

    差別的な表現だと言って怒らないで欲しいのですが、要するにワーキングメモリの大小が頭の良し悪しに直結しています。実際、ワーキングメモリと流動性知能(新しいことを学習する知能や、新しい環境に適応するための問題解決能力……平たく言えば頭の良さ)は深く関連しているそうです。

    そこで、身も蓋も無いのですが、次の知見。

    ●知見「頭のよい人は読譜力が付きやすい」

    続きはまた次回に。

    ※蛇足

    ここでは、「初見能力と読譜力を勝手に同一視」して、その「読譜力について論じた」だけです。 他の「ピアノ力」は、また別の話です。 誤解なきように。
    コメント
    こんばんはです!
    興味深く拝見しております(^^♪

    「ピアうま」を読んでみました。すごく納得する部分が多いです。
    少し頑張ってきた人への応援♪でしょうか。

    「ワーキングメモリ」は変化しない・・・・ショックです(笑)
    曲を滑らかに弾けた時の感覚として「少し前」が意識出来た時!なのですが、どのような時にそうなるかは不明だったので、訓練するばと思っていたのですが(^_^;)

    続きを楽しみにしております(^_-)


    • kassii3
    • 2012.04.01 Sunday 23:08
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