ゼロからでもピアノは弾ける

趣味ではじめた大人のピアノの記録。2004年に45才でバイエルからスタートしてクラシックの原曲に挑戦中。消音ピアノの活用や練習のヒント、工夫など。気が付けばピアノ歴10年越えです、相変わらず、下手です。はぁ・・・(^^)
全記事の総合目次 いままでの記事がすべて整理してあります。
ピアノ中級の壁(6)
前回の続きです。 教本選びの具体論の続きです。

●一冊の場合:発表会用の曲のみ(承前)

発表会で弾くかどうかともかく、いわゆる「曲」だけで練習を進める場合です。 このパターンの方も、けっこう多いと思います。

その理由ですが、おもに次の三つがあると思います。
  1. 時間が無くて練習曲にまで手が回らない
  2. とにかく基礎練習はイヤだ
  3. 弾きたい曲を練習すれば、それが基礎練習になる
1.の場合は、残念ながら、やむを得ません。

2.の場合は、まあ趣味ですし、イヤなものはイヤなんで、特に申し上げることはありません。

問題は3.の場合です。 この主張に妥当性はあるのでしょうか?

●基礎練習は必要か?

この問題は、言い換えれば、「基礎練習は必要か」という問いになります。

この問いに「不要」と答える方法、すなわち「曲だけ練習すればよい」という方法を、ここでは「曲オンリー練習法」と呼ぶ事にしましょう。

「曲オンリー練習法」派の主張は、おそらく、次のようなものでしょう。
将来、音大進学を目指すならともかく、趣味で弾くなら基礎練習に時間を費やすのは無駄。 弾きたい曲を弾くためのテクニックは、弾きたい曲そのものの中にあるのだから、それを練習すればよい。 難しいところがあれば、部分練習すればよい。
私は、この主張は、半分正しく、半分間違っていると思います。

●曲オンリー練習法が正しい場合

正しい理由は、上の「曲オンリー練習法」派の主張そのものです。

もし、弾きたい曲が1曲かせいぜい数曲なら……ここんとこ、大事なので繰り返しますね……『弾きたい曲が1曲かせいぜい数曲なら』、まさにそのとおりだと思います。

●曲オンリー練習法が間違っている場合(1)「読譜力」

しかし、いろいろな曲を弾きたいのなら、この主張は間違っていると思います。

主な理由は次の二つです。

一つ目の理由は、曲オンリー練習法は基本的に暗譜型の練習法になるので、読譜力をつける事が極めて難しからです。

もし、『弾きたい曲が1曲かせいぜい数曲なら』、この欠点は目立ちません。 なぜなら、ドレミと数えようが耳コピしようが何でもいいですから、ひたすら暗譜してしまえば、かなりレベルの高い曲でも弾けるからです。

しかし、何十曲も暗譜する事は、驚異的な記憶力の持ち主でもない限り、できません。

●曲オンリー練習法が間違っている場合(2)「効率」

二つ目の理由は、曲オンリー練習法は効率が悪いからです。

基礎練習でも曲の練習でも、練習によって習得したテクニックの「一部」は、ピアノを弾くための基礎力となって定着していきます。

ただし、曲の練習による基礎力の定着率は、基礎練習による基礎力の定着率より、悪いはずです。

なぜなら、基礎練習は基礎力の習得と定着に特化した練習なので、曲の練習より効率的に基礎力を定着させるはずだからです。

基礎練習には余計な時間が必要ですが、より効率的に「基礎力の資産」を形成していきます。 いろいろな曲を弾くためには、この「基礎力の資産」が必要です。

最初のうちは、基礎練習に振り向ける時間の分だけ損をしますが、どこかで、一曲の習得にかかる時間や、高いレベルへの到達に要する時間の総計で、曲オンリー練習法に勝ちます。

これは、

【基礎練習の基礎力定着率 > 曲練習の基礎力定着率】

が成立する限り、数学的に、真です。

逆に、もし上の式が成立しないのなら、「曲オンリー練習法は効率が悪い」という主張も成立しません。

明らかに成立しない場合が、少なくとも一つ、あります。

それは、『弾きたい曲が1曲かせいぜい数曲なら』、その曲をひたすら練習した方が、その曲を弾くために必要な基礎力(だけ)を効率的に習得できるからです。

●一冊の場合:発表会用の曲のみ(再び承前)

要するに、一冊の場合のオススメの教本は、無し、ということです。 曲オンリー練習法では、中級の壁は乗り越えられない……少なくとも、至難の業だと思います。

今回は、めずらしくちょっと過激(?)に主張してみました。

もちろん、どう考えるかは、人それぞれです。

ただ、私が思うに、「大人でゼロから始められた方」が、「中級の壁」のあたりで行き詰まりを感じているのなら、自分の弱点を補強するための教本を探して基礎練習もやってみた方がよいのではないか、と、余計なお節介をやいているのです。



あ、そうそう。 最後に一つだけ補足しておきます。

いくら基礎が大切だからといって、ド初心者がハノンみたいな練習に取り組むのは最悪です。 ド初心者に必要なのは、練習の効率ではなくて、ピアノを弾く楽しさ、面白さを知る事です。 じゃんじゃん、簡単だけど楽しい曲、弾きましょう!



しつこく、まだ続きます……。



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ピアノ中級の壁(5)
前回の続きです。 具体論です。(やっとここまで来ました……笑)

今回は、主に教本について。

具体論になると、異論、反論、たくさんあると思います。

でも、あえて「考えるヒント」を提供する意味で、独断と偏見で書かせていただきます。

●現実的な練習時間

将来、音大に進学するような若い方なら、毎日5時間とか10時間とか練習しているのでしょうけど、大人の場合、「平日30分〜1時間、休日2、3時間」ぐらいでも「相当に練習している」部類に属すると思います。

あれも必要、これも望ましい、と欲張っても、それは兵力分散の愚を犯す事になりますから、だいたい上の練習時間を想定して、現実的な範囲で考えます。

また、この文章で想定しているのは、基本的に「大人でゼロから始めた」「何とか中級にたどりついた」方の場合です。 再開組の方には当てはまらない場合も多いと思いますから、あらかじめご承知おきください。

●理想は三本立て

中級(特に中級前半)で良く使われる教本について、難易度と、総合/個別の別で考えてみます。

「総合/個別」というのは、前に述べた基礎力不足トライアングルの主としてどこに(全て/一部)に働きかけるのか、という分類です。 (図を再掲しておきます)

基礎力不足トライアングル

もし、比較的長め(平日1時間など)の練習時間がとれるなら、理想は、以下の三冊を併用する事だと思います。
発表会用の曲
全員が発表会に出るわけではありませんが、便宜的にこう呼ばせていただきます。 自分が弾きたい曲の事です。 基本的に、難しめ。

総合/難しめの練習曲
基礎力不足トライアングルのすべてに働きかける練習曲。 練習曲だが、かなりの芸術性を有する場合が多い(発表会で弾いてもOK)。 難易度も高い。 バッハのインベンション、ブルクミュラー18の練習曲、ソナチネなど。

個別/易しめの練習曲
基礎力不足トライアングルの特定の部分に働きかける練習曲。 単純なパターン練習の場合が多い。 芸術性はあまり無い。 難易度は低い。 ハノン、ソルフェージュで用いられる視唱用の練習曲など。 ツェルニー30番は、ちょっと微妙(中難易度?)ですが、こちらに分類。
他にも次のような練習曲が考えられますが、費用対効果が疑問なので、「却下」です。
総合/易しめの練習曲
「音楽を楽しむ路線」の方なら、「基礎固め」という意味で、よいのかもしれません。 しかし、上昇志向組はスルーです。

個別/難しめの練習曲
例えば、ツェルニー50番とか、ハノンを卒業したような方が使うリトル・ピシュナとか、クラーマー=ビューロー60番などです。 中級の壁(中級初期〜前半)で悪戦苦闘している段階では、時期尚早です。
●難易度の組合せ

三冊体制の場合、練習曲を「難しめ+易しめ」の組合せにするのがポイントです。

「難しめ+難しめ」の組合せだと、長い練習時間が必要ですし、なかなかマルもらえないので、メゲてしまいます。

レッスンに行って、「ハああぁぁ、今日もダメだった……。でも、ハノンにマルを一つもらえたから、ま、いっかぁ」というのは、モチベーション維持のためにとても重要です。

一方、「易しめ+易しめ」の組合せだと、つまんないです。 上昇志向組はスルーです。

●正面攻撃と間接支援の組合せ

(正面攻撃と間接支援の意味は、前回の記事を見てください。)

素朴に考えると次の組合せなのですが、

正面攻撃 個別/易しめの練習曲  弱いところを集中して練習
間接支援 総合/難しめの練習曲  間接支援と同時に全体の底上げ

逆もありえます。

実は私はこのパターンです。 これはインベンションの特徴に依るところが大きいです。

インベンションは、読譜力、指の独立、音感のすべてをバランスよく鍛えると同時に、弱点を自動的(?)に見つけてそこに集中砲火(??)を浴びせるインテリジェント・ハイテク兵器(????)なのです。

正面攻撃 総合/難しめの練習曲  インベンションのスペシャル技
間接支援 個別/易しめの練習曲  第2の弱点(例えば指の独立)を補強しながら間接支援

練習曲の教本が、二冊とも正面攻撃になってしまうのは避けましょう。 やってて、しんどいです。 基礎力アップのバランスも欠きます。

「発表会用の曲」を含めて、三冊が正面攻撃になると、さらに厳しいです。 中級の壁で挫折してピアノを辞めるパターンの一つだと思います。

例えば、指の独立がまだ十分出来ていないのに、「発表会用の曲」としてテンポが速くテクニックを要する曲を選び、指が回らないという事でハノンとツェルニーをやりまくるも、結局、うまくいかなくて限界を感じてイヤになる、というようなパターンです。

一方、練習曲が二冊とも間接支援、というのは、「あり」かもしれません。 その場合は、「発表会用の曲」が正面攻撃で、練習曲はサポートに徹する、という形をとることになります。

●それで、三冊の場合のオススメは?

大人でゼロから始めた方には、読譜力不足、指の独立不足、音感不足のいずれについても、「発表会用の曲+インベンション+ハノン」を一番のオススメとします。 これは、私が実際にやってみてベストだと感じた組合せです。

ハノンは、スケールやアルペジオといった基本パターンの練習用ですから、同等の効果を持つ別の本でも構わないと思います。

もし、指の独立や鍵盤感覚に自信がおありなら、ハノンの替りに別の弱点補強の本(or練習法)でもよいと思います。

一方のインベンションですが、これに替わる本は、なかなか無いと思います。 どうしてもバッハのインベンションが合わなければ、他のジャンル(古典、ロマン、近現代)の小曲集等に替えることも考えられます。

再開組の方は、私自身がそうではないので想像でしかモノが言えませんが、読譜力不足がボトルネックなら、やはり上の組合せが有効なのではないでしょうか?

●二冊の場合:「発表会用の曲」と「個別/易しめの練習曲」

練習時間等の関係で、三冊は厳しい、という場合は、上で挙げた三冊のうち、どれかとどれかを兼用して二冊に減らす必要があります。

その場合は、「発表会用の曲」と「総合/難しめの練習曲」を兼用することになると思います。

使う本は、二冊。 「発表会用の曲」と「個別/易しめの練習曲」です。

ただ、後で書きますが、この組合せにこだわらない方がいい場合もありそうです。

●ツェルニー30番の罠

本を二冊、「発表会用の曲」と「個別/易しめの練習曲」の組合せで、練習曲をツェルニー30番にした場合です。 「発表会用の曲+ツェルニー30番」の組合せです。

単なる想像ですけど、もしかしたらこれ、「ゼロから始めた組」が、中級の壁で挫折する最多パターンです。

ゼロから始めた人は、読譜力不足(暗譜しないと弾けない/自然と暗譜できてしまう)が一番の弱点である場合が多いと思います。

発表会用の曲は、おそらく暗譜します。暗譜頼み弾きになります。

一方、ツェルニー30番は、さほど複雑な内容ではありませんし、スピードも要求されるので、やはり、暗譜頼み弾きになります。

いずれも、読譜力の訓練としては、不十分です。 正面攻撃不在の状態です。 一番の弱点が補強されません。

その結果、いつまでたっても読譜力が育たない。 弾ける曲は、暗譜しているいま練習中の一曲だけ。(←私の事です)

そのくせ、いちおう中級レベルの教本のはずのツェルニー30番だけは、淡々と進む。 進む割には、上手くなった実感が沸かない。

読譜力不足の自覚は(多分)ある。 だから、ソルフェージュとか、簡単な曲の初見練習とかに手を出すのですが、時間が無い、意欲が続かない、やり方がよく分からない。で、中途半端で止まってしまう。(←私の事です)

しょせん、私って、こんなもの? …… それで、あえなく、撃沈。

「ツェルニー30番の罠」です。

三冊使う場合は、三冊目に読譜力アップに有効な教材を使えばよいのですが、三冊目がハノンだったりすると、同じ事です。

ところが、「発表会用の曲+ハノン」の場合は、意外と大丈夫かもしれません。 ハノンを「中級用の本」だと思う人は誰もいないからです。

そうです。ツェルニー30番が曲がりなりにも「中級」なのが問題なのです。 「中級の本やってるのに、腕前がぜんぜん中級にならない」と思うのがマズいんです。 これが心理的な陥穽になっているのです。

ここで、誤解なきようにお願いしたいのは、「再開組」には上のパターンが必ずしも当てはまらないという事です。

ブランクが長いと、ぜんぜん弾けなくなってしまうそうですが、楽譜のほうは読める(あるいは、読み方が下手になっていたとしても比較的短期間で勘を取り戻せる)のだと思います。

したがって、読譜力不足が弱点になっていない。 むしろ、「指の独立」を鍛える事が重要で、そのためには、(嫌いでなければ)ツェルニー30番は良い練習になっているだと思います。

ツェルニー30番は中級の練習曲の定番です。 しかし、これを「ゼロから始めた組」に使う事には慎重さが必要です。

●それで、二冊の場合のオススメは? (1)

正直、二冊の場合の組合せは難しいです。

ひとつは、「発表会には出ない」と割り切って、「インベンション+ハノン」とすることです。 「総合/難しめの練習曲+個別/易しめの練習曲」の組合せです。 この場合は、ハノンの替りにツェルニー30番でもいいかもしれません。

三冊の場合と同様、読譜力不足、指の独立不足、音感不足のいずれについても、有効だと思います。

かなり「禁欲的(?)」な組合せですが、イヤでなけば実力アップの一番の近道だと思います。

ちなみに、それでも発表会に出たいという方に一言。

発表会でバッハを弾くのは、師匠曰く「相当に勇気がいる」ことだそうです。

はい、私、インベンションで発表会に出て、途中で真っ白になって演奏中止になってしまったことがあります。今までで最悪の失敗です。師匠の言うとおりです。 「すみません、弾けません」と言って、ミジメの塊になってステージを降りたときの悔しさは、一生忘れられません。

バッハ、超カンペキに暗譜するか、読譜力が相当につくまでは、発表会で弾かないほうが身のためです。

●それで、二冊の場合のオススメは? (2)

二冊の場合のもう一つの組合せは、「発表会用の曲+X」です。

ただ、この「X」に何を使うか、非常に難しいのです。

(1) 読譜力が弱点の場合

「X」にツェルニー30番を使うと、上で述べた「ツェルニー30番の罠」にはまる危険性があります。 それに気をつけながら、使う、という手はあります。

ハノンだと、罠にははまりにくいけど、読譜力アップにいまひとつ。

インベンションだと、効果は高いのですが、負担が大きすぎます。 下手をすると、同じ曲を延々と弾き続けることになってしまって、モチベーション維持が難しい。

アンナ・マグダレーナのためのクラヴィーア小曲集とかプレ・インベンションとかありますが、やった事ないので、よく分かりません。 (下にアマゾンへのリンク、入れておきます。)

というワケで、すみません。 私の知識では、「X」のオススメは分かりません。

「X」が持つべき特徴は、次の通りです。
  1. 基本的に、「個別/易しめの練習曲」。
  2. 暗譜しづらいものがよい。 イヤでも楽譜を見るようになる。
  3. できれば、指の独立の訓練にも役立つものがよい。
  4. 易しめのものがよい。 1〜3回ぐらいのレッスンでマルもらえて、「進んでいる」という実感が持てるものがよい。
う〜む。 無いものねだりなのでしょうか?

(2) 指の独立が弱点の場合

この場合は、比較的単純です。 「X」はハノンやツェルニー30番や、その他同系統の本でOK。 マシンガンのごとく動く指を目指して、頑張ってください。(笑)

(3) 音感が弱点の場合

これが一番難しいです。 申し訳ありませんが、私にはこれ以上言及する資格が無さそうです。

●一冊の場合:発表会用の曲のみ

次は、コレなのですが、ちょっと長くなりましたので、また次回に……。

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ピアノ中級の壁(4)
前回の続きです。 今回は、一般論から具体論への橋渡しです。

ただし、「中級の壁」に悪戦苦闘しているオヂサンがテキトーな屁理屈を言っているだけなので、信じてはいけません。(笑) その点を、あらかじめお断りしておきます。

●みんなの「中級の壁」

このシリーズの第1回目の記事で、エラソーに「中級の壁」というものを定義してみました。

これは、あくまでも「自分の個人的な体験」+「他の人もそうなんじゃないかなぁ」という想像の産物です。 したがって、間違っているかもしれません。

でも、『上を目指して頑張る→頑張りすぎる→基礎力不足を痛感する→基礎練習に取り組む→めげる』という図式は、けっこう一般的なので、そう大きくは外していない、と思います。

さて、それで、です。

その「基礎」って何でしょう?

何が出来れば「中級の壁」を克服した、と言えるのでしょぅか?

「中級の壁の内容は人それぞれ」なのですが、いろいろ見聞きした事を踏まえると、いくつかの「タイプ(類型)」に分類できると思います。 主なものは、次の四つではないでしょうか?
読譜力不足
「楽譜を見ながら弾けない」タイプです。 ここでは、読譜力を少し広くとらえて、運指を考える力(運指力)も含めます。
大人でゼロから始めた場合に多いタイプだと思います。 私もコレです。

指の独立不足
「左右の手、10本の指が、独立して動かない」タイプです。 ここでは、鍵盤感覚も含めて考えます。
無駄な力が入るので、おそらく、「脱力」にも問題があるでしょう。
先生から「力を抜け」とか、「フォームが悪い」とか、いろいろ言われるはずです。

音感不足
楽譜も読める、指も動く。 でも、何だか曲にならない、というタイプです。
リズム感、フレーズ感に難ありです。 先生からは、おそらく、「自分の出している音をもっとよく聞きなさい」と言われるはずです。 「耳を鍛える」事が必要です。

筋力不足
指や手の筋力が足らない、指がころんでしまうというタイプの方です。 女性に多いかもしれません。
●実は「根っこ」は共通?

上に挙げた四つのタイプのうち、「筋力不足」は別格です。 これはもう、「筋トレ」するしかありません。 (ただし、「指の独立」がきちんとできれば、「筋力不足」をかなりカバーできるような気もします。)

残りの三つ、読譜力不足、指の独立不足、音感不足ですが、最初は別々に対処法を考えていたのですが、よく考えると、これは相互に強く結びついているような気がしてきました。

下の図を見てください。

基礎力不足トライアングル

これは、読譜力(運指力を含む)、指の独立(鍵盤感覚を含む)、音感の相互関係を、私なりに考えて図示したものです。 名付けて、「基礎力不足トライアングル」。

(上の図をクリックすると、拡大図がでます)

図の見方ですが、例えば、図の左上の、

【指の独立/鍵盤感覚】⇔【読譜力/運指力】
指に対する指令が混乱⇔運指が適当

のところを見てください。

読譜力がいい加減だと、運指も適当になりがちです。 弾くたびに指が違ったりします。 すると、どの指を使うのか迷いが生じて、複数の指に矛盾した指令が行って、間違えたり、関係ない指がピンと突っ張ったりします。 指プルプル状態になります。 これでは、「指の独立」に関して悪影響、マイナスの学習になってしまう可能性があります。

逆に、指の独立が不完全で、指プルプル状態だと、どの指を使うのか考える方までプルプルしちゃて、場当たり的な運指になりがちです。 場当たり的な運指のクセが付いてしまうと、いつまでたっても楽譜を正確に読む事ができません。

要するに、「運指が適当」なので「指に対する指令が混乱」し、「指に対する指令が混乱」しているので「運指が適当」になるという悪循環です。 別の部分の基礎力不足が、相互に足の引っ張り合いをするわけです。

他も同様です。

思いついた事を書き込んでみたので、図をじっくり見てください。 ここに書いたこと以外にも、いろいろな相互関係がありうると思います。

●作戦会議

もし、この「基礎力不足トライアングル」が中級の壁の正体だとしたら、どのような作戦をとればよいのでしょうか?

選択肢は、次の二つ。 ごくごくオーソドックスなものです。
  1. 正面攻撃
  2. 間接支援
「正面攻撃」は、自分の一番の弱点を攻撃(練習)するものです。 これは、誰でも考える事でしょう。

しかし、敵は手強い。 正面攻撃だけでは、なかなか戦果が上がりません。

そこで、重要になってくるのが、「間接支援」です。

「基礎力不足トライアングル」の考えが有効だとしたら、弱点以外の場所の練習が、弱点の補強に役立つはずです。

例えば、「読譜力不足」を改善するために、一見、読譜力とは関係なさそうな「指の独立」の練習をする、というものです。

指が自由に動くようなってくると、運指上の指定の指が確実に動くようになる。 すると、運指が安定してくる。弾き間違いが減る。弾き間違いが減れば、楽譜を読む事により注意を払う事ができる。

というように、「良い循環」が形成されます。

この間接支援の考え方、ちょっと盲点なのではないでしょうか?

日本人は真面目なので、「基礎」→「ハノンやチェルニー」→「それだけやればよい」と短絡思考して、ひたすらハノンやチェルニーを弾きまくる状態に陥りがちなのではないでしょうか?

これでは、ダメです。非効率的です。

あるいは、別の例。

「フォームが悪い」といって、ひたすらフォームの矯正をしようとする。 とにかく、「型にはめよう」とする。 そういうケースです。

型にはめると、見た目はいいフォームに見えますが、実際は無駄な力が入ってうまく弾けない場合がけっこうあります。

うまく弾けないんで、先生が躍起になって直そうとするけど、生徒の方は言われた事が多すぎて消化できない。 熱心な先生であればあるほど、直そうといろいろやってくださるのですが、頭と体がついていかない。 (言われただけで出来れば、誰も苦労しません。涙)

そのうち、何がどう悪いのか混乱してさっぱり分からなくなってきて、全部投げ出したくなる。

この時、先生は、「フォームが悪いんだからフォームを直せばよい」という一面しか見てない。

直接攻撃がうまく行かないパターンです。

子供だと、頭も体も柔軟なので、これでけっこう何とかなるかもしれません。 でも、大人だと厳しいです。

このとき、一度フォームの事は忘れて、「綺麗な音」、「滑らかな音」をイメージして、その音を出す練習をする。

ある程度満足できる音が出た時に、フォームを再確認すると、改善の方向にある。

このとき改めてフォームの矯正に取り組むと、今度は、フォームと音の関連が自覚できるので、前と違って効果が出る。

これが間接支援です。

間接支援は、直接攻撃の替りにはなりませんが、直接攻撃の効率を大幅に改善します。

もう一つ、別の例。

楽譜を読むときに、慣れないうちは、知っている音から順番に数えます。 だれでも最初はそうです。

ところが、オタマジャクシの位置がなかなか覚えられないので、ずっと数えてばかりいると、「数えグセ」がついてしまいます。 それで、ますます位置が覚えられなくなります。

特に、五線から外れた加線でこの傾向が顕著に出ます。

そこで、ハノンのスケール(音階)です。

スケールの出だしの音は、左手がヘ音記号部の下加線、右手はヘ音記号部の五線の上です。 当たり前ですが、左手がドなら右手もド、レならレ、オクターブ違いの同じ音です。 そして、出だしの音には、知らず知らずのうちに注意が払われます。

それで、いつの間にか、ヘ音記号部の下加線の音は、いちいち数えなくても分かるようになっています。 鍵盤上の位置も覚えています。 音符カードみたいなもので覚えた場合は、こうはいきません。 (他の加線部は、まだちょっと苦手です)

別に読譜力鍛えようなどと意識したわけではありません。

意図せざる間接支援になっているのです。



続きはまた、次回に……



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ピアノ中級の壁(3)
前回までの続きです。 今回は、中級の壁の克服法の「一般論編」です。

●中級の壁の克服法(その1)

一つは、「ひたすら上を目指す」方向から「音楽を楽しむ」方向へと、頭を切り替える事です。

もちろん、「上を目指す」事と「音楽を楽しむ」事はけっして矛盾することではありませんが、どちらにより重きを置くか、ということです。

具体的には、自分の実力に見合った曲を楽しみながら弾くように、気持ちを切り替えることです。 これは結果的には、ピアノ力を構成するテクニックを「定着」させることにつながります。

そして音楽を楽しんでいるうちに、いつのまにか基礎が定着し、自然と難易度の高い曲が弾けるようになるはずです。

この、「音楽を楽しむ路線」に方針転換できるなら、それに越した事はありません。

多くのピアノ指導者がこの方針なのではないでしょうか?

でも、ちょっと待ってください!!

●「上昇志向組」の憂鬱

私にとって、そして、おそらくかなりの多数の方にとって、この「音楽を楽しむ路線」への変更は受け入れ難いものです。

やっぱり、上を目指して挑戦し続けたいのです。

この「上昇志向組」に、「音楽を楽しむ路線」の指導をするのは、逆効果です。

これは重要なポイントです。

ピアノへの情熱のかなりの部分が「上昇志向」によって支えられているので、その上昇志向を(たとえ、やんわりでも)否定する事は、ピアノへの情熱を否定する事になってしまうのです。

指導者が親切心から言ったとしても、結果的にそうなります。 「あんたは、それまでよ」と言われた、という意識が拭いきれないのです。

あるいは、自分で自分に向かって言う事もあるでしょう。 「もう、この辺で、ラクに弾こうじゃないか」と。

でも、それは敗北宣言にすぎない事を、自分自身、知っています。

だからと言って、ひたすら上を目指そうにも、上を目指す無理がきかない状態になっています。

そこで、基礎練習重視に路線変更するのですが、単調な基礎練習には多くの方が耐えられません。

●中級の壁の克服法(その2)

では、どうすればよいのか?

これはもう、正攻法でいくしかありません。

戦略目標を設定し、敵の弱点を見出し、戦力を的確に評価し、適切な戦術を考案し、兵力集中、各個撃破を図る。 軍略の王道です。

やっぱり、こうじゃなくちゃいけません。

ようするに、「ピアノと戦う」のです。

実は、戦う事は、楽しいのです。 スポーツとか、チェスや将棋とか、あるいは困難なプロジェクトに挑むとか、人間、実は戦う事が好きなのです。

音楽を楽しむのはもちろんですが、「ピアノと戦う事★も★楽しむ」ようにしましょう。 そう頭を切り替えましょう。

●最高の戦友

では、「ピアノと戦う事も楽しむ」ために、最も重要な事はなんでしょうか?

教本? 練習法? 指導者? 楽器?

いえ、違います。

それは、『希望』です。

多少辛くても、地道に練習を続けていけば、いつか……いや、「いつか」ではいけません……現実的に想定できる時間のうちに、壁を突破できる、という『希望』です。

上昇志向組は、希望さえあれば、頑張れます。

今回の「中級の壁」シリーズの記事で、私が言いたい事の第一が、この「希望」です。

希望こそ、最高の戦友です。

●欲しいのは成功事例

ピアノを始めようかと迷っていた頃の事を思い出してみてください。 大人のピアノ未経験者にとって、「この年で始めてはたして弾けるようになるのか」という事が最大の懸念材料だったと思います。

それに対して、「頑張れば弾けるようになる」という実例があれば、ものすごく大きな励みになります。

そして、ネット上には(私にささやかなBlogを含めて)「弾けるようになる」というメッセージがたくさんあります。

すなわち、「弾けるようになる」という希望が見えるのです。

これが、「大人のピアノ」の増加の一つの原因ではないかと思います。

一方、私の場合は読譜力の無さが「中級の壁」の最大のボトルネックでした。

しかし、「楽譜が読めるようになるのか」という疑問に対しては、あまり明確な回答はありませんでした。 ネットのいろいろな書き込みを随分探しましたが、「中高年がゼロから始めて、まあまあ不自由なく楽譜が読めるようになった」という実例があまりにも少ないのです。

ちなみに、「子供の頃やっていた」という再開組の例は、そこそこそ、あります。 でも、再開組の例は参考になりません。 子供の頃の記憶は脳の奥底にしっかり刻み込まれているはずです。 本人は意識していなくても、たとえ「楽譜が苦手」と言っていても、「ゼロから始めた人」が持っていない基礎力を既にたくさん持っているはずなのです。

むしろ、ゼロからピアノを始めた方のBlogが、ちょうど初級後半から中級さしかかるあたりで更新が止まってしまうケースをたくさん見かけます。 ピアノは続けておられるのでしょうか? それとも、挫折してしまったのでしょうか? (私も、更新サボっていたので、人のことは言えないのですが……)

あるいは、ピアノ教室などの宣伝で「読めるようになる」とうたっているものもあります。 でも、「こういう人がいる」という具体例が載っているものは、ほとんど無いと思います。 たくさんの初心者を指導しているはずのピアノ教室でも、成功事例は少ないのでしょうか?

とにかく、「中級の壁」突破の成功事例が、切実に欲しいと思います。

●私の場合は成功事例とは言えませんが

私が「中級の壁」と戦い始めた3年前、何が一番辛かったかと言うと、「希望が見えない」、「見通しが立たない」ことでした。

これには、本当に困りました。

ただ、読譜力がどこまで付くか分からないけど、「ピアノと戦う事も楽しむ」というように気持ちを切り替えようとだけはしていました。

しかし、どうやら何とかなりそうです。 屁理屈オヂサンのささやかな体験ですが、中級の壁突破の希望を持つ根拠の一つにしていただければ幸いです。



次回へ続きます……



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ピアノ中級の壁(2)
前回の続きです。

前回は、「中級の壁」というものを定義してみました。

今回は、私の体験談です。「一般論」は、次回以降に改めて考えてみたいと思います。

●中級の壁/私の場合

さて、私の場合、中級の壁の最大のポイントは、読譜力不足でした。

いかにして、この中級の壁と遭遇し、その長いトンネルの中に入っていったのでしょうか?

●初級終了時の読譜力/一音限定読譜

ピアノの練習を本格的にスタートさせたのが、2004年3月31日(自宅にピアノが来た日)です。

そして、初級終了の目安であるブルクミュラーの最終曲、25番の「乗馬」(教本によっては「貴婦人の乗馬 」)にマルもらったのが、2008年1月23日です。 3年10ヶ月かかっています。

中高年のオヂサンがゼロから始めたケースとしては、まあ、そこそこの進度でしょう。

読譜力については、ピアノを始めた当初は「ドレミと順番に数えれば何とか音は分かる」程度だったのが、この頃には「何とか読める」状態になっていました。

ただし、それはまだ、まったく不十分なものでした。

この頃の楽譜の読み方は、「次に弾く音符を読む」というものでした。

具体的には、次のような感じです。
  1. 楽譜の次の音符を見る
  2. その音がなんであるか考える(場合によっては知ってる音から数える)
  3. 指使いを考える(指番号がふってあればそれを読む)
  4. 必要なら鍵盤の位置を見て確認する
  5. 指を動かす
  6. 自分の弾いた音を確認する
  7. 次の音符へ(時々、どこ弾いていたか分からなくなる。フギャア〜)
という作業を順番に一つずつやっていたのです。

仮にこれを「一音限定読譜」と呼びましょう。

これだと、音は拾えるけど、音楽になりません。 結局、繰り返し練習して、ある程度、運指を体に覚えこませる形で暗譜しないと、たとえゆっくりでも「弾ける」という状態になりません。

この頃から、読譜力の無さを痛感していたので、何とかしたいと、いろいろ試行錯誤を重ねていました。

●インベンション1番の衝撃

ブルクミュラー終了と相前後して、2007年暮れ頃から、中級の教材として、
  1. ハノン(初級から継続)
  2. インベンション
  3. ツェルニー8小節の練習曲(ツェルニー30番の代わり)
  4. 発表会用の曲
の4本柱体制で、いよいよ中級段階の練習をスタートさせました。

しかし、ツェルニーは早々に脱落。効果があるのは分かりますが、つまらないです。 結局、一つもマルもらっていません。

練習の中心は、ハノンとインベンションになりました。そのインベンションです。

わりと暗譜は得意なほうのはずだったのですが、まったく暗譜できません。

暗譜できないので、楽譜見ないと弾けません。

でも、楽譜見ると鍵盤が見れません。

鍵盤見ると、楽譜見れません。

結局、一音一音、タコのブツ切り状態(?)から一歩も前に進めません。

過去の自分のBlogを読み返してみると、2007年12月末には譜読みをスタート。 最初にレッスンで弾いたのが2008年1月9日。 そしてなんと、マルもらったのが2008年7月23日。

7ヶ月かかっています。

ちなみに、次に弾いた4番にマルもらったのが、2009年2月26日。

やっぱり7ヶ月。

次の8番のマルは、2009年12月9日。

9ヶ月半……………………。

2年でやっと3曲です。

しかも、最近、師匠のA先生が言うには「インベンションの最初のころは、音を切るところは切れてないし、ぜんぜんできていなかった」とのこと。 相当に甘い合格基準だったと思います。

ぜんぜん出来ない私も私ですが、忍耐強く付き合ってくださった先生もエライです。 普通の先生なら、きっと途中でブチ切れています。

まさに戦いでした。 中級の壁のトンネルに突入する戦いです。

でも、不思議とイヤではありませんでした。 面白かったです。 やっていて、自分の読譜力が鍛えられていくのが分かりました。 自分の弱点を克服するためにまさに必要な戦いをしているんだ、という実感がありました。

「戦う事が楽しかった」のです。

そして、この頃から、中級の壁というのを考え始めました。

●一音限定読譜から先読み読譜へ

その後のインベンションですが、少しはマシになってきました。

一覧表にすると、次のようになります。

順番曲名マルの日期間
1曲目インベンション1番2008年7月23日7.1ヶ月
2曲目インベンション4番2009年2月26日7.3ヶ月
3曲目インベンション8番2009年12月9日9.5ヶ月
4曲目インベンション13番2010年2月18日2.4ヶ月
5曲目インベンション10番2010年5月12日2.8ヶ月
6曲目インベンション7番2010年7月21日2.3ヶ月
7曲目インベンション3番2010年8月25日1.2ヶ月
8曲目インベンション15番2010年12月8日3.5ヶ月
9曲目インベンション14番2011年1月19日1.4ヶ月

15番に少してこずりましたが、2010年に入ってから明らかにスピードアップしています。

そして、少し前の記事でも書きましたが、最近、読譜力が目に見えて改善してきています。

弾いている音の一音か二音先だけど「先読みができる」という状態になってきています。

言葉にすると、前と大した差がないように見えますが、実際には劇的な差があります。

以前の「次に弾く音符を読む」という一音限定読譜の状態だと、脳は、読譜・運指の作業を「順番に」やります。 コンピュータ用語で言えば「シングルタスク」状態、一度に一つのことしかやっていません。 というか、できません。

しかも、その一つ一つの作業に、「意識を集中」させないといけません。当然、他の事は「お留守」になります。 曲の流れは、ブツ切り状態です。

ところが、「わずかだけど先読みができる」状態だと、脳はその作業を「並列に」処理しています。 「マルチタスク」状態です。 脳に、読譜、運指、音程確認をする別々の自動サブモジュールができつつある、ということです。

それから、鍵盤感覚が身についてきたので、大きく手を動かす場合以外は、いちいち鍵盤を見なくても指を動かせます。

「自動」サブモジュールと書いたのには、意味があります。 「自動」、すなわち、「無意識」のうちにいろいろな作業ができます。 そして、意識をより高次な作業、すなわち、「音楽」に集中できます。

そうです。 このスキルが欲しかったのです。

楽譜を見ながら弾く、という目標に明らかに近づいています。

ただし、まだモジュールの性能(?)が悪いので、スローペースでしかひけません。

でも、(そばで聞いている人にはどうだかわかりませんけど)初見に近い状態でも頭の中ではいちおう音楽が流れています。 音楽の流れに乗って弾いています。

もう少しスピードアップできれば、「少しだけど楽譜が読める」と言っていいと思います。

こうなるまで、3年かかりました。

まだ中級の壁を越えたとは言えませんが、少なくとも中間点は過ぎた、トンネル出口の明かりがかすかに見えたきた、と言えると思います。



続きはまた次回に……



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ピアノ中級の壁(1)
●中級の壁に至るまで

たぶん今、私は、「ピアノ中級の壁」の長いトンネルの中にいるのだと思います。

ピアノをやっていると、何回か壁……スランプと言ってもいいですが、とにかく思うように前に進めない状態に当たります。

その中でも、この「中級の壁」は、大人のアマチュアのピアノ弾きにとって最大の壁かもしれません。

初級段階のうちは、大人の場合、初級中盤の難易度が急上昇する局面(以前書いた「バイエル80番台の壁」)を乗り越えれば、あとは大人のガンバリと集中力で、けっこう何とかなります。

練習曲集で言うとブルクミュラー終了程度まで。

発表会用の曲だと、中程度の難しさのクラシックの原曲に挑戦できるあたりです。 ショパンとか、ドビュッシーとか、モーツァルトとか、「あこがれの名曲」でも「それなりに」弾けるものです。

でも、「それなりに」しか弾けないんです。 思うように弾けないんです。 綺麗に弾けないんです。 安定しないんです。 トチるんです。 止まるんです。 遅いんです。 練習しても練習しても、うまく弾けないんです。

ここに至って、自分の基礎力の無さを痛感します。

「よ〜し、基礎からみっちり、やったるわい」と決意します。

そして、「中級の壁」にぶち当たります。

●バブルとしての中級の壁

大人――特に男性の場合は、「ひたすら上を目指す」という傾向が強いと思います。 これはもう、オスの本能みたいなものですら、どうしようもありません。

ピアノの場合だと、より難易度の高い曲、より高度なテクニックを追求したがります。 「いや〜あ、私はコツコツとマイペースでやりますよ」とか言っていても、内心では教本を次々と「制覇」することにこだわります。

「何とかなる」うちは、ひたすら難しいことに挑戦し続けます。

そして、初級段階のうちは、「何とかなってしまう」のです。 実はこれが、大問題なのです。

これは、ある種のバブル状態です。 「練習すれば上に行ける」という期待、そして実際に「行けてしまう」という事実が、「ひたすら上を目指す」という傾向を必要以上に助長してしまうのです。

株や不動産といっしょです。 「まだまだ上がる」という期待そのものが、適正水準をはるかに超える高騰を招いてしまうのです。

しかし、あらゆるバブルは必ず崩壊します。

●中級の壁の構造

ピアノ力を構成するいろいろなテクニックは、新たに学習してから、何度も繰り返し練習することでゆっくりと定着していきます。 「ひたすら上を目指す」のはよいのですが、「定着させる」方の練習が減ってしまうのは問題です。

この定着プロセスをおろそかにして、ひたすら上を目指し続けると、どこかで、

【定着せずに不安定化するテクニック > 新たに学習するテクニック】

という状態に陥ります。

この状態はピアノを弾いていれば実感できます。 ちょっと無理しすぎているな、基礎力が不足しているな、と自分で認識できます。

そこで、基礎練習を始めるのですが、これが、つらい。

挑戦できていたはずの難曲に比べて、基礎練習ははるかにレベルが低い……ように感じる。 にもかかわらず、その基礎練習がうまくできない。 (だから、基礎力不足なのです。あたり前です。)

ショパンがどーの、ベトベンがこーの、とかいう遥か以前の問題として、ハ長調のスケール(音階)が安定してうまく弾けない。 自分で弾いた録音を聞いてみて、はっきり言って、ヘタ。 あんたぁ、ピアノ、何年やってるの、自分で自分に向かって言いたくなる。

「なにくそっ」と、大人のガンバリと集中力で基礎練習に取り組む……のですが、初級段階の頃のように「上手くなっている」という実感がまるで沸かない。 (定着には、練習量と時間が必要なのです。)

そのうち、「オレって、やっぱり才能無いんだぁ」とか、「子供からやっていた人にはかなわないんだぁ」とか、「この辺が自分の限界なんだぁ」とか思い始めて、意欲のデフレスパイラルに陥ってしまう。

そして、あんなに燃えていたピアノへの情熱が、一気にしぼむ。 練習時間が減ったり、レッスンをついついサボったり。 で、ますます悪循環にはまる。

これすなわち、バブル崩壊。

これが中級の壁です。

私の場合、中級の壁との遭遇は、ピアノを始めてもうすぐ4年目の2008年の1月頃の事でした。 ちなみに、この頃からBlogの更新も滞り気味になってしまいました。

続きはまた次回に……



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中級初期:練習内容の見直しの時期(3)
前回の続きです。

●学習理論に忠実に

最近の脳科学の発展により、「学習過程」に関する理解がだいぶ進んできました。

ここでいう学習とは、「学校の勉強」のことではなくて、もっと広く「脳が新しいことを学ぶこと」全般を指します。

私はその方面の専門ではありませんが、興味のある方のために最近出た本を二冊ほど紹介しておきます。

◎脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」
とても読みやすい本です。 様々な場面における「学習」の質の向上に役立ちそうです。 ちなみに、著者の茂木健一郎さんは、いろいろな著書やテレビ出演でも有名ですね。


◎モーツァルトが求め続けた「脳内物質」
タイトルに騙されてはいけません。 中身はバリバリの研究者による最新の研究紹介です。 読みごたえがあります。


この二冊に共通するのは「快感を生み出す神経伝達物質ドーパミンを効率的に出すことが、効率的な学習につながる」という知見です。

カンタンに言うと、学習していて(ピアノの練習をしていて)、「気持ちイイ!」状態を作り出せばよいのです。

皆さん、難行苦行はやめて、「気持ちよく」弾きましょう。 ひらすら難行苦行「だけ」を強制するようなレッスン方法は、ドブに捨ててしまいましょう! それは誤った方法です。

(地道な練習が不要、と言っているわけではありません。念のため。 あ、ちなみに私の師匠のA先生は、とっても「気持ちいいレッスン」をしてくださいます!)

●あえて二兎を追え

「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺があります。

確かに慣れないうちは「一度にひとつの事」を練習した方が能率的、のように思えます。 そもそも、同時にいろいろな事をやろうとしても、特に中高年の場合は頭と体がついて来ません。

しかし「石の上にも3年」。 慣れてくると、同時に複数の事ができるようになってきます。

そうなってきたら、あえて自分にプレッシャーをかけましょう。 ちょっと無理だと思った事でも、挑戦してみましょう。 積極的に複数の事を意識してみましょう。

例えば、ハノンを弾く時に、指の感覚を意識する、ドレミを歌う、タッチに変化を付ける、ちゃんと楽譜も見る、ということ心がけましょう。

多少難しいくらいの事にチャレンジした方が、うまくできた時の喜びが大きいはずです。 あるいは、複数の情報を同時にインプットした方が、実は記憶として定着しやすいのです。 (このあたりのメカニズムは、上の茂木先生の本を参照してください)

「基礎から順番に一つずつ」は、一見正論のように見えますが、時と場合によります。

今後は、練習曲ひとつを弾くにしても、あえて高度複数目標追求を心がけたいと思います。

●ボトルネックを強化せよ

「ピアノを弾く」ためには、たくさんのスキルが必要です。

指の独立、スピード、パワー、読譜力、音程感、リズム感、音楽的記憶力、感情移入力、平常心、音楽史的知識、etc.

その中で、どれが自分にとって一番のボトルネックになっているのか自己分析し、足らない部分を強化する事が必要です。

これは「言うは易し、行うは難し」の典型で、簡単にできればだれも苦労しません。

でも、やるしかありません。

私の場合は、とにかく、「読譜力」がネックです。

正確に言うと、「一度練習した曲を楽譜を見ながらある程度の速度で弾く」ことができないのです。 いわば、(初見力ではなくて)「再見力(?)」が弱いのです。 (「再見」というのは、私のテキトーな造語なのでご注意を)

「初見でバリバリ弾く」ことは求めません。 それはプロの範疇に属することです。

しかし「再見でバリバリ」は弾きたいです。 その方法は試行錯誤の最中ですが、バッハのインベンションが何かのヒントを出してくれそうな気がします。

ボトルネックを強化する第一歩は、「良き教材」です。
| 坂上酔狂 | 「大人のピアノ」私論 | 16:41 | - | - | - | -
中級初期:練習内容の見直しの時期(2)
前回の続きです。

●少ない練習時間を有効活用

前回は、「練習時間が少ない」という事を書きました。

だからと言って、練習時間を大幅に増やすことは難しいでしょう。 少ない練習時間を有効活用するように工夫するしかありません。

いわば、「兵力集中・各個撃破」の作戦を考えるのです。 自分の弾きたい曲に必要な練習に、時間、気力、体力を集中させましょう、ということです。

では、その具体策は?  (いろいろあると思いますが、今日はとりあえずひとつだけ)

●教本を「あげる」ことはやめる

私の場合、ピアノを始めて約4年で、「バイエル」と「ブルグミュラー25の練習曲」を何とか終わらせて、いわゆる「ブルグミュラー終了程度」になったわけです。 (相当に「甘い合格基準」ですけど)

しかし、中級段階になって難易度が上がってくると、一曲あたりの必要練習量が大幅に増えてきます。 今までのように「一冊あげる」ことを目標にしても、時間的に厳しいですし、なかなか先に進みません。

にもかかわらず、「バイエル終わらせた」、「ブルグミュラー終わらせた」という成功体験が、同じように中級以降の教本を終わらせることに拘泥させてしまうのです。

はっきり言って、「心理的な罠」です。 (私も、この罠にはまりかかっていたように思います。)

ここで「自分の限界」を感じて、ピアノをやめてしまう方が、けっこういるのではないでしょうか?

なかなか先に進まなくて落ち込んでいる方(←私のこと)、ここで次のように発想を切り替えましょう。

(1) 導入から初級段階においては、教本を順番どおりに「あげる」ことは、基礎力を付けるために必要。また、そうする時間的余裕もある。

(2) 中級段階以降においては、教本を順番どおりに「あげる」ことは必ずしも必要ではない。また、そうする時間的余裕もない。

(次回へ続く)
| 坂上酔狂 | 「大人のピアノ」私論 | 10:54 | - | - | - | -
中級初期:練習内容の見直しの時期(1)
●壁

私の場合、教本の進度で言うと、中級初期段階に差し掛かったところです。 でも、なかなかうまく弾けません。 進み具合も遅れ気味。 発表会は大失敗(涙)。 いわゆる「壁」にあたった状態です。

何とかこの壁を克服しようと思い、例によって「屁理屈」をいろいろと考えている最中です。

それで、その屁理屈の現時点における「暫定結論」は、

(1) 要するに練習時間が足らない
(2) だからと言って練習時間は増やせない
(3) 少ない練習時間を効率的に使うことが大切
(4) その極意は「兵力集中・各個撃破」

というものです。

まあ、(4)以外は当たり前の結論です。

とりあえず、今日は、

(1) 要するに練習時間が足らない

という事を書いてみたいと思います。

●遅れてきたアマチュアの限界

身も蓋もない言い方でが、アマチュア……特に大人になってからピアノを始めたアマチュアが、テクニック的な意味でプロと同じように弾くことは不可能です。

まず、この事実を認識しましょう。 (自戒の意味も込めて)

これは、練習量を単純に比較してみるだけでも明らかです。

例えば、プロへの第一歩である音大を目指すような方は、どのくらいの練習をして来たのでしょうか?

ここでは、若干少なめに見積もって、一日平均3時間としましょう。 また、ピアノを始めた時期もやや遅めの8才としまょう。

それでも、音大に入学する18才までの10年間には、

  一日3時間 × 365日 = 一年で約1000時間
  約1000時間 × 10年 = 約1万時間

の練習時間があったはずです。

これでもまだ「プロへの入り口」にすぎません。

ここから、音大で音楽漬けの毎日を送ってさらに数万時間の練習を行い、その先に、やれ留学だ、コンクールだという関門が待ち構えているわけです。 普段われわれが何気なく耳にするプロの方の演奏の背後には、これだけの練習時間がある、ということです。

一方、大人から趣味として始めたアマチュアの場合、一日平均30分から1時間も弾けば、「相当にのめり込んでいる」部類になると思います。

仮に一日1時間弱弾いたとして計算してみると、

  1時間弱 × 365日 = 一年で約300時間

となります。

でも、このペースで3、4年がんばったとしても、「プロ・コース」の方の1年分といい勝負です。

仮に1万時間練習しようと思ったら、30〜40年は必要です。 私の場合だと、ほぼ確実にあの世に行ってしまってます。

仕事などで忙しい中、時間をやりくりして練習されている方だと、一週間で1〜2時間が精一杯というケースもあるでしょう。 この場合は、

  週2時間 × 一年約50週 = 一年で約100時間

となります。

こうなると、「プロ・コース」とはまさに「桁違い」。 もはや次元が違う話、と言わざるを得ません。

しかも、同じ1時間の練習でも、「学習能力抜群の頭の柔らかい子供時代の1時間」と、「身体のあちこちガタが来て頭も硬化した中高年の1時間」では違いがあります。

だから、最初に述べた結論となるわけです。

「大人になってからピアノを始めたアマチュアが、テクニック的な意味でプロと同じように弾くことは不可能」です。

●あくまでもアマチュアで

したがって、「大人から始めたアマチュア」が「プロ並みのテクニック」を目指すことは、自ら望んで蟻地獄に飛び込むようなものです。 やればやる程、自分の無力を思い知らされることになります。

「あくまでも趣味」、「好きでやっている」、「自分の技量の範囲でベストを尽くせばよい」と割り切ることが大切だと思います。

そうでないと、「ピアノが苦痛」になってしまいます。

(次回へ続く)
| 坂上酔狂 | 「大人のピアノ」私論 | 12:32 | - | - | - | -
大人のピアノの「ピアノ力」(10)
●広義の音感

『大人のピアノの「ピアノ力」』というタイトルで、音感について何回か書いてきました。

そして、「ドレミを聞き分ける能力」という意味での音感は、「なくたって何とかなる」という大胆(?)な結論を出しました。

ところで、「音感」という言葉は、「音に対する感覚」という広い意味で使われる場合もあります。

こっちの音感は超重要です。

旋律を追跡する能力、リズムを刻む能力、和音を感じる能力、音色を聞き分ける能力、音楽に込められた感情やイメージを理解する能力、etc.

この広義の音感こそ、音楽的能力の核心です。

「音感」という言葉は誤解を招きやすいので、ここでは「広義の音感」を「音楽性」と呼ぶことにしましょう。

●音楽性を鍛えるためには

さて、エラソーに始まった文書ですが、ここから思いっきり低レベルになります。

音楽性が大切だということには、たぶん異論はないでしょう。

問題は、オジサンが(オバサンでもいいけど)どうやって音楽性を鍛えたらよいか、ということです。

常識的な結論は、「よい音楽をたくさん聴け」ということです。 これは当然の結論なので、これ以上述べません。

他にも音楽性を鍛える方法はないのでしょうか?

●風呂場で歌え!

一つの結論が「聴け」だとしたら、もう一つの結論は「歌え」ということです。

歌うことこそ、音楽性のもっとも基本的な表現です。

こういうと難しそうに聞こえますが、音楽性を鍛える最も単純にして効果的な方法は、『ラララ〜』でも、『フフフ〜ン』でも、適当な歌詞を付けてでも何でも構いませんから、歌うことです。

これなら、風呂場で練習できるじゃないですか! (ただし、銭湯では厳しいかも…… ^^)v

練習法はいたって簡単で、お気に入りの曲でも、いま練習中の課題曲でもいいですから、風呂場で歌うんです。 身体もリラックスしてますし、適度にエコーもかかりますし、気分も乗ります。

別にジョークを言ってるわけじゃなくて、ある程度の長さの曲になると、全曲を歌いきるのはけっこう大変です。 暗譜の練習もなります。

複数のメロディラインからなるポリフォニックの曲は、歌いにくいかもしれません。 そしたら、メインのメロディだけでも声に出しましょう。 残りは頭の中で歌う練習をしましょう。

相対音感の人は、できれば、入浴直前にピアノで出だしの音をひろってから浴室に入りましょう。

また、オーケストラの最低音から最高音をカバーするピアノですから、声に出して歌う場合は適当にオクターブを上げ下げしないといけません。 これで、音階を見失わないようにするのは、けっこう大変です。

歌いながら、ここはこんな感じに、ここは早く、ここは抑えて、とか工夫しましょう。 難しい言葉で言えば、楽曲分析、アーティキュレーションそのものです。

実は、この練習、馬鹿にできないはずです。 カラオケが普及したとはいえ、日常生活の中で歌う機会は少ないものです。 風呂場は貴重な練習室です。

●風呂場以外でも歌え!

歌う場所は、風呂場だけとは限りません。

家の中であれば、料理をしながら、掃除をしながら、洗濯をしながら歌うこともできます。

それから、必ずしも声に出して歌う必要はありません。 頭の中で歌うだけでも、十分に効果的なはずです。

これなら、家の外でも、どこにいても練習できます。

「練習」と書きましたけど、音楽が好きな人なら、おそらく無意識的かつ日常的に歌っている人が、けっこういるのではないかと思います。 声に出さなくても、道を歩きながら、お気に入りの曲や、今朝のテレビで流れていたちょっとイイなと思った曲を何となく頭の中で歌っている……そういう事があるのではないでしょうか?

人の頭の中をのぞくことはできませんが、大人になってから音楽をやろうというような方は、テレビやCDから流れる音楽を受動的に聞く、あるいは聞き流すだけでなく、積極的に歌う習慣をお持ちの方が多いのではないかと予想しています。

もしそうだとすると、楽器や声楽の正規の訓練をしてない方でも、実は相当量の音楽性トレーニングを知らず知らずのうちにやっていたことになります。

このような「歌う習慣」こそ、ピアノ――いや、ピアノに限らず音楽全般の上達の最大の鍵かもしれません。
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