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2015.04.26 Sunday
大人のピアノの学習メソッド:ピアノ力の構造
●覚え方が問題
初見でバリバリ弾きこなせるような方は別ですけど、普通は、練習を重ねて曲を少しずつ覚えていきます。
この「覚え方」が、子供から続けた人(熟練者、ピアノの先生など)と、大人の初心者では、構造的に違う、すなわち、「ピアノ力の構造」が違うのではないかと、最近、考えるようになりました。
「大人と子供は違う」と言うのは簡単ですが、「具体的に、どこがどう違うのか」、「その違いに応じた学習メソッドはあるのか」、という事が、私の長年の疑問でした。
まあ、11年もピアノをやっていれば、少しは分かってきた事もあります。最近の記事との重複もありますが、もう一度、分かりやすいチャートを作って整理してみたいと思います。
●熟練者の場合
熟練者が曲を覚える場合、上のチャートに示すように、主として「聴覚(音そのもの)」、「楽譜」、「鍵盤感覚」、「鍵盤を見ること」の四つの入力を使うのだと思います。(ゴチャゴチャした図ですが、これでも相当に省略して書いています。)
例えば、聴覚から入力された音楽は、まず「音響イメージWM」に蓄えられます。(WM=Working Memory、作業記憶、作動記憶、短期記憶)
※ちなみに、この図のWMは、ぜんぶ私のでっち上げなので、ご注意ください。これらの実在可能性は、火星人の想像図(タコみたいなアレね)並みです(笑)。
この音響イメージは、そのまま長期記憶に蓄えられます。音楽そのものを覚える事に相当します。
また、音響イメージは、ラベリングサブシステム、すなわち音とドレミの音名(階名の場合も含む。以下同様)を相互変換する能力によって、ドレミという記号(表象)に変換され、音名WMに送られます。
そして、熟練者の場合、音そのものと同時に、ドレミの音名列(聴覚的な言語情報)としても長期記憶に蓄えられます。
ドレミの音名列は、さらに運指サブシステムに送られ、どの指でどの鍵盤を押すのか、運指がプランニングされます。このプランニングの情報も長期記憶に送られます。
次に、その運指プランに基づき、筋肉が動き、打鍵が実施されます。その時の筋肉の動きや、指先で感じた鍵盤感覚(タッチ)の情報もまた、長期記憶に送られます。(いわゆる、指に覚え込ませる状態)
以上は耳から聞いた曲を覚える場合ですが、楽譜からスタートして、視覚的に情報が処理されるルートも当然あります。
音から覚える場合との違いは、楽譜には指番号が書いてあるので、運指プランニングの情報も得られる点です。
暗譜で演奏する場合は、長期記憶に蓄えられたこれら様々な情報を総動員します。
「何をどのくらい」というのは人によると思いますが、これらの総合的な記憶の力がピアノ力の源泉になっている事は間違いありません。
●大人の初心者の場合
一方、大人の初心者の場合、「音がドレミに聞こえない」、「楽譜が読めない」、というケースが大半でしょう。
上の図で言うと、「ラベリングサブシステム」、「読譜サブシステム」が無い状態です。聴覚言語的にも、視覚言語的にも、脳の持つ言語処理ないし記号処理の能力がほとんど使えていません。
この状態で曲を弾こうとすると、とにかく、どの鍵盤を押すかをクソ暗記して、ひたすら鍵盤凝視の状態で弾くしかありません。しかも運指もタッチもメチャクチャなので、まともに弾けません。
●大人の初心者は熟練者のようになれるのか?
これは、あくまでも、私の個人的体験に基づく仮定です。
なれません。
しかし、かなり近づく事はできます。
音楽ではありませんが、言語習得で似たような現象の存在が分かっています。
第1言語(母語、母国語)の習得には年齢的な限界(臨界期)があって、それは思春期前(12才前後)と言われています。
ただし、当然のことながら、臨界期が過ぎても、言語習得がまったく不可能になるわけではありません。
第2言語(≒外国語)の習得においては、ネイティブの人のような発音や文法の獲得は困難である事が知られています。ただし、実用的に使える程度であれば、何歳からでも習得できます。最近は、日本にも外国の方が沢山住んでいますが、実用上問題ない程度の日本語は喋ってますから、実感としてお分かりいただけるでしょう。
そして、ごく少数ですが大人からでも第1言語並みの発音と文法を習得できる、という報告があるそうです。
ただし、その「第1言語並みの発音と文法を習得した人」が、ネイティブの人と同じ脳の使い方をしているとは限りません。
まあ、このあたりは、学問的にもまだまだ分かっていない事が多いようです。
話をピアノに戻します。
私の経験から言うとラベリングサブシステム(音がドレミに聞こえる能力)の習得は、ほぼ、不可能です。
子供の頃からピアノを習っていた熟練者やピアノの先生は、いわば、「ドレミ語のネイティブスピーカー」なのです。この人たちと同じにはなれません。
しかし、読譜サブシステムの方は鍛えれば何とかなります。
その場合であっても、子供が習う場合とは違うやり方をします。ラベリングサブシステムとまったく連携を取らない方法で鍛えるのです。(取りたくても存在しないので)
ピアノ力の半分を占める「演奏力」を、音そのものに依存しない視覚言語駆動システムに再編するのです。
別の言い方をすると、楽譜を「運指情報を記載した視覚言語」と割り切って、徹底的に速読する訓練をするのです。
少々刺激的な言い方をすると、「楽譜から音楽を読み取るな! ただ機械的に運指のみ読み取れ!」という事です。(あ、演奏の補助情報も少しは読み取ってね。)
これで、たぶん、弾けます。
●大人のための「酔狂メソッド」
以上をまとめたのが、上のチャートです。
今年(2015年)の2月上旬ぐらいまでは、何とか「暗譜して弾こう」と努力していました。しかし、どうしても、上手く弾けません。
2月下旬頃、開き直りました。「暗譜しなくたって、別に、いいじゃん! 子供の頃からやっていた人とは別のやり方を探そう!」と決めました。
その備忘録的チャートです。
※ピアノ力の残りの半分は、「音楽性」です。今回は、故意にチャートから「音楽性サブシステム」を抜きました。さて、そのココロは・・・。次回を括目して待て! 別に待ってる人はいないかぁ・・・。(笑)
初見でバリバリ弾きこなせるような方は別ですけど、普通は、練習を重ねて曲を少しずつ覚えていきます。
この「覚え方」が、子供から続けた人(熟練者、ピアノの先生など)と、大人の初心者では、構造的に違う、すなわち、「ピアノ力の構造」が違うのではないかと、最近、考えるようになりました。
「大人と子供は違う」と言うのは簡単ですが、「具体的に、どこがどう違うのか」、「その違いに応じた学習メソッドはあるのか」、という事が、私の長年の疑問でした。
まあ、11年もピアノをやっていれば、少しは分かってきた事もあります。最近の記事との重複もありますが、もう一度、分かりやすいチャートを作って整理してみたいと思います。
●熟練者の場合
熟練者が曲を覚える場合、上のチャートに示すように、主として「聴覚(音そのもの)」、「楽譜」、「鍵盤感覚」、「鍵盤を見ること」の四つの入力を使うのだと思います。(ゴチャゴチャした図ですが、これでも相当に省略して書いています。)
例えば、聴覚から入力された音楽は、まず「音響イメージWM」に蓄えられます。(WM=Working Memory、作業記憶、作動記憶、短期記憶)
※ちなみに、この図のWMは、ぜんぶ私のでっち上げなので、ご注意ください。これらの実在可能性は、火星人の想像図(タコみたいなアレね)並みです(笑)。
この音響イメージは、そのまま長期記憶に蓄えられます。音楽そのものを覚える事に相当します。
また、音響イメージは、ラベリングサブシステム、すなわち音とドレミの音名(階名の場合も含む。以下同様)を相互変換する能力によって、ドレミという記号(表象)に変換され、音名WMに送られます。
そして、熟練者の場合、音そのものと同時に、ドレミの音名列(聴覚的な言語情報)としても長期記憶に蓄えられます。
ドレミの音名列は、さらに運指サブシステムに送られ、どの指でどの鍵盤を押すのか、運指がプランニングされます。このプランニングの情報も長期記憶に送られます。
次に、その運指プランに基づき、筋肉が動き、打鍵が実施されます。その時の筋肉の動きや、指先で感じた鍵盤感覚(タッチ)の情報もまた、長期記憶に送られます。(いわゆる、指に覚え込ませる状態)
以上は耳から聞いた曲を覚える場合ですが、楽譜からスタートして、視覚的に情報が処理されるルートも当然あります。
音から覚える場合との違いは、楽譜には指番号が書いてあるので、運指プランニングの情報も得られる点です。
暗譜で演奏する場合は、長期記憶に蓄えられたこれら様々な情報を総動員します。
「何をどのくらい」というのは人によると思いますが、これらの総合的な記憶の力がピアノ力の源泉になっている事は間違いありません。
●大人の初心者の場合
一方、大人の初心者の場合、「音がドレミに聞こえない」、「楽譜が読めない」、というケースが大半でしょう。
上の図で言うと、「ラベリングサブシステム」、「読譜サブシステム」が無い状態です。聴覚言語的にも、視覚言語的にも、脳の持つ言語処理ないし記号処理の能力がほとんど使えていません。
この状態で曲を弾こうとすると、とにかく、どの鍵盤を押すかをクソ暗記して、ひたすら鍵盤凝視の状態で弾くしかありません。しかも運指もタッチもメチャクチャなので、まともに弾けません。
●大人の初心者は熟練者のようになれるのか?
これは、あくまでも、私の個人的体験に基づく仮定です。
なれません。
しかし、かなり近づく事はできます。
※ちょっと書き方がキツかったかもしれません。ここでいう「熟練者」は相当の演奏力を持つ「プロ級」の方を想定しています。こういった方と「同じ」になるのは難しい。でも、大人の初心者でも、頑張れば、かなりのレベルには行けると思っています。(2015/04/29追記)
音楽ではありませんが、言語習得で似たような現象の存在が分かっています。
第1言語(母語、母国語)の習得には年齢的な限界(臨界期)があって、それは思春期前(12才前後)と言われています。
ただし、当然のことながら、臨界期が過ぎても、言語習得がまったく不可能になるわけではありません。
第2言語(≒外国語)の習得においては、ネイティブの人のような発音や文法の獲得は困難である事が知られています。ただし、実用的に使える程度であれば、何歳からでも習得できます。最近は、日本にも外国の方が沢山住んでいますが、実用上問題ない程度の日本語は喋ってますから、実感としてお分かりいただけるでしょう。
そして、ごく少数ですが大人からでも第1言語並みの発音と文法を習得できる、という報告があるそうです。
ただし、その「第1言語並みの発音と文法を習得した人」が、ネイティブの人と同じ脳の使い方をしているとは限りません。
まあ、このあたりは、学問的にもまだまだ分かっていない事が多いようです。
話をピアノに戻します。
私の経験から言うとラベリングサブシステム(音がドレミに聞こえる能力)の習得は、ほぼ、不可能です。
子供の頃からピアノを習っていた熟練者やピアノの先生は、いわば、「ドレミ語のネイティブスピーカー」なのです。この人たちと同じにはなれません。
しかし、読譜サブシステムの方は鍛えれば何とかなります。
その場合であっても、子供が習う場合とは違うやり方をします。ラベリングサブシステムとまったく連携を取らない方法で鍛えるのです。(取りたくても存在しないので)
ピアノ力の半分を占める「演奏力」を、音そのものに依存しない視覚言語駆動システムに再編するのです。
別の言い方をすると、楽譜を「運指情報を記載した視覚言語」と割り切って、徹底的に速読する訓練をするのです。
少々刺激的な言い方をすると、「楽譜から音楽を読み取るな! ただ機械的に運指のみ読み取れ!」という事です。(あ、演奏の補助情報も少しは読み取ってね。)
これで、たぶん、弾けます。
●大人のための「酔狂メソッド」
以上をまとめたのが、上のチャートです。
今年(2015年)の2月上旬ぐらいまでは、何とか「暗譜して弾こう」と努力していました。しかし、どうしても、上手く弾けません。
2月下旬頃、開き直りました。「暗譜しなくたって、別に、いいじゃん! 子供の頃からやっていた人とは別のやり方を探そう!」と決めました。
その備忘録的チャートです。
※ピアノ力の残りの半分は、「音楽性」です。今回は、故意にチャートから「音楽性サブシステム」を抜きました。さて、そのココロは・・・。次回を括目して待て! 別に待ってる人はいないかぁ・・・。(笑)
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